オープンエイト

自分より実力の高いエンジニアを採れ|#8 オープンエイト CTO石橋氏×VPoE古萱氏|TECH TEAM BUILDERS

ソフトウェアサービス開発に優秀なエンジニアの存在は不可欠です。しかし設立間もないスタートアップが、エンジニアを採用するのは簡単なことではありません。本シリーズでは、シード期、アーリー期に直面しがちな、エンジニアの採用や育成にまつわる困難を乗り越え、成長を成し遂げた著名企業の技術トップを直撃。エンジニア組織をスケールさせる秘訣やヒントを探っていきます。第8回は、クラウド型インハウス動画編集サービス『Video BRAIN(ビデオブレイン)』を運営するオープンエイトの執行役員 兼 CTO 石橋尚武氏、2020年2月にVPoEに就任したばかりの古萱征氏にご登場いただきました。

株式会社オープンエイト
執行役員 兼 CTO
石橋 尚武氏

東京大学大学院在学中よりフリーランスのエンジニアとして活動し、2013年にデザイン制作会社THE CLIPを創業。2016年オープンエイトにTHE CLIPを売却するとともに、オープンエイトのCTOとして参画。技術統括として東京とシンガポールの2拠点を束ね、OPEN8 CORE TECHNOLOGY開発の中枢を担う。テクノロジー開発を管掌。
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株式会社オープンエイト
テクノロジー開発部 VPoE
古萱 征氏

2000年に株式会社CSKへ入社。携帯キャリア向けサービスの開発に従事。2008年にエムスリー株式会社へ転じ、主力事業の『MR君』や会員管理、ポイントサービスなどの開発・運営、さらに新規チーム立ち上げ、エンジニアリンググループ全体のマネージメント、ITデューデリジェンスなどに携わり、成長に貢献。2020年2月、株式会社オープンエイト Vice President of Engineering(VPoE)就任。
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企業の動画トランスフォーメーションを支える動画編集クラウド

オープンエイト 石橋

ーー本日はよろしくお願いいたします。最初に、おふたりのお立場や役割についてお聞かせください。

石橋氏(以下、敬称略) 私はフリーランスのエンジニアを経て、デザイン制作会社を創業、その会社をオープンエイトに売却して2016年にCTOとしてジョインしました。今もCTOという立場で、全体の技術統括や技術選定、3~5年先を見据えた中長期的な技術戦略を立案しています。

古萱氏(以下、敬称略) 私は新卒で大手SIerに入社し、エムスリーで組織がスケールしていくときに開発、組織の立ち上げ採用などに関わった後、VPoEとして2020年2月に参画しました。組織開発や採用、人材育成と活用に取り組み、より組織的なアウトプットが行える体制を整えているところです。

ーーあらためて『Video BRAIN』というプロダクトについてお教えいただけますか。

石橋 コンテンツ制作における企画、制作、配信、分析という4つのプロセスのうち、まずは『Video BRAIN』で「制作工程」のトランスフォーメーションを成し遂げました。そして2020年4月にリリースした『Insight Brain(インサイトブレイン)』というツールで、動画配信結果の分析をトランスフォーメーションしようと邁進しています。

ーー現在、どのようなエンジニアリング組織、開発体制をとっていますか。

石橋 エンジニアリングチームは日本とシンガポールの2拠点にあります。日本ではプロダクトに関わるエンジニアが25~30人、シンガポールには機械学習エンジニアが6人ほど在籍しています。シンガポールではアジア中から集まってきた優秀なエンジニアを現地で採用し、研究開発拠点を設け業務を行っています。全体で、ちょうど社員数100人を超えてきたところです。

古萱 日本で『Video BRAIN』のプロダクト開発に携わるエンジニアは2チームに分かれていて、1つはユーザー側のUI/UXをよりよくする「編集基盤」チーム、もう1つは素材や登録者、チームの管理機能などを開発する「アカウント基盤」チームです。それぞれ10名ほどのメンバーがいます。その他に、SREと情報システムの役割を兼ねたインフラ部門に5人のエンジニアが在籍しています。

開発体制については、『Video BRAIN』のリリースから2年ほど、顧客の要望をダイレクトに取り入れて開発するため、あえてPMから要件をおろすウォーターフォール型で開発をしていました。しかし、現在は動画制作プラットフォームの開発によって、顧客のクリエイティビティを支えなければなりません。よって、最近ではエンジニア一人ひとりがよりクリエイティビティを発揮しやすいスクラム開発で主にプロジェクトを進めています。

各機能の開発プロジェクトを進めるときは、エンジニアが3~4名、そこにPdMやデザイナーも加わって、10名ぐらいのチームで開発を進めることが多いですね。

ーープロダクトの状態に応じて、開発手法を選定してきたのは面白いですね。創業からこれまで、どのように組織をスケールさせてきたのかお教えいただけますか。

石橋 創業期からグローバルを見据え、当時は主にシンガポールで開発を行っていました。それから2年後、私が経営していた会社を売却する形でジョイン。私の会社にいたメンバーを中心に日本側の組織をスケールさせ、その後2年にわたって毎年社員数は倍増しています。

ーー毎年倍増というスピード感で組織をスケールさせるのは、並大抵のことではないですよね。採用やチームビルディングにおいて、どのような工夫をしていますか。

石橋 採用活動は行動量が決め手だと考え、とにかく活動量を増やすようにしています。採用手法は、エージェントやリファラル採用、Wantedlyのような採用サービスをまんべんなく取り入れ、全力で取り組んできました。とくにWantedlyは、メンバー一人ひとりのパーソナリティを伝えたい、社内の雰囲気を伝えたいというときに活用しています。

また、採用基準については、同じ目線でプロダクト開発の楽しさを分かち合えること。技術ドリブンになりすぎず、経験や価値観を共有できる人を採用したいと考えています。シード期からアーリー期は、すべてのポジションで即戦力を求めることが多いです。ここでむやみに採用基準を下げて、せっかく採用して入社いただいたとしてもご活躍いただけなくなってしまいます。それはエンジニアにとっても、オープンエイトにとっても望ましいことではありません。スキル面でもマインドセットの面でも、採用したい方に巡り合えるまで妥協することなく、採用活動こそ地道にコツコツ、行動を重ねていくことが大切だと実感しています。

古萱 どうしてもシード期やアーリー期は開発メンバーと、採用活動に協力して欲しいメンバーが重なりがちです。現場の負担を下げつつ採用活動に最大限協力してもらうため、最初のカジュアル面談はほぼすべて私がお会いするようにしています。

もちろん、採用に必要なステップやプロセスは応募者によって異なります。書類を拝見した結果、最初から石橋や現場のエンジニアにお会いいただく場合もありますね。

VPoEの採用は、組織やプロダクトのスケールに伴走してくれるパートナー探し

ーー組織をスケールさせるために、ターニングポイントとなったできごとはありますか?

石橋 VPoEとして古萱を採用したことです。私自身、もともとフリーランスのエンジニアだったこともあり、ずっとプレイングマネージャーとしてやってきたんです。私自身が開発の陣頭指揮を取ってプロジェクトを動かしながらコードも書いている状態でした。

最初はうまく回っていたのですが、組織が拡大するにつれ、私の成長や意思決定のスピードが、むしろ組織やプロダクトを成長させる上でのボトルネックになってしまって。

いち早くVPoEを採用して、今まで以上にオープンエイトの組織やプロダクトをスケールさせる、エンジニアリング組織づくり専任のプロフェッショナルを迎え入れなければならないと思いました。

古萱は採用からオンボーディング、組織づくりまでしっかり任せられて、私と伴走してくれる大事なパートナーです。組織がストレッチしていくとき、組織を大きくしてきた経験、つまり今のオープンエイトの「その先」まで経験したことのある人に来てほしいと思いました。私は、フリーランスのエンジニアからはじまって、自分で制作会社を経営し、オープンエイトに入って徐々に大きくなって。といつも「今いるところ」が人生で一番大きな組織なんです。しかし、古萱は大手企業の経験もあれば、スタートアップがオープンエイト以上に大きくなっている組織にいたこともあり、これから先、私たちが直面する問題もすでに経験がある。Video BRAINというユニークかつ、難しいプロダクトの組織づくりから採用まで一緒に考えてほしいと思ったのです。古萱が入社したことで、今の7割くらいの人数だった組織を、コロナ禍でもスピードを緩めず成長させ続けることができました。

オープンエイト

ーー古萱さんは、どうしてオープンエイトに入社することを決断したのですか?

古萱 大きく2つの理由があります。1つは、『Video BRAIN』というプロダクトのポジショニングに魅力を感じたことです。近年、すでにできあがった動画コンテンツを配信するプラットフォームはたくさんありますが、ユーザー自身が簡単に動画を制作できるブラウザ型のプラットフォームはなかなかありません。このプロダクトに将来をかけ、思い切りプロダクトドリブンに振り切った仕事をしてみたいと思いました。

もう1つの理由は、石橋の経歴を見て一緒に仕事をしたら組織に大きなメリットをもたらせるのではないかと思ったこと。私は新卒で数千名規模のSIerに入社し、その後100名規模のスタートアップがスケールするところを見てきました。一方、石橋は学生時代からフリーランスとして働いてきて、オープンエイトで一気に組織を成長させてきた。大企業からキャリアをスタートさせた私と、フリーランスやスタートアップの経験が長い石橋、異なるキャリアを歩んできた2人だからこそ、面白いことができるんじゃないかと思いました。

ーー石橋さんは、古萱さんのどこに魅力を感じたのでしょうか。

石橋 プロダクトのことも組織経営のことも、同じ目線で語れるところです。1つのIssueに対して、様々な視点からのアプローチを考えてコミュニケーションをすることができます。どうしてもエンジニアは技術のことにフォーカスしてしまいがちで、プロダクトといっても技術に寄りすぎてしまう人が多いのです。しかし、古萱はもう少し広い視点でプロダクトや組織をスケールさせていくことを考える目線がありました。VPoEは非常に重要なポジションだと考えていたので、それまでかなりの人数にお会いしていたのですが、なかなか同じ目線で物ごとを見てくれる人には出会えませんでした。そこに一番フィットしたのが古萱でした。

シード期だからこそ全エンジニアによる総力戦で地道に採用活動に取り組もう

オープンエイト

ーー今振り返ってみて、シードからシリーズAのスタートアップにおけるエンジニア採用のポイントはどんなところだと思いますか。

石橋 強い意志をもって、採用活動の優先順位を上げることだと思います。毎日自分でコードを書きながら採用活動を行っていると、どうしても目の前の開発が優先されて採用が後回しになったり、”スキルの高い人材をすぐ採用できる”などと謳った採用ハック術に頼りたくなったりしてしまいます。けれど、簡単にエンジニアを採用できる近道なんてないということを、肝に銘じておかなければならないと思います。

大切なのは、採用活動に力を入れると意思決定し、全エンジニアを巻き込んで採用活動を行うこと。それから、シード期だからこそ中長期的な組織戦略を立てる目線を持つためにもエンジニア採用のプロフェッショナルであるVPoEを早い段階で採用し、採用全体を体系立ててプランニングしたり、俯瞰してみたりする役割を置くことですね。

これまで会社をスケールさせる上でやらなくてよかったことなんてありません。すべてが経験になっています。今年からSREチームのマネージャーが入って、マネージャー3人体制になったのですが、そのおかげで中長期的なことを考えるリソースも生まれました。着々と組織がスケールしている手応えがありますね。

古萱 組織だけでなく私たち自身が成長するために、「自分よりも実力の高い人材を採用する」ことも重要です。即戦力の採用は連続な成長を加速させてくれるのですが、自分よりも高い実力の持つ人材の採用は非連続な成長を実現してくれる可能性が高い。私としても、特定の分野において自分よりも遥かに高い実力を持った方が1名加わっただけで、チームとしてのアウトプットが質・量共に飛躍し、非連続の成長を成し遂げられた経験があります。

事業の拡大に伴うさまざまな課題に対して、CTOがすべての第1人者でいるのは不可能です。自身が影響力を行使し続けることが目的でもない限り、どこかのフェーズで自分よりも優れた人材を獲得する必要がある。これは相当に難易度も高いため、早期から意識しトライを重ねることが重要です。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

石橋 これからも常に新しいことに取り組み、コンテンツ制作プラットフォームとして『Video BRAIN』をさらに成長させたいですね。2021年3月に「伝わらないをなくす。」というブランドメッセージを新しく定め、サービスをお使いいただく企業の皆様にもたらす本質的な価値をより分かりやすく伝えていこうと考えています。これからはより一層、すべてのコミュニケーションに、動画が自由に使える世界を実現すべく、日々プロダクト開発に取り組んでいます。いつまでもベンチャーマインドを持ち続け、身軽に自律的に動ける組織になれるよう採用に力を入れていきたいと考えています。

古萱 オープンエイトという会社は、他にはないユニークなプロダクト開発を行っている会社です。『Video BRAIN』という面白いプロダクトがあるということをより多くの方々に知って欲しいと思っています。

<石橋氏・古萱 氏推奨。シード期、アーリー期の技術責任者にお勧めする情報源>

群衆心理 (講談社学術文庫) / ギュスターヴ・ル・ボン (著)
100年以上前に書かれた古典ですが、現在の組織論に通じることもたくさん書かれており、成長していくフェーズのシード期、アーリー期の技術責任者に是非読んでいただきたいです。あまりこういう場では紹介されるタイプじゃない本から選んでみました。

 

アルスラーン戦記 (講談社コミックス) / 荒川 弘  (著), 田中 芳樹  (原著)
一冊が古典で重めだったのでもう一冊は軽めの漫画です。笑 主人公のアルスラーンから組織を引っ張っていく上で重要な権限移譲およびマネジメントをまなぶことができます

 

 

人を動かす  D・カーネギー
言わずと知れた(?)超がつくほどの古典ですが、マネージャー・リーダーの立場ならば一度は読んでおいて損はない書籍だと思います。あまり穿った見方をせずに素直に読むことが重要な一冊です。

 

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 / エリン・メイヤー (著), 田岡恵 (監修), 樋口武志 (翻訳)
異文化ということで、国の違いなどを意識して書かれているのですが、日本人のみで構成されている環境でも多様性が許容されるような環境に身を置いている場合には役にたつと思います。エンジニアは得意とする”(プログラミング)言語”やこだわりのある”(設計)思想”が様々です。その異文化間でのコミュニケーションにも応用が効くのではないかと思います。

 

著者プロフィール

石川香苗子

Writer

早稲田大学卒業。リクルートHRマーケティングに入社し、契約社員として新規開拓営業に従事。06年第1Q全社MVP、同年全社準MVPを受賞。その後出版社でネイティブアド営業・新規事業企画・メディア運営・ライティングに携わる。2012年に独立。現在はテクノロジー、マーケティング、HR、エンターテインメント等の領域で記事を執筆。多様なジャンルを越境できるのが強み。経営層のメディアトレーニングやコンテンツ戦略提案も行う。2020年よりNewsPicks for Businessにパートナー参画。2021年1月よりフリーライターに加え、NewsPicks for Business編集デスク/AlphaDrive統括編集デスクも務める。

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