ここからは椎茸農家のターン
椎茸が一番売れるのは、秋から冬。
きのこ農家にとって一番値段がついて本領発揮されるのがこれから。
毎年レンチナスも血眼になって椎茸を捌く期間がこの秋冬になります。
鍋の季節ですから、想像はつくと思うのですが、夏は動きが鈍い。とにかく鈍い。
暑い日に椎茸を焼こうという気分になりにくいのは、まあ自然なことでしょう。
追い風という追い風がBBQくらいです。
需要が落ちる夏に、栽培コストが一番かかる。
この話をすると、たいてい不思議な顔をされ、じゃぁ作る量を減らせばいいのに、と思われるでしょう。でも売り先などによってはそういうわけにもいかないんですよね。
うちのハウスは夏も冬もエアコンで温度を管理していますが電気代の重さは季節でまったく違う。圧倒的に夏がやばいです。
冷やすという作業は、とにかく金がかかる。
外が35度あるときに、ハウスの中を20度以下に保つ。
その15度分を、電気の力だけで埋めることになる。冬に温める方が、まだ楽なんです。
そういう事情もあって、夏場は椎茸をやらない農家もいる。
秋冬だけ作って、暑い時期は止める。コストを考えれば合理的な判断でしょう。
売れる時期に、安く作って、売る。無理に一年中回す理由がない。
うち通年でやる理由は単純で、取引先に一年中出せることが価値になるから。
夏だけ別の産地から仕入れてください、とは言いにくい。
安定して出せること自体が信用になる仕事なので、そこは崩したくない。
その代わり、夏の数字はきついです。
売上は落ちるのに電気代は上がるから毎年この時期をどう乗り切るかの話になる。
社内でも、我慢だ我慢。という言葉が何度も出るのが夏。
そして秋
秋が来ると、その圧が抜けます。
外の気温が下がって、エアコンが無理をしなくてよくなる。
同時に、市場が動き出す。
コストが下がって売上が上がる方向に、二つが同時に向かうので現場の空気も変わる。
ただ、楽になるだけでもない。
秋を越えると、今度は別の問題が出てくる。
冬は温度が上がりきらないこともあって、暖房を入れていても外気が冷えすぎていると設定温度まで届かない日がある。夏とは逆向きの苦労です。
冷やしすぎないよう押さえていた仕事から、届かない分をどう埋めるかの仕事に変わる。
八峰町は雪が降る
冬になると、ハウスに着く前に除雪が必要になる。
夏より早く出社して、雪をかいてから仕事を始める日が出てくる。
椎茸の作業に入る前に、もう一仕事あるわけです。
そのほか停電のリスクもあります。
空調が止まれば、ハウスの中の環境は一気に崩れてしまうので雪と風が強い日は、そこがずっと気がかりになる。
冬の天気予報の見方が、この仕事をしてから変わったという話もよく聞きます。
農家ともなれば春夏秋冬、それぞれに別の種類の大変さがあると思います。
どの季節が楽か、と聞かれても答えに困りますが…。
暑さで金が飛ぶ夏か、雪と戦う冬か。どちらも違う形でしんどい。
それでも毎年、同じ場所で同じものを作り続けている。
秋はその中で、一番落ち着いている時期かもしれません。
暑さの峠を越えて、雪はまだ来ていない。そして市場が温まり始める。
一年で唯一、追い風が重なる季節です。
だから秋は、動きやすい時期でもある。設備の手入れをするのも、新しいことを試すのも、この時期が一番やりやすい。
冬が来る前に済ませておきたいことが、いくつもある。
逆に言えば、ここで手を打てなかったことは、春まで持ち越しになる。
この数週間で、どれだけ整えられるか。
椎茸農家の秋は、そういう季節でもあります。