レンチナスのハウスに見学へ来た人からよく聞かれる質問がある。
「これ、生で食べても平気ですか?」
ハウスの中でつやつやした椎茸を見ると、つい聞きたくなる気持ちはわかる。
実際、手に取って匂いを嗅いで、そのまま口に運びかけた人も何人か見てきた。
結論から言うと、おすすめしません。
理由は、しいたけ皮膚炎というものがあるからです。
生まれた時から「椎茸は焼いたり蒸したりして食べるもの」という当たり前が根付いてたので、「生で食べよう」ということを考えたことが無かったんですが、初めてこの名前を聞いたときこっちも半信半疑でした。
椎茸なんて、和食の定番みたいな食材。
それで肌が荒れるなんて、にわかには信じがたい。
でも調べれば調べるほど、ちゃんと実在する話でした。
日本で最初に報告されたのは1970年代らしく、意外と歴史がある話でもある。
夏場のBBQに結構多いってニュースでも出てました。
生とか加熱不十分な椎茸を食べたあと、数時間または数日たってから胸やお腹、背中を中心に発疹が出て猛烈にかゆくなる。
線状に出るのが特徴で、ムチで叩かれたような跡とか、爪で引っ掻いたような跡に見えることもあるらしい。
写真でも見ましたがなかなかインパクトがある見た目でした。
厄介なのは、原因がはっきり解明されていないところ。
椎茸に含まれる成分が関係していると考えられているけど、はっきりした仕組みまではわかっていないらしい。
しっかり加熱した椎茸でも、まれに出ることがあるというから、余計にややこしい。
「焼けば絶対安全」と言い切れないところがこの話の一番厄介な部分で、栽培する側としてはちゃんと火を通してくださいと伝えるくらいしかできない。
命に関わるようなものではなくて、治療すれば1〜2週間くらいで治まるらしいが、かゆみを一度経験した人の話を聞くと、しばらく忘れられなさそうな感じがする。
BBQでビールと一緒に椎茸を食べたときに発症しやすいという話もあって、夏場は特に気をつけたほうがよさそうです。
BBQって夏の定番行事じゃないですか。普通に楽しいし。
家で調理する時には余程のことがない限り大丈夫だとは思いますが、BBQとなるとワイワイしながらだったり自然を楽しんでたり、常に注意力散漫な状態で食べるからこそ、コンロの上にある椎茸がしっかり焼けてるのか焼けてないのかわからないまま食べてしまっているんだとも思います。
とはいえこれって椎茸だけではなくてお肉もそうだと思うんですが。
椎茸って1日どれくらい食べていいの?
じゃあ、ちゃんと焼けば1日何個までなら大丈夫なのか。
これも実は明確な基準はないようです。
目安としてよく言われているのは、生椎茸なら1日3〜5個くらい、干し椎茸だとそれより少なめの2個程度。
子どもの場合はさらに少なく、1〜3個くらいが目安らしい。理由は、椎茸に含まれる食物繊維の量が多いこと。食べすぎると今度はお腹の調子が悪くなる。
何にでも言えることだけど、体にいいものでも量には限度がある。
椎茸農家として毎日大量の椎茸に囲まれていると、椎茸に関するほとんどのことが当たり前で、こういうもんだからと考えてしまいがちなんですが、外部からの素朴な疑問に答える機会も地味に多くて、「そう言われてみればそうだな」みたいな瞬間が結構あるんですよね。
栽培している側でも、実は科学的にまだ全部わかっているわけじゃないんだな、と思うことがときどきある。
何十年も付き合ってきた食材なのに、まだ解明しきれていない部分が残っている。
でもそれはそれで、ちょっと面白いことですよね。
毎日大量に育てて、出荷して、それでもまだ知らないことがある。
そのくらいの距離感で椎茸と付き合っています。
答えがはっきりしないことも多いけど、ひとつだけ確実に言えるのは、ちゃんと焼いた椎茸はやっぱり美味しいということ。
うちのハウスに見学へ来た人には、まずそれを食べてもらうことにしています。
シンプルに塩焼きで。
食べたあとに、だいたい会話が変わるんですよね。
質問の中身が「これ何ですか」から「これってどうやって作ってるんですか」に変わる。
そこから先の話は、たぶん文章より、現場で立ち話したほうが早い気がしています。
まずはうちの椎茸を現地に食べに来てみてください。
採用の話はそれからで。