就活ルール廃止提言に込められた次世代へのメッセージを考えてみる

経団連 中西会長による就活ルール廃止提言が議論を巻き起こしています。経団連は簡単には動かないと思っていたので、私もこの提言には驚きつつ、日立製作所の変革を牽引してきた中西会長のあえて空気を読まない姿勢に「さすが…!」と唸りました。そして、そこに込められた強いメッセージを感じました。

私も、採用に関わるサービスの提供者としてだけでなく、今は子ども達の将来を案じる身として、就活というシステムには思うところがいろいろあるので今回まとめてみたいと思います。

形骸化したシステムの終焉宣言

就活ルールがなくなるとどうなるか。よく言われているように新卒学生に対しても通年採用という企業が多くなっていくでしょう。つまり、中途採用と同じです。

ファーストリテイリング、ヤフー、楽天など通年採用の企業も増えています。2017年度の経団連のアンケート調査(加盟企業のうち553社が回答)でも「広報活動や選考活動の開始時期の規定は削除すべき」との回答が最も多くなっています。

出所:日本経済団体連合会「2017年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」

今回の中西会長による提言は、新卒一括採用や絡み合っている年功序列、終身雇用といった日本型雇用システムに関して「既に形骸化してきているし、経済界としてオフィシャルに終わらせていくよ」という宣言のように感じました。

加えて、これからの世代に向けて「そのつもりで備えてほしい」というメッセージでもあると思います。なぜなら、企業側だけが変わってもなかなか構造は変わっていかないからです。根本的な変化を起こすには、学生側も変わっていく必要があるのではないでしょうか。

優しい新卒一括採用システム

新卒一括採用はとても優しいシステムだなと思います。ただし、悪い意味で。

いつこう動いてね、という枠組みがご丁寧に提示されるシステム。提示された枠組みを超えて考える必要はなく、学生時代の取り組みや専門性もそこまで関係なかったりもしますよね。私も今振り返ると就活サイトのマニュアルに沿って動いていただけでしたし、その"優しさ"にどっぷり浸かってもいました。

しかし、就職後にいろんな世界に触れたり、様々なバックグラウンドの方と触れ合う中で、自身が就活当時に考えていた範囲は随分狭かったんだな、深く考えなくて済むシステムに乗ってたんだな、と思い知りました。思考停止した方が良いというのはある意味残酷ですらあります。

自由度は上がるが厳しさは増す

自分の頭で考えて社会一般の枠組みに囚われないような人にとって、こうした就活というシステムは随分窮屈で異様なはずです。そして、既存の枠組みに囚われない考えの方は確実に増えているように思います。

学生の中で、就活の時期と海外留学が重なるなど今の就活システムに合わせると挑戦したいことが制限されてしまう人には、就活ルール廃止で自由度が増すのは歓迎ではないでしょうか。

一方で、ルールがなくなりいつでも選考の機会があるということは、逆にいつ選考に臨むかを自分で決めないといけないわけです。自由度が上がるかわりに何でもありになります。ルールの中でヨーイドンできた方が楽だったという学生(かつての自分を含め)にとっては、いろんなことを自分で決めないといけない厳しい世界でもあります。自由にはなるけど楽なのは変わらない、なんてことにはなりません。

高校や大学の受験と同じような季節行事として"就活"をとらえると通年採用へのシフトが大事に見えるかもしれません。しかし、社会に出るのに決められたレールに乗らないといけなかったのが、むしろ異常なことでした。就活ルールが廃止されたら、社会人が仕事をしながら転職活動をするように、大学生活や卒業後の日々の中に就職活動が織り込まれていくだけの話です。

就活ルール廃止に向かう場合、過渡期にある学生を守るために一定の移行期間が設けられるかもしれません。ただ、そういった学生もしばらくすればルール廃止後の世界で揉まれてきた世代との競争に晒されるわけで、もはや賽は投げられているように思います。

就活ルール廃止後の世界

新卒一括採用がなくなるとすると、新卒生を同じタイミングで大量に受け入れて数十年単位で育成していく傾向は薄まっていくでしょう。そもそも若年層が更に減少していく中で、同時に大量採用すること自体が難しくなっていきます。

学生もヨーイドンではなくなるので、学生時代からインターンシップ等を通して、学業とのバランスを取りながら自身の進路を探り、またビジネス経験やスキルを培っていく方が増えていくように思います。そういった学生が増えれば増えるほど、変なルールのない世界への転換は加速していくでしょう。

すると、新卒の定義も曖昧になり、いわゆる新卒ブランドも薄まっていくのではないでしょうか。"生え抜き"というフレーズが死語になるかもしれません。最初に入る会社で人生が決まるなんてこと(という思い込み)もなくなっていくと思います。

大学はどうするのだろう

今回の報道では、大学側のコメントとしては「学業が疎かになる」といった懸念の声が相変わらず多数のようでした(こういった議論ではいつもそうですが)。

確かに、就活というイベントのタイミングが指定されていて、就活からあぶれた学生は這い上がれないかもしれないといった状態で就活を優先するのを止めるのは難しかったのかもしれません。

ただ、上記したように、就活ルール廃止後はその前提が変わるわけです。新卒ブランドが薄れた社会では、卒業してから仕事を見つけていくことも不自然ではなくなっていくはずです。なので、大学が学業を修めることを重視するうえでやるべきことは、就活ルール廃止への反対ではなく、成績が悪いと卒業できないようにすることなのでは、と思います。

また、このレポートやこの記事にある通り、インドの上位校では、逆に大学が学生の仕事探し(リクルーターからのアプローチ)に大きな管理権を持っているそうです。ここまで極端にやるかはともかく、こういった措置を取るのも大学の戦略のひとつになり得るでしょう。

今回いくつか目にした大学側のコメントの中では、下記の近畿大のキャリアセンターの方が良い意味で際立っていました。

近畿大キャリアセンターの担当者は「多くの学生は勉強と就活の切り替えをしているのが現実で、就活開始の目安がなくなると迷うかもしれない」と懸念する。ただ、「『通年採用』のようになれば、自分は将来、どう働きたいのかということを常に考えるようになり、マイナス面ばかりではないのでは。変化に合わせて大学の支援も考え直さなくてはならない」と話した。

私もこのコメントに同意です。学生時代からビジネスの場に触れることで、どう働くか、仕事で何が必要になるかといったことをより具体的に考えられるでしょう。そして、そのために学ぶべきことが明確になる、つまり「学業と職業の接続」が進むように思います。私も、就職してビジネスの場に身を置いてからの方が勉強したいことが出てきたというのが正直なところです。

これからの世代には、企業研究やOB訪問だけでなく、インターンシップ等を通して実際のビジネスの場でいろんな経験をして、自身の人生を考える糧にしてみて欲しいと思います。

最後に

多くの報道が"就活"をどうするかという議論に終始しているように思いますが、本質は中西会長が語っている以下の点なんじゃないかと思います(下記リンク先の動画)。

単一文化の社会であること自体がそろそろ弱点になってきたと思っているので、もっと多様性のある社会につくり変えた方がいい

長いようで短い人生において、どのように仕事に就き(また、あえて仕事に就かず)、どういったキャリアを築いていくか、どういった人生を過ごしていくか…。「これが普通」というような暗黙の決まりごとはなくなり、それぞれが多様な選択肢を持ちながら、自身で選択して生きていける。そんな寛容さや自由度を持った社会を次の世代のためにもつくっていきたい。

そう思って日々の仕事に取り組んでいる自分にとって、この中西会長のコメントは、まさに我が意を得たりでした。確実に時代は変わってきています。そして、変化は推し進めていくものです。時間はかかるかもしれませんが、想いを共にする社内外の仲間たちとこの変化を加速させていきたいと思います。

今回の内容は私なりの捉え方ですが、いやいや自分はこう思う等ありましたらぜひ意見交換させてください!長くなってしまいましたが、お読み頂き、ありがとうございました!

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