ナイル渡邉が気になる、あの会社の採用広報 #2 Ubie湊谷海斗氏|エンジニア起点のスクラム採用でリファラル70%を実現

採用や広報などに携わってきたナイル株式会社の渡邉慎平氏が、「採用広報」の視点で注目している企業を訪ね、実態を深掘りする本企画。

第2回目は、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションを掲げ、2017年に創業したヘルステックスタートアップの「Ubie(ユビー)」です。資金調達は44.5億円に達し、メンバーは約140名にまで拡大。採用広報はもちろん、組織を大きく2つに分けるユニークなカルチャーなどもあわせ、Ubie Discovery(プロダクト開発/事業開発を担う組織)でSREとして活躍する湊谷海斗氏にお話を聞きました。

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ナイル株式会社
カルチャーデザイン室 マネージャー
渡邉慎平 氏

慶應義塾大学卒業後、ナイル株式会社(当時ヴォラーレ株式会社)に新卒入社。300社以上のデジタルマーケティング支援に携わったのち、2018年5月に人事へ異動し、採用と広報を所管。現在はオウンドメディアの運営をはじめとする、採用広報と採用マーケティングを担当。

Ubie株式会社
SREエンジニア
湊谷海斗 氏

大学入学と同時にプログラミングを学び始め、複数の会社にて開発を経験。2016年より株式会社カカクコムにて食べログの開発に従事。サーバーサイドからインフラ、データサイエンスなどの領域を経験し、2019年にUbieへ入社。 SRE / Server Side を担当している。

専任人事は置かない。全メンバーが採用にコミットする

渡邉:本日はよろしくお願いいたします。まずはUbieさんが取り組まれている事業について、ご紹介いただけますか。

湊谷:こちらこそよろしくお願いいたします。Ubieでは現在、大きく3つの事業を展開しています。1つ目は、一般の方に向けた症状チェッカーサービス「ユビーAI受診相談」。頭が痛いなどの症状があった場合、スマートフォンやパソコンからサービスにアクセスし、20ほどの質問に答えるだけで、病名や詳細、受診に適した診療科を知ることができます。位置情報を重ね合わせることで、最寄りのクリニックや診療所などの情報を得ることも可能です。

渡邉:ネットで検索していたこれまでの一方向的な情報取得から、明確なアドバイスが受けられるようになると。月間利用者数も300万人を突破するなど注目されていますよね。

湊谷:BtoC向けのサービスとして、おかげさまで多くの人にご利用いただいています。

2つ目は、BtoBの医療機関向けサービス「ユビーAI問診」です。これまでの紙の問診票に替わり、入力をタブレットに置き換えることでより詳しい状態を医師は得ることができ、情報の伝達ロスやカルテ入力の手間削減などに貢献。現在、47すべての都道府県、400以上の医療機関で導入されています。

3つ目は、製薬会社さまに向けたサービスです。先2つのサービスと連携することで、製薬会社さまにさまざまな情報や医学的なアプローチを提供しています。具体的な事例として、ある製薬会社さまが展開している希少疾患「遺伝性血管性浮腫(HAE)」に関する情報を、病気に関連する症状が出た場合、両サービスに表示する取り組み等がはじまっています。

渡邉:大きく3つの事業がある中で、湊谷さんはどのような業務を担当しているのですか。

湊谷:私はSREエンジニアとして入社し、この3つのサービスを横断するインフラ全体を監視しています。そしてもう1つ、入社したときから採用業務にも携わっています。Ubie Discoveryでは私に限らず、全メンバーが採用にコミットしています。

渡邉:全メンバーが採用にコミットしているとは、かなり特殊だと思います。どのような流れで採用が進められているのでしょうか。

湊谷:大前提として、Ubie Discoveryのメンバーとして入社する前のオファーレターの段階から、ジョブディスクリプション(以下、JD)の1つに「採用」が明確に記載されています。これは職種関係なく誰でも当てはまるものです。

渡邉:Ubieさんではそもそも、採用もコミットする業務の1つだと捉えていると?

湊谷:はい。採用の流れとしては、まず「こういうロール(職務・役割)があるといいよね」という現場の声がスタートになります。そのロールに該当するメンバーが社内にいなければ、外部からのアサイン。つまり、採用活動を行おうと。

そのため基本としては声を挙げたメンバーがJDも作成しますし、その後の採用広報的な活動も本人が担っていく、もしくは主導で進めていきます。メンバーによってJDやLeadの作成などは得手不得手があるため、そこは各メンバーのWill Canや仕事の状況に応じて、適宜コミットしている状況です。

あまりに忙しすぎて、本人が状況を正確に把握できていない場合もありますよね。そのような場合にはそのメンバーの業務をよく知る、隣のメンバーが採用を主導する場合もありますし、「開発業務ではなく採用活動にコミットしたほうがいいのでは?」と周囲がアドバイスするケースもあります。

現場起点のスクラム採用――リファラル採用 70%

渡邉:ロールの打ち出しは現場にいるエンジニアのほうが明確にできる一方、どうしても情報発信やリファラルの声かけなどが苦手なメンバーもいると思います。そのあたりの取り組み方法が以前から気になっていたのですが、Will Canによりアサインされるんですね。ところで、開発業務とのリソースの配分はどう調整していますか?

湊谷:配分も各エンジニアの判断で行っています。Ubie Discoveryは裁量労働制であるため、期待された役割に対してバリューを出すことが求められます。つまり、バリューを出すために新たなメンバーが必要だと感じたら、採用活動に注力し、配分はそれぞれのメンバー自身がよくわかっているんです。

渡邉:ということは早急に欲しいロールが生じた場合などは、採用業務に全コミットするケースもあると?

湊谷:もちろんあります。そのため先にも少し触れましたが、あまりに開発業務が忙しい状況が続いたら、Ubie Discovery内で「採用を考えてみよう」というカルチャーが浸透しています。一方で、全社的に短期間で人数を増やしたい場合もあるため、そのような場合は全員で協力して採用活動にコミットします。

渡邉:採用しようと決まった。ではそこから先、情報発信、採用手法の選定など、いわゆる採用広報の取り組みについても、基本は声を挙げたメンバーが主導していくんですか?

湊谷:そのとおりです。採用広報も含め、採用手法も基本は本人に任せます。ただし、大きな求人広告を打つなどの施策はコストがかかるため、見合ったROI(投資利益率)なのかどうか、ロジカルな判断のうえ実施していますこのロジカルに物事を進める思考やカルチャーも、Ubie Discoveryの特徴と言えるでしょう。

たとえば、採用サービスや採用広報的なメディアでは、Meety、LAPRAS SCOUT、NewsPicks、noteなどさまざまなチャネルを活用していますが、まずはファーストペンギン的なメンバーが、実際にどうなのかをトライします。その上でROIがよければ、他のメンバーも追従するとの流れです。

弊社のバリューの1つにローンチ&ローンチを略した「ロンロン」というのがあります。「100の議論より一の実行が大事」であるとの考えであり、開発業務だけでなく、採用活動にも取り入れています。とにかく手を動かし、候補者とのタッチポイントを増やすことも意識。その上でROIを検証しフィードバックしていく、といった流れです。

渡邉:Meety、noteを積極的に活用しているとのイメージを持っていましたが、裏ではエンジニアらしい、PoC(Proof of Concept、試作開発の前段階における検証)のようなロジカルな検証がなされていたんですね。採用広報に注力しようとすると「とにかく露出量や発信量を増やそう!」となってしまいがちになるイメージもありますが、正しい認知をしてもらうためには、Ubieさんのように高サイクルで施策を回しながら、自社にあったやり方を模索していくのは大事だなと、あらためて勉強になりました。

湊谷:実際、自社サイトから応募してくださった候補者に認知や応募のきっかけをアンケートしていますが、認知ではSNSが39%でトップ、ついでニュース・メディアが15%、検索10%、求人媒体7%という結果でした。応募に関しても、求人媒体が25%、メディアが23%、SNS14%と、SNSは認知・応募どちらにおいてもROIが高いことがわかりました。だから多くのメンバーが積極的にnoteで発信している。至って合理的な採用広報活動だと考えています。

渡邉:リファラルでの採用率が70%もあると聞いています。こちらは、どういった理由なのでしょうか。

湊谷:スタートアップあるあるだとは思いますが、創業から10数名までの採用は、ほぼリファラルでした。そして当然辞める人も少ない。このような意識が根底にあるため、現在でもリファラル採用を重視していて、実際Ubie Discoveryではおっしゃるとおり、リファラルでの入社が約70%です。

ただし採用業務自体がMustですから、リファラルもかなりハードです。入社するとまず、SNSのアカウントから徹底的にリファラル人材を絞り出しますからね。

渡邉:「前職で優秀だった方を3人教えてください」といったように、記憶をたどって探していく、いわゆるメモリーパレスというやり方ですか?

湊谷:メモリーパレスよりも、Ubie Discoveryのそれは、かなりハードだと思いますよ(笑)。ときにはFacebookでつながっている交友関係の浅い友人にDMをすることもあります。反応があったはタレントプールに入れておき、他メンバーからのロールが出る度にチェック。適した人材がいない場合には、さらにリファラルを絞っていきます。ただこのようなやり取りはお互いさまで、自分が採用活動に注力しているときにも、同じような絞りを仲間にアクションしています。

カルチャーを重視した採用で離職したメンバーは7名のみ

渡邉:リファラル採用への積極的な取り組みが、結果数字としても現れているんですね。ところで、採用ニーズがうまれた部署が現場主体で採用を進めていこうとすると、JDの要件がピンポイントになってしまい、該当者が少なくなったりポジションごとにJDを作成して、数が膨大になるといった課題はありませんか。大枠でのオープンソフトウエアエンジニアの採用はされていないのでしょうか。

湊谷:いえ、実際には両軸で採用を進めています。大前提として、メンバー自身が起点となり各々が理想とする人材を求めて採用を進めていますが、プログラミング言語やスキル的なマッチは重要視していません。ロールに特化したメンバーよりも、Ubie Discoveryが全体として抱えているイシューの解決と事業のグロースにコミットできるメンバーを求めているからです。そしてその本質を見極めるために、「Ubieness (ユビネス) 」という6つの採用要求を明確に打ち出し、照らし合わせています。

技術スキルや興味のあるドメインで見極めをしているわけではなく、カルチャーフィット採用を重視している、とも言えます。正直、私も含めて医療分野に特段高い意識を持っているメンバーが多いのかというと、そんなこともありません。もちろん「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」とのビジョンやミッションへの共感はMustですが。

渡邉:とくにエンジニア組織の場合は、特定の言語や新しい技術スタックなどでエンジニアの興味を喚起するケースが少なくありませんが、そうではないと。技術の親和性よりもカルチャーフィットを大事にしているんですね。

湊谷:逆に、言語や技術にしか興味がない人材はユビネスを見てもらえばわかるように、採用しない・できないようになっています。実際、事業成長に興味を持つメンバーが大半です。

渡邉:技術力をアップしたい。いわゆるキャリア志向の強いエンジニアも多いと思いますが、Ubieさんの場合はそのようなエンジニアは向いていないと?

湊谷:はい。現在、Ubie DiscoveryのDevという開発グループでは、個人のキャリアプランにはまったく歩み寄りません。それでも、これまでのロジカルな検証により事業成長にコミットした結果として、各人のキャリアップが実現できているとの成果が出ています。一方、そんな状況にも課題感を感じているため、キャリアや自社の技術課題にフォーカスした職種グループの作成を進めています。

渡邉:話を聞いていると、弊社とは組織体系は大きく異なるのに、エンジニア採用における感覚は近いと感じました。というのも弊社の新規事業であるモビリティ事業では、もともとScalaで書いていて、アーキテクチャもかちっとした構成でした。でも次第にスタートアップらしく開発リリースを早められるよう、JavaScript系の言語に変えて、サーバーレス構成にかえました。

つまりUbieさんと同じように、開発言語や特定の技術ありきよりは、イシューありきでビジネスを進めているのです。これは他の事業でも同様で、メディアサービスにおいても、フェーズにより言語や技術スタックを柔軟に変えています。そのため、まさにUbieさんが行っているように、特定の開発言語や技術を極めていきたいという人は弊社にもフィットしません。欲しい人材のコアな部分は似ていると感じました。

一方で、これは実例ですが、50億円の資金調達以降、年間100人ペースで採用をするようになり、ポジションは常時70以上もありました。当初はそれぞれJDを作り込んでいったのですが、細かくし過ぎると、まさにこれまでのやり取りのように、カルチャーフィットが難しくなる傾向にあった。そのため、今は個別にJDを用意するポジションマッチ採用と職種ごとのオープン採用を行き来している状態となっています。

カルチャーを大切にしているからこそチームを分化する

渡邉:もう1つ、Ubieさんの特徴として組織を明確に分化しているのがユニークだと感じています。今日お話しいただいた採用フローだけでなく、組織体制、人事評価制度などもまったく別に動いているそうですね。一般的にスタートアップだと一体感を作る傾向にあると思うのですが、なぜ、真逆の取り組みをされているのでしょう。

湊谷:採用がうまくいかなかった」というのが最初の動機です。これはエンジニア組織あるあるだと思いますが、Ubieはもともとプロダクト開発ドリブンな組織だったため、ビジネス人材の採用で苦労していました。

しかし成長フェーズに入ると、営業メンバーの採用や存在が必要不可欠になってきました。ただ、営業人材が欲しいからといって、これまで築き上げてきたカルチャーを変えることも、逆に成長にマイナスになるだろうと。

このような考えから、思い切って開発業務を担うエンジニアやデザイナーが属するUbie Discoveryと営業やカスタマーサクセス人材のUbie Customer Science(以下、UCS)に分化。Discoveryが0→10フェーズを、USCが10→100フェーズを担うイメージで、現在はそれぞれ110名、30名の体制となっています。また、最近では製薬企業向け事業のスケールを担う組織Ubie Pharma Consultingを立ち上げています。

渡邉:なるほど、そういう理由があったんですね。弊社の場合は、マーケティング支援・メディア・モビリティと3つの事業があって、各事業部のカラーを出しながらもナイルとしての組織の一体感を大事にしていますが、Ubieさんの場合は思い切って分けたのですね。まったく異なる組織を1つの会社内に作るとなると、かなりの労力や時間を要したのではありませんか?

湊谷:ええ、かなりの労力と時間を要しましたね。ただ理想像は明確になっていたので、理想ドリブンで、詳細を明確・言語化していき、落とし込んでいきました。結果、共通しているのはビジョンとミッションだけ。バリューも異なりますし、フロアも別、一体感も求めません。一方で、開発に必要な情報やリファラル候補者などの情報は共有しているので、お互いパートナー企業のような位置づけと言えるでしょうね。

湊谷:採用広報とのテーマとはずれますが、その後、Ubie Discoveryは人数が増えていくにつれ、いわゆる膝を突き合わせての意思決定ではコストが増えてきました。そのため新たな組織を模索。フラットな組織でありながらも、効率よく議論やタスクが実行される組織をさまざま検討し、ホラクラシー理論をベースとした、タスクごとにサークルと呼ばれるプロジェクト(チーム)が結成され、メンバーがアサインされていく現在の組織体制になりました。そして本日紹介した採用活動も、このサークル単位で行っています。

渡邉:サークルのようなユニークな組織づくりにおいても、これまでお聞きしてきたように、エンジニア組織らしいロジカルな理論をもとに進めてきているのでしょうね。

湊谷:はい、まったくそのとおりです。組織を作り直すのも、開発という観点ではプロダクト開発と同じだと捉え、同じメソッドで進めるのが当然との感覚が浸透しています。ですから組織づくりにおいても、スクラム的思考で案を出してはマーケットインし、どこがフィットしていないのかを検証。フィードバックしたものを再びPoCしてみる。プロダクトにおけるマーケットフィットの手法とまったく同じと考えて進めています。

今後もこのような思考を変えず、絶えずフィットする人材を効率的に採用できるメソッドを模索し続けていきたいと考えています。

時代の変化に伴い、採用への考え方はアップデートしていく必要があります。
以下の記事では、これからの採用に必要な基本的な考え方や、採用のトレンドについてわかりやすくまとめているので、ぜひ合わせてご覧ください。

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