開発組織における「自ら律する」ということ | Wantedly Engineer Blog
このストーリーは、Wantedly Advent Calendar 2024 の2日目の記事です。「自律」という言葉を聞くと、自己管理や一人で物事を進めることをイメージするかもしれません。しかし...
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こんにちは、ウォンテッドリー株式会社 執行役員 VPoE の要 (@nory_kaname )です。
私は組織のリーダーの一人であると同時に、CxOのフォロワーでもあります。CxOが掲げる目標に対し、一人の執行役員としてどう関わるのか。常にそれを考えながら、日々の行動を選んでいます。
組織開発を進めるうえで、チームの「軸」となる考え方があります。開発マネージャーは、その軸をぶらさずに意思決定し、メンバーを支援していく必要があります。多くの組織が「こうありたい」と願っていても、実際に体現するのは簡単なことではありません。
私たち自身も、その難しさを日々痛感しています。理想を掲げるだけでは不十分であり、日々の実践と対話を通じて、具体的な行動に落とし込んでいくことが求められます。だからこそ、「どんな場面で、どう振る舞えばよいのか」を具体的に伝え、社内で共通認識として持てるようにしていくことが重要だと考えています。
このストーリーを読んで、組織を作っていくマネージャー・リーダーの方、まだチームをより前進させたいと常に考えている方の参考になれば幸いです。
はじめに
結果を出すリーダーでありつづける
リーダーが目指す成果に向かう議論であること
建設的なフィードバックが成果を生む理由
裁量とは「成果に対する責任」が伴う
チームのフェーズに応じた文化の育て方
おわりに
成果が出るチームには、ある共通点があります。それは、「友達感覚で話せる」ことでも「居心地が良い」ことでもありません。リーダーが目指している成果に向かって、チーム全員がコトに向かっていることです。昨今、心理的安全性やフラットな関係性が重視される一方で、組織論として正しく言葉が使われておらず、「馴れ合い」や「遠慮」が率直なフィードバックや建設的な議論を妨げてしまう場面も見られます。けれど、私たちが目指すべきは「なんでも言える雰囲気」ではありません。リーダーの意図や目的を理解し、成果のために議論ができる能力と姿勢を、チームとして備えることこそが、強い組織文化を育てる土台です。
このストーリーでは、開発組織における文化のあり方と、それを育てていくための考え方について、私たちの視点をまとめました。
リーダーには、大きく分けて2つのタイプが存在します。ひとつは、メンバーの声に丁寧に耳を傾け、優しさをもって接し、居心地の良い環境をつくるリーダー。もうひとつは、厳しさを持ちつつも、成果にこだわり、チームに成長と感動を残すリーダーです。前者のタイプは、一緒に働く人に安心感を与えやすく、「良い人」として周囲に評価されやすい存在かもしれません。しかし、私たちが目指したいのは、後者のリーダーです。なぜなら、チームとして成果を出し続けるには、「居心地の良さ」だけでは限界があるからです。(この内容は、カルチャーブックに書かれています)
開発組織においては、事業・プロダクトの価値を最大化することが最終的な目的です。その過程では、厳しい判断を迫られたり、計画の変更を余儀なくされることもあります。そうした局面において、リーダー自身が覚悟をもって決断し、メンバーと率直に向き合う姿勢が問われます。「今はこれが最善策だと思う」「この判断にはこういう意図がある」、そういった説明責任を果たしながら、成果へのコミットメントを絶やさずに引き続き行動していくことが求められます。
もちろん、厳しさだけでは人はついてきません。リーダーが何のためにその判断をしているのか、どこに向かおうとしているのか、その「意図」と「筋道」がチームに共有されているからこそ、厳しいフィードバックも受け止められるようになります。目指すべきは、成果に向かって真剣に向き合うリーダー。そうした姿勢が、チームの推進力となり、結果的にメンバーの成長と、組織の成果を生み出す原動力となります。
開発組織が醸成すべき文化とは、リーダーが目指す成果に向かって、率直にフィードバックを交わせる文化です。単なる仲の良さや、何でも言い合えるフラットな関係性ではなく、「チーム全体が成果に向かってどう貢献しているか」という“コトの軸”に、会話の重心が置かれている状態を指します。
そのために必要なのは、自分の仕事の意味を理解することです。いま取り組んでいる施策が、チームのOKRにどう結びついているのか。さらに言えば、そのOKRが「リーダーのリーダー」が見ている、より大きな視点や事業全体の目的とどう接続しているのか、そうした上位の意図にまで視野を広げてこそ、自分の役割が立体的に見えてきます。(意味づけ力とチーム志向力)
この「自分の役割」と「チームの方向性」と「上位目標」を結びつけて理解する力は、建設的な議論を生む基盤になります。ただ意見を述べるのではなく、目的に照らしたフィードバックができるかどうか。この姿勢が、組織としての成果に直結します。
誤解されがちですが、フィードバック文化とは「なんでも自由に発言していい」という空気をつくることではありません。むしろ、目的と役割を明確に共有したうえで、互いの立場や意図を尊重しながら意見を交わすこと。その土壌があってこそ、チームは率直さと協調性を両立させることができるのです。
また、こうした文化を根づかせるには、リーダー自身の態度も重要です。上位目標を自ら理解し、それを日常的にチームに語る姿勢。目先の成果だけでなく、なぜそれを目指すのかという背景も含めて共有することで、メンバーとの対話に深みが生まれます。結果として、成果に向かって建設的に議論することが当たり前の文化となり、チームは単なる集団ではなく、意志と責任をもった一つの“成果を出せる組織”へと進化します。
目的のために率直に議論できる文化があるチームでは、日々のコミュニケーションが変わります。わからないことは「わからない」と言えるようになり、リスクや問題にも早い段階で気づき、共有することができます。さらに、疑問やアイデアを安心して口にすることができれば、イノベーションの芽が生まれやすくなります。失敗も共有されやすくなり、それがチーム全体の学びへとつながっていきます。
「心理的安全性」という言葉が現場で多用されるようになりましたが、誤解されているケースも多くあります。本来の意味は「安心して自分の考えを発言できる環境」であり、「怒られない」「注意されない」ことではありません。むしろ、目的に向かって言うべきことを言える状態を指します。私たちは、“発言しても大丈夫”という空気ではなく、“発言する責任がある”という姿勢を大切にしています。
ただし、「率直であること」は何を言ってもよいという意味ではありません。成果を出しているからといって、他者への配慮を欠いた物言いや威圧的な態度が許されるわけではないのです。スキルが高くとも、チームに協調せず周囲を疲弊させるような存在、いわゆる「ブリリアントジャーク」は、組織に深刻なダメージを与えます。
彼らの存在は、単に空気を悪くするだけでなく、目的に向かって走ろうとしているチームの勢いや集中力を確実に削ぎます。建設的なフィードバックとは、相手の人格を否定せず、目的の達成を支援する対話であるべきです。成果に向かって議論ができる文化は、自由に振る舞うこととは違います。それは、自分の言動がチーム全体にどのような影響を与えるのかを確認しながら、誠実に発言することから始まります。
私たちが「裁量」という言葉に込めているのは、自由に振る舞うことではありません。与えられた権限の範囲内で、自分の意思で判断し、責任をもって行動することこそが、裁量の本質です。そこには成果に対する責任、進捗に対する報告、そして自らを律する自己管理の姿勢が必要です。詳しくは、次のストーリーを参照ください。
裁量は「信頼の証」として、実績に基づいて委ねられるものです。期待に応え続けることで裁量は広がり、逆に応えられなければ縮小します。さらに言えば、裁量には段階があります。上長の判断を仰ぐ段階から、自律的に判断し行動できる段階まで、7つの権限委譲レベルに分けて認識しておくと、チーム内の共通理解が深まります。
チームには成長段階があります。集まったばかりの形成期には、目的やルールが曖昧なことが多く、メンバーも遠慮しがちです。その後、意見がぶつかる混乱期を経て、役割が明確になり、信頼関係が生まれる統一期へと進みます。そして最終的には、メンバーが自律的に動ける成熟期に到達します。
タックマンモデルをベースに考えると、それぞれのフェーズに応じて、必要なマネジメントや支援のあり方は変わります。形成期には方向性を明確にし、混乱期には丁寧な対話を通じて安心と信頼を築く必要があります。統一期には文化や仕組みを定着させ、成熟期にはメンバーの挑戦を支援することで、さらなる成長を促します。画一的な方法ではなく、チームの今の状態に合わせて関わることが、文化醸成の鍵となります。
「安心して話せる関係性」や「居心地の良さ」は、組織にとって大切な要素です。ただし、それは“目的”ではなく、“目的を果たすための手段”であるべきです。私たちが目指すのは、リーダーの描く成果に向かって、チーム全員が“コトに向かっている”状態です。
そのためには、リーダーやそのリーダーの目標(OKR)を理解し、全体の目的と役割を共有したうえで、建設的に議論できる文化を育てること。そして、裁量を責任ある形で機能させること。文化は一人の努力ではつくれませんが、一人の行動から始まります。
私たち自身が、“成果に向かってフィードバックを交わす文化”を、日々の行動から育ていくしかありません。