「なぜ、事業譲渡を受けてまで、この事業をやろうと思ったんですか?」
ずっと聞いてみたかった問いがあります。
RePathは、もともと別の会社で営まれていた人材紹介事業を引き継ぐかたちで生まれました。ゼロから立ち上げるのではなく、すでにある事業と、そこで働く人たちごと受け継ぐ。それは決して簡単な決断ではなかったはずです。
RePathの代表・柴田さんは、誰よりも自分に厳しく、それでいて誰よりも人を見ている人です。多くを語るタイプではないからこそ、あのとき何を考え、何に懸けてこの決断をしたのか、私たちはまだ知りきれていないのかもしれません。
あの日、事業とともにRePathへやってきた一人として。そして、その背中を一番近くで見てきた一人として。
創業の原点にあった想い、RePathがこれから目指す場所、そしてこれからどんな仲間と未来をつくっていきたいのか。普段は聞けない柴田さんの本音に、少しだけ踏み込んでみました。
柴田 旬也(しばた・しゅんや)
RePath株式会社 代表取締役。公認会計士。監査業務に従事したのち事業会社の経営に転じ、訪問看護を展開する株式会社Recovery International(東証グロース上場)の代表取締役に。2024年12月、看護師に特化した人材紹介会社としてRePathを設立。
「なりたいものが、なかった」
Q1 -まずは原点から聞かせてください。そもそも、なぜ公認会計士を志したんですか?
柴田: 本音を言うと、自分が何をやりたいのか、どうなりたいのかが定まっていなかったからです。
大学に入って就職活動が近づいてくると、周りでは「有名な大企業に入りたい」「○○社は〜らしいよ」みたいな会話が飛び交っていました。正直、僕はそれがウンザリだったんです。
社会人になって一番多くの時間を過ごす環境が、自分のやりたいことではない。やった結果、自分がどうなっていくかも見えない。そんな未来を想像すると、就活の会話に入っていくことすら嫌でした。
特になりたいものがない中で、シンプルに年収が高いらしい。そういえば授業の単位を取るために簿記2級を取ったな。その延長線上で公認会計士が取れるなら、行けるんじゃないか。そんな浅はかな想いがきっかけでした。
上場企業の代表であり、公認会計士。その肩書きからは想像もつかない答えでした。
でも、ここから始まる話を聞くと、それが柴田さんという人の「スタート地点」だったことがよく分かります。最初から夢や情熱を持っていたわけではない。だからこそ、後からそれを自分の手でつかみ取っていった人なのだと思います。
安全圏から、戦場へ
Q2 -数字の専門家から経営者へ。「自分で事業をやる側に回ろう」と決めた瞬間はあったんですか?
柴田: 会計士として従事していた監査業務は、会社を外から見るという立ち位置でした。3年もすると、監査のイロハはおおむね身についたと思うようになりました。
それと同時に、会社を外から見ながら、つまり安全圏から評論家のように正論を語る自分に、いつも違和感があったんです。
転機は、IPOを目指す上場準備会社の監査人として現場責任者を任されたときでした。クライアントのCxO陣と、仕事終わりにご飯を食べて帰るほど仲良くなったんです。そこで知ったのは、CxOはキラキラした成功者なんかじゃない。仲間とともに苦しみながら、毎日コツコツと前を向いて事業と向き合っている、一人の人間なんだということでした。
それを目の当たりにしたとき、「自分はこんな安全圏からべき論を伝えるだけでいいのか」「このままだと、何もできない人間のまま人生が終わってしまう」という焦りが芽生えました。
もっと苦労しないといけない。地に足のついた、手触り感のある戦いをしなければならない。平和な国から戦場を他人事で見ているのではなく、自分から戦場に降り立って戦わないといけない。そう思ったのが、事業をやる側に回ろうと決めた瞬間でした。
安定した資格と、安全な立ち位置。それを自ら手放して、戦場に降り立つ。
柴田さんが「誰よりも自分に厳しい」理由が、少し分かった気がしました。この人は、一度自分を生まれ変わらせた経験を持っているのです。
逆境の中で見た、人の本質
Q3 -医療・看護の領域に関わるようになった原体験はありますか?
柴田: 原体験というほどのものではなくて、親族に医療系の職種が多かったことくらいでしょうか。
ただ、今でも忘れられない出来事があります。コロナが流行ったとき、ニュースで「医療職のお子さんが学校でいじめられている」という話を目にしたんです。
僕の妻は医師で、当時は感染症の病院で働いていました。自分も感染するかもしれない、死ぬかもしれない。そんな不安の中でも、「それでも病院に行って患者さんを助けなければ」という責任感で働いている姿を、目の前で見ていました。だから、そのニュースには本当に憤りを感じました。
でも不思議と、憤りと同時に、「医療・看護の領域に関わっていて良かったな」と思ったんです。人の本質を見たというか、逆境の中でも戦い続ける妻を見て奮い立ったというか。こういう人がいて組織が成り立ち、ひいては社会が成り立っているんだな、と。
当時の僕は、リカバリーのIPO前で、取締役として孤独感を抱えていました。「御社はIPOできません」「無理です」と言われ続けていた時期で、僕自身も逆境の中にいたんです。そんなときに妻の姿を見て、「それでいいんだ」と思えたのかもしれません。
妻の姿に奮い立ち、自分の逆境にも「それでいい」と思えた。
「多くを語らない人」の奥にあったのは、苦しいときにこそ逃げずに戦う人への、深い敬意でした。RePathが「人」にこだわる理由は、きっとここにあります。
「人がいなければ、医療は崩壊する」
Q4 -Recovery Internationalという訪問看護の会社がある中で、なぜ「人材紹介」をやろうと考えたんですか?
柴田: 訪問看護という医療現場の最前線に立っていると、どれだけ崇高なビジョンがあっても、「人がいなければ医療は崩壊する」という現実を突きつけられます。
慢性的な人手不足と、それに伴う現場の疲弊。そして、ミスマッチによる早期離職。自社だけじゃなく、医療業界全体がこの負のスパイラルに陥っているんです。超高齢化社会になることが確定している今、この構造的な課題はこれからますます表に出てくると思っています。
これを根本から解決するには、ただ人を集めるだけでは足りません。本質的な「マッチングと定着」を生み出す仕組みが必要です。大手の人材紹介にはない、看護の事業を営んでいるからこそできる人材紹介の新しいかたち。それを、自分でやるしかないと思いました。
感染症の病院で働き続けた奥様の姿。訪問看護の現場で見てきた、人が足りずに疲弊していく医療の現実。柴田さんにとって人材紹介は、ビジネスチャンスではなく、「この人たちが働き続けられる社会」をつくるための手段だったのだと思います。
事業ではなく、「戦える人」に懸けた
Q5 -それでも、ゼロから立ち上げる選択肢もあったはずです。なぜ事業譲渡を選んだんですか?
柴田: 経営の合理性だけなら、しがらみのない状態でゼロからスタートした方が良かったかもしれません。
ただ、事業の成功は人次第だと信じている部分があって。
今RePathに来てくれたメンバーは、幹部陣を筆頭に、みんな目の奥が燃えていたんです。底辺から這い上がっていくパワーを感じました。
正直なことを言っちゃうと、人材紹介事業というよりも、このチームを引き受けることに意味があると思ったんです。人材紹介を担えるコアチームは、こちらにはいなかった。事業という箱ではなく、戦える人に懸けた。それが、事業譲渡を選んだ理由ですね。
ちなみに、仲介業者は使いませんでした。M&A仲介を使うと、コアメンバーを深く知ることができないまま進むことになる。そこにすごくリスクを感じたんです。
Q6 -事業とともに、そこで働く人たちを迎え入れる。どんな想いや覚悟がありましたか?
柴田: 全員を成功者にする、という想いでした。特に幹部陣の人生は背負うつもりでした。仮に辞めてしまっても、辞めた後もその人の人生に向き合うつもりです。
幹部陣を含めて全員が「RePathに来て良かった」「ここでやってきて良かった」と思える環境を、何が何でもつくらなければならない。今もそう思っています。
Q7 -譲渡を受けた当初、最初に「これだけはやろう」と決めていたことはありますか?
柴田: 我々の目的と目標に、明確な旗を立てることです。もともとは違う会社の、違う旗のもとで戦っていたチームですから。やり方も、見ている方向も、前の文化に染まっていた部分が当然あったはずです。
だからこそ、そのままの状態で走り出すのではなく、新しい旗を立て、共通の目的・目標を真っ先につくる必要があった。全員が同じ旗を見上げて、心から納得して初めて、本当の意味で一つのチームになれると思うんです。
ずっと聞きたかった問いの答えは、「事業」ではなく「人」でした。
あの頃の私たちは、自分たちが「引き継がれる側」だと思っていました。でも柴田さんにとっては、事業のおまけに人がついてきたのではなく、人こそが目的だった。そのことを、今回初めて知りました。
安全圏を出て戦場に降り立った人が、次に探していたのは、一緒に戦える仲間だったのかもしれません。
「Re」は生まれ変わること。「Path」は、自分たちで拓く道
Q8 -「Re+Path」という社名に込めた想いを、改めて柴田さんの言葉で聞かせてください。
柴田: 「Re」には、「再び生まれ変わる」という想いを込めています。前身の想いを大切に受け継ぎつつ、生まれ変わる。そしてRecoveryグループが一体となって発展していく、成長していくという想いです。
その土台の上に立って、その先にある「新しい道(Path)」を、今度は自分たちの手で切り拓いていく。それが「Path」の意味です。
そしてこの「生まれ変わる+新しい道」は、RePathに来てくれたメンバーにも当てはまるし、求職者にも当てはまる。医療機関や施設にも当てはまることだと考えています。
この答えを読んだとき、ここまでの話が一本の線でつながった気がしました。
やりたいことが分からずに会計士になった人が、安全圏を出て経営者になった。別の会社で戦っていた私たちは、新しい旗のもとでRePathの一員になった。そして私たちが向き合う看護師さんも、転職という岐路で、新しい道を探している。
RePathという名前は、会社の名前であると同時に、ここに関わるすべての人への約束なのだと思います。
人は、何度でも生まれ変われる。そして、新しい道は自分の手で拓ける。
この記事でこの後に出てくる話はどれも、この一文の証拠です。
不安、ワクワク、そして「極限までしゃがみ込んだ」日々
Q9 -2024年12月の創業時、一番の不安と、一番のワクワクはそれぞれ何でしたか?
柴田: 一番の不安は、私が「人材紹介」という事業領域を深くは知らないことでした。未知の領域で、果たして想定どおりの売上や利益を出せるのだろうか。
そして何より、事業譲渡という大きな変化の中で、メンバーが辞めずについてきてくれるだろうかという不安。
でも、それ以上にワクワクしていたんです。M&Aの最中にも感じていた「戦えるチーム」が、ポテンシャルを爆発させた状態を想像すると、きっと今までに見たことのないようなすごい世界が見えるんじゃないか。そう思ったら、不安よりもワクワクの方がずっと大きかったです。
Q10 -これまでで一番苦しかった時期と、それをどう乗り越えたのかを教えてください。
柴田: やっぱり、理想と現実のギャップに皆が苦しんでいた最初の半年間ですかね。
乗り越えられたのは、何か特別なことがあったからではないんです。現場の皆が、逃げずに求職者と事業所に向き合い続けてくれたから。泥臭く、コツコツと、あきらめたくなる時も何とか歯を食いしばり、1日1日に向き合ってくれた。その結果が、少しずつ実を結んでいった。現場の粘り勝ちだと思います。
あの半年のことは、私たちもよく覚えています。思うように成果が出ず、手応えのない日が続きました。柴田さんはその時期を「現場の粘り勝ち」と言いました。自分の手柄を一つも語らないところが、柴田さんらしいと思います。
Q11 -少し踏み込んだ質問をさせてください。初年度・2期目の業績を、代表としてどう受け止めていますか?
柴田: 正直に言うと、想定していたよりも赤字が大きかったです。
ただ、悲観はしていません。この期間にうまくいかなかったこと、失敗したことのすべてを、我々は何一つ無駄にしていないという自負があるからです。ただ漫然と赤字を出したわけじゃない。次へつながるための、意味のある失敗を積み重ねてきたと思っています。
今の状況は、言わば「大きくジャンプするために、極限まで深くしゃがみ込んでいる」状態です。まださらに深くしゃがみ込むかもしれない。だけど、その分だけ、最後は誰よりも高く飛べると思っています。
採用記事に赤字の話を載せるかどうかは、正直迷いました。
それでも載せたのは、この会社が今まさに、跳ぶ直前にいるからです。完成された会社に入って仕組みの一部になるのではなく、これから跳ぶ会社に、跳ぶ側の一人として加わる。RePathに今入るというのは、そういうことです。
「ユーザーファースト」を、あえて掲げない
Q12 -看護師紹介の会社は約100社あると言われます。その中でRePathが選ばれる理由は何だと考えていますか?
柴田: 昨今、世の中の多くの会社が「ユーザーファースト」を掲げています。でも我々は、あえて「一緒に働く仲間」に焦点を当ててMVVを設定しました。
一見逆説的に聞こえるかもしれないですが、僕は「働く仲間の圧倒的な成長」こそが、結果的にどこよりも強固なユーザーファーストを実現すると信じています。
キャリアアドバイザー自身が成長し、自分の仕事に誇りを持ち、本気で介在価値を発揮できるからこそ、求職者や医療機関に最高の価値を届けられる。表面的な言葉ではなく、目の前の「仲間」の成長に全振りしていること。それが、RePathが選ばれる、そして今後選ばれていく最大の理由だと思います。
代表が自ら、「働く仲間の成長に全振りする」と言い切る会社。それは、RePathで働く一人ひとりが、会社にとって一番の投資先だということです。
Q13 -一人のアドバイザーが病院側と求職者側の両方を担う「両面型」にこだわる理由は?
柴田: 片面型だと、どうしても情報の伝言ゲームになり、「給与」や「休日」といった表面的な条件だけのマッチングになりがちです。
両面型だからこそ、求職者の「転職軸・コア」と、病院側の「本当の実情」を直接すり合わせることができる。入社後のミスマッチを防ぎ、長く定着してもらうためには、この両面型が良いと考えています。
Q14 -訪問看護の現場を持つグループだからこそ分かる、看護師さんの「リアルな悩み」とは?
柴田: 単なる「給料を上げたい」「休みが欲しい」という表面的なものだけではありません。「患者さんとどう向き合いたいか」「自分の看護観との向き合いと葛藤」、それに加えて「自分の生活やライフステージの変化と、やりがいをどう両立させるか」。
そういう深い悩みまで到達し、理解し、伴走できる。だからこそ、本質的なキャリア提案ができるんだと思います。
Q15 -都市部ではなく地方に力を入れる戦略は、どんな問題意識から生まれたんですか?
柴田: 医療過疎、特に地方での看護師不足は、命に関わる深刻な問題です。訪問看護をやっていても、特に過疎地域の難しさを感じています。
競合がひしめく都市部でパイを奪い合うよりも、本当に人が足りなくて困っている地方の医療機関や施設に光を当て、人材をつなぐこと。まずはその社会課題に向き合うことが、我々が社会に果たすべき使命だと思ったからです。
Q16 -看護師不足が叫ばれる中で、人材紹介会社が果たすべき「本当の役割」とは何だと思いますか?
柴田: 右から左へ人を動かして手数料をもらうことではありません。求職者や医療機関自身も気づいていない魅力や課題を引き出し、求職者の隠れたポテンシャルと掛け合わせること。そして、医療業界全体の人材の「最適配置」と「長期定着」を実現することだと思います。
「右から左へ」ではない。RePathの仕事は、一人の看護師さんの人生の岐路に、本気で向き合うことです。ここでは、売上の数字より先に、「その人がそこで長く働けるか」が問われます。
仕組みではなく、「熱量」でできている会社
Q17 -Recovery InternationalとRePath、両方の代表を務める柴田さんから見て、同じグループでも風土の違いは感じますか?
柴田: 守るべき基盤を仕組みで支えるRecoveryと、熱量で新たな領域を攻め落とすRePath、って感じです。
Recoveryは、上場企業として培ってきた土台やガバナンスが整っていて、非常に「アットホーム」な温かい風土がある。現場のスタッフ一人ひとりが安心して力を発揮できるように、盤石な「仕組み」で回していく強さがあります。
一方でRePathは、言わば「戦い」の場所。立ち上げ期のスタートアップそのものだから、整った仕組みに寄りかかるのではなく、一人ひとりが道を切り拓いていく。仕組みではなく、一人ひとりの「熱量」が組織をつくっています。
Q18 ―そのRePathで活躍している人には、どんな共通点がありますか?
柴田: 真面目、素直、誠実、あきらめない、やり切るまでやり続ける。他責の言葉を発しない、行動重視、仲間想い。
挙げだしたらきりがないです。素晴らしい人材ばかりです。
Q19 -今のRePathの「良いところ」と「伸びしろ」を教えてください。
柴田: 良いところは、熱量、行動力、一体感、営業力です。苦しい時期を共に乗り越え、今では強固な「一体感」を感じます。そして、泥臭く、コツコツと顧客に向き合う圧倒的な「熱量」と「行動力」。それをただの精神論で終わらせず、しっかりと結果に結びつける「営業力」が確実についてきました。
伸びしろは、「未来を信じる力」です。今がどれだけ深くしゃがみ込んでいる時期であっても、自分たちは絶対に高く飛べると信じる力。自分たちはまだまだやれるという強い思いが、そのまま伸びしろに直結していると思います。
Q20 -柴田さんが経営者として、ずっと大切にしている判断軸や信条はありますか?
柴田: 4つあります。
- 当事者意識MAXで、なんでも自分事
- 一次情報は、自分で取りに行く
- 仕組みで支え、人で伸ばす
- 働く仲間の人生まで向き合う
-では、社員に「これだけは譲れない」と伝え続けていることは?
柴田:うーん、特にないかな。強いて言えば、シンプルに「継続は力なり」「失敗は成功の糧」。
これだけ自分に厳しい信条を持っている人が、社員に課すルールは「特にない」。求めているのは、続けることと、失敗を恐れないことだけです。
柴田さんは、人をルールで縛るのではなく、信じて任せる人です。RePathでの失敗は責められるものではなく、次の挑戦の材料になります。そのことを一番よく表しているのが、次のエピソードです。
「辞めます」と言った彼が、リーダーになった日
Q21 -柴田さん自身が、RePathやそのメンバーから刺激を受けることはありますか?
柴田: あります。
事業譲渡で移ってきてくれたコアメンバーの一人が、昨年の夏に「辞めます」と言ってきたんです。めちゃくちゃショックでした。
1か月後、「やっぱり残りたい」と言ってきた。めちゃくちゃ嬉しかった。
だけど、その中途半端な考えや行動によって、正直、信頼は低下した。
そんな彼を、幹部陣は見捨てず、育て、苦手だったロジカルシンキングを鍛え上げて、今年の10月にリーダーを任されるまでに信頼を回復させたんです。メンバー本人の頑張りにも刺激を受けたし、見捨てずに輝かせた幹部陣にも大きな刺激を受けました。
正直、「彼をリーダーにしようと思う」と言われたときは、「はい?? どゆこと???」とぽかんと口が開いてしまいました。それくらい驚いたし、その驚きの10倍、嬉しかったです。
一度は辞めると決めて、それでも戻ってきて、信頼を失ったところから、もう一度積み上げる。それは本人にとって、決して楽な道ではなかったはずです。
それでも、RePathには彼を見捨てる人はいませんでした。「辞めた後も、その人の人生に向き合う」という柴田さんの覚悟は、いつの間にか代表一人のものではなく、組織全体の文化になっていたのです。
彼は、この会社でもう一度、生まれ変わりました。
一度つまずいても、ここではもう一度立ち上がれる。RePathがどんな会社かを一つだけ伝えるなら、私はこの話を選びます。
「困難は、それを乗り越えられる人間の前にしか現れない」
Q22 ―立ち上げ期を振り返って、「あれが分岐点だった」と思う出来事はありますか?
柴田:実は、今もまさに「立ち上げ期」だと思っています。だから「あれが分岐点だった」と過去形で語るより、「これが絶対に分岐点になるだろう」と確信している直近の出来事があります。
それは、RePathの取締役の高山さんに起きている変化です。「自分がなんでもやらなきゃいけない」「なんでもできるようにならなきゃいけない」という、本来トップや社長が備えるべき「強烈な当事者意識」が芽生えてきたのを肌で感じます。それがMTGでの発言にも、日々の行動にも現れている。
経営陣がその覚悟を持ったとき、組織は劇的に変わります。僕がリカバリーで変わった瞬間がそこにあり、リカバリーがIPOするきっかけもそこにあったように思うからです。もともと驚異的だったその人の、さらなる進化。それが、これからのRePathにとって最大の分岐点になる。そう思っています。
Q23 -次の世代のリーダーたちには、どんなリーダーになってほしいですか? どんな人に、RePathの未来を任せていきたいですか?
柴田: 3つあります。
1つ目は、「強烈な当事者意識を持って、最後までとことんやり抜ける人」。誰かがやってくれる、ではなく「自分がこの会社を創るんだ」という当事者意識を持っている人。どんな課題に対しても、当事者としてコツコツとやり切る人です。
2つ目は、「人を惹きつける力」を持っていること。これは、なんでも一人でこなせる完璧なスーパーマンという意味ではありません。むしろ自分の限界を知り、素直に仲間を頼ることができる人。そして同時に、仲間からも「この人になら背中を預けられる」「この人のためならひと肌脱ごう」と頼られるような、強烈な人間味を持っていること。リーダーの仕事は、仲間を巻き込んでいくことも大事だと思っています。
3つ目は、「くじけそうな時に耐える力」。組織を牵引していれば、思い通りにいかなくて心が折れそうになる日々です。でも、その一番苦しい時に、ぎりぎりで良いから踏みとどまる力。それはもう「耐える」という言葉そのものです。ただ、この「耐える」がいつもスタートで、耐え抜く力が新たな道を切り開く大事な要素だと思います。
僕自身、辛いときに自分で自分に唱える言葉があるんです。
「困難は、それを乗り越えられる人間の前にしか現れない」
これを自分に唱えると、少し落ち着けるというか、踏みとどまれるときがあるんです。
会計士という安全圏を自ら出たとき。「IPOは無理だ」と言われ続けたとき。想定以上の赤字と向き合う今。柴田さんはそのたびに、きっとこの言葉を唱えてきたのだと思います。
柴田さんが求めているのは、完璧な人ではありません。限界を知り、仲間を頼り、苦しいときにぎりぎりで踏みとどまれる人です。そしてRePathでは、入社年次に関係なく、そういう人に未来を任せます。一度辞めると言ったメンバーがリーダーになったことが、その何よりの証拠です。
IPOの先に、見ている景色
Q24 -RePathはIPOを目指しています。それを「組織の健全性と信頼の証明」と位置づけるのはなぜですか? 会計士だからこその視点もありますか?
柴田: 会計士として多くの企業を見てきたからこそ、非上場企業の「ブラックボックス化」の危うさをたくさん見てきたというのはあります。
我々は、人の人生を左右し、医療インフラの一翼を担う仕事をしている。だからこそ、社会的に透明で、ガバナンスが効いた公明正大な組織でなければならないと思っています。
それに、先ほどお話しした「働く仲間の圧倒的な成長こそが、どこよりも強固なユーザーファーストを実現する」ということを、証明したいんです。今までにない人材紹介会社がここにあることを、社会に知ってもらう。少子高齢化で労働生産性が落ちていく日本で、人材紹介の在り方そのものを根底から覆すことで、社会課題の解決に一役買えるのではないか。IPOは、そのためのステップだと考えています。
かつて「御社はIPOできません」と言われ続けた人が、それを乗り越えてRecovery Internationalを上場させた。その人が、今度はRePathでもう一度同じ山に挑もうとしています。
Q25 -5年後、RePathは医療業界にどんな変化をもたらしていたいですか?
柴田: 医療業界は、古くは「3K」と言われ、きつい仕事であり、離職率が高い業界です。
RePathが介在したことで、医療の職場に活気が戻った。離職率が大きく下がった。「もう働けないと思っていたけど、自分はまだ働けるんだ。社会から認められた気がする」。そんな声が生まれるように、医療業界の当たり前を、当たり前じゃなくしたい。
その上で、「働く側」「雇う側」「介在したRePath社員」全員が成長する、三方良しを実現したいです。
「もう働けないと思っていたけど、自分はまだ働けるんだ」。これもまた、一人の看護師さんの「生まれ変わり」です。
そして柴田さんは、三方良しの中に、RePathの社員自身をきちんと入れています。看護師さんも、医療機関も、そして私たち自身も成長する。この会社では、誰かのために働くことと、自分が成長することが、同じ方向を向いています。
未来の仲間へ。そして、医療に携わる皆さんへ
Q26 -最後に、RePathに興味を持ってくれている方、未来の仲間へメッセージをお願いします。
柴田: 人の人生の岐路に立つ仕事は、決して楽ではありません。プレッシャーもあるし、思い通りにいかないことばかりです。
でも、ここまで話してきたことや、社名に込めた想いに少しでも共感してくれる方がいたら、きっと僕らは仲間になれる。助け合えるし、一緒に成長していける。人生を変えられると思います。
自分の仕事が誰かの明日を変え、医療の未来を支えているという確かな実感があります。本気で汗を流し、自分の仕事に誇りを持ちたいと思うなら、ぜひ私たちのドアを叩いてください。熱い仲間と共にお待ちしています。
Q27 -医療機関、看護師の皆さんへも一言お願いします。
柴田: 私たちは、ただ条件を並べるだけの紹介はしません。皆さんが抱える本当の悩み、奥底にある本音に泥臭く向き合うことで、皆さんがまだ気づいていない本当の転職軸・コアを引き出します。
そして、双方が長く共に歩める、最高のご縁を創り出します。ぜひ、皆さんの「本当の想い」を、私たちにぶつけてください。私たちが必ず、新しい道を拓きます。
取材を終えて
「なぜ、事業譲渡を受けてまで、この事業をやろうと思ったんですか?」
ずっと聞きたかった問いの答えは、思っていたよりずっとシンプルでした。
柴田さんが懸けたのは、事業ではなく、人でした。
やりたいことが分からないまま会計士になった青年は、安全圏を自ら出て、戦場に降り立ちました。「無理だ」と言われ続けた逆境の中で、逃げずに戦う人の姿に奮い立ちました。そして、目の奥が燃えるチームに懸けました。
あの日、「引き継がれる側」だと思っていた私たちは、実は「懸けられた側」だった。そのことを、このインタビューで初めて知りました。
柴田さん自身が、生まれ変わった人です。私たちも、新しい旗のもとで生まれ変わりました。一度は「辞めます」と言った仲間は、リーダーとして生まれ変わりました。そして私たちは毎日、看護師さんが新しい道へ踏み出す瞬間に立ち会っています。
RePathは、まだ完成された会社ではありません。赤字もあるし、苦しい時期もありました。柴田さん自身、「今は深くしゃがみ込んでいる」と言っています。
それでも、この会社には、一度つまずいた仲間を見捨てない人たちがいます。失敗を責めずに次の糧にする文化があります。そして、働く一人ひとりの成長に全力で懸ける代表がいます。
完成された会社で、決められた役割をこなしたい人には、RePathは合わないかもしれません。でも、今の自分を変えたい人、誰かの人生の岐路に本気で向き合いたい人、そして自分の手で会社をつくっていきたい人にとっては、今のRePathほど面白い場所はないと思います。
「困難は、それを乗り越えられる人間の前にしか現れない」。
この会社には、まだ乗り越えるべき困難がたくさんあります。だからこそ、一緒に乗り越えてくれる仲間を探しています。
柴田さんが私たちに懸けてくれたように、今度は私たちが、まだ見ぬ仲間に懸けたいと思っています。
人は、何度でも生まれ変われる。 次にRePathで生まれ変わるのは、この記事を読んでいる、あなたかもしれません。
RePath株式会社
2024年12月設立。訪問看護のRecovery International(東証グロース上場)グループの、看護師に特化した人材紹介会社。一人のキャリアアドバイザーが医療機関と求職者の双方を担う「両面型」で、地方を含む全国の医療機関と看護師のマッチングと長期定着を支援しています。