「会社」というプロダクトを、更新し続ける。事業戦略から逆算する組織づくり|TEAM OF THE YEAR GOLD:株式会社ログラス

ウォンテッドリー株式会社が主催する「Wantedly Awards 2026」。このアワードでは、ビジネスSNS「Wantedly」を活用し、優れた採用活動を実践する企業を表彰しています。

「TEAM OF THE YEAR」は、採用ブランディングや共感採用の観点から、企業の総合的な採用力を称える部門です。1年間の採用実績やWantedlyの利用実績などをもとに選ばれた100社のなかから、特に優れた5社が表彰されます。

今回、その最高位となるTEAM OF THE YEAR GOLDを受賞したのが、経営管理クラウド「Loglass」を開発・提供する株式会社ログラスです。

お話を伺ったのは、ログラスでProduct CoS(Chief of Staff)兼HRBPを務める広瀬丈さん。前職のマネーフォワードでは、CPO室長として60名を超えるプロダクトマネージャー組織を牽引し、組織設計から採用、育成、カルチャー浸透までを担ってきました。2025年4月にログラスへ入社し、現在はプロダクト領域を中心に、事業戦略と組織戦略をつなぐ役割を担っています。

組織の拡大が続くなかで、ログラスは組織づくりをどう変えてきたのか。広瀬さんに、プロダクトマネジメントの考え方を活かした組織づくりと、AI時代における人と採用の役割について伺いました。

人事が、事業戦略をつくるところから入る

── まず、広瀬さんがログラスで担っている役割について教えてください。

現在は、プロダクト領域を中心に、ログラスの組織戦略や採用計画を担っています。私は自分の役割を、決められた採用計画を実行するだけの人事ではなく、人と組織の面から事業をともにつくるビジネスパートナーとして捉えています。そのため、事業戦略をつくる段階から経営陣と一緒に議論しています。

採用戦略を考えるときには、まず「どの市場で、どう勝つのか」という事業戦略があって、その実現に向けたプロダクト戦略があります。次に、そのプロダクトをつくるには、どんな能力を持つ組織が必要で、いつまでにどんな体制にするのかを考える。現在の組織と、1年後、3年後に目指す姿を比べて、足りないところを採用で補っていく。その順番だと思っています。

私自身も、CEOやCPO、CTOとともに、事業戦略を策定する段階から議論に加わっています。そのうえで、プロダクトの最終的な意思決定はCPOが、技術についてはCTOが、人と組織の領域は私が担う。同じ事業に向き合いながら、それぞれが異なる領域に責任を持つ、という関係です。

── 広瀬さんは2025年4月に入社されましたが、入社後はまずどのようなことから始めたのでしょうか。

入社当初は、リクルーターとしての業務やカルチャーづくりに携わりながら、まずログラスがどのような会社なのかを理解することから始めました。そのために行ったのが、社員へのインタビューです。

最初に話を聞いたのは、バリューの体現を表彰された社員約20人です。ログラスのカルチャーを日々の行動で示してきた人たちだからこそ、まず話を聞きたいと考えました。一人30分ほど、「今のログラスをどう思う?」と自由に話してもらい、良いところや気になっていることを聞いていきました。

そこから、より深く聞くべきことを整理して質問を定型化し、マネージャーなどにも対象を広げました。カルチャー担当者と一緒に、数十人の社員の話を聞いています。

並行して、経営陣との1on1などでも、何を考え、なぜその判断をしているのかを聞いていきました。入社してすぐに社員と経営、両方の視点から会社の文脈を理解できたことは、大きかったですね。

── 社員と経営の双方の話を聞くなかで、どのような課題が見えてきましたか。

話を聞いていくなかで見えてきたのは、会社の成長に、組織の仕組みが追いついていないことでした。社内には「昔のログラスのほうがよかった」という空気もあり、100人規模の頃にうまく機能していた組織の運営方法を、200人、300人になっても使い続けているように感じたんです。

たとえるなら、体が大きくなったのに、昔のTシャツを着続けているような状態です。もう窮屈になっているけれど、愛着があるから手放せない。組織も同じように、規模に合わなくなった部分がでてきているように見えました。

そこで、先に見直すべきなのはカルチャーそのものではなく、それを支える組織の構造ではないかと思ったんです。人事制度や組織の形、誰が最終的な意思決定をするのかという土台が整ってこそ、カルチャーが活きてくる。そう考え、まずは開発体制の見直しに着手しました。

会社を「一つのプロダクト」として、組織をつくる

── 開発体制の課題に対して、具体的には何を変えたのでしょうか。

まず見直したのが、プロダクトロードマップの運用です。ロードマップ自体はもともとありましたが、意思決定のよりどころとして十分に活用されていませんでした。

そのロードマップを誰が把握していて、どこまで合意されているのか。変更するときには、誰の了承が必要なのか。そうしたことも曖昧でした。

ロードマップは、ビジネスと開発をつなぐ共通言語だと考えています。だからこそ、ロードマップを開発組織のなかだけでなくビジネス側にも共有し、双方が同じ計画をもとに判断できるようにしました。

加えて、開発組織の体制も変更しました。以前は、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアがそれぞれ職種別の部門に所属し、部門をまたいでプロダクトチームを組んでいました。そこから、組織の軸を職種ではなくプロダクトに切り替え、プロダクトごとに責任者を置く体制へ変更したんです。これにより、誰が意思決定をし、その結果に責任を持つのかを明確にしました。

── ロードマップを全社の共通認識にするために、どのような運用を設けたのでしょうか。

2025年9月から、プロダクトの責任者が全社員に向けて計画を発表する「ロードマップ共有会」を始めました。3カ月に1回開くことで、定期的に計画を見直し、共有する機会をつくっています。

ロードマップの運用を見直すにあたっては、プロダクトの計画と人員計画も連動させました。ロードマップに盛り込んだ人員計画を採用計画につなげることで、プロダクトをどう成長させるかと、そのためにどんな組織が必要かを、一体で考えられるようにしたんです。

実行段階では、週次や月次の会議で進捗を確認し、計画との差を見ていきます。計画は、つくった時点での見込みなので、変わることもあります。その変化も共有しながら実行していくことが大切だと考えています。

── 広瀬さんは、前職でプロダクトマネジメントに携わっていましたが、その経験がログラスでの組織づくりに活きている部分はありますか。

ありますね。今お話ししたロードマップの運用にも、前職で培ったプロダクトマネジメントの考え方が活きています。

プロダクトマネジメントでは、目指す姿を描いて計画を立て、実行しながら現状との差を確かめ、必要に応じて計画を更新していきます。また、機能をつくるときには、「なぜこれが必要なのか」「どんな価値につながるのか」を問い続けます。

組織づくりも、根本は同じです。制度や施策をつくること自体を目的にせず、何のために必要なのか、それによってどんな価値を生みたいのかから考える。役割としてはビジネスパートナーですが、自分の職種は今もプロダクトマネージャーだと思っています。ログラスという会社を一つのプロダクトとして捉え、プロダクトマネジメントの考え方を人と組織の領域に応用している、という感覚ですね。

── 「会社を一つのプロダクトとして捉える」とは、どういうことでしょうか。

プロダクトをつくるときには、まずユーザーを理解し、目指す姿と現状の差を捉えて、取り組むべき課題に優先順位をつけますよね。会社も同じで、ログラスというプロダクトのユーザーは社員なので、まず社員が今の会社をどう感じているのかを知る必要があります。

先ほどお話しした社員へのインタビューも、ユーザーである社員の声から、会社の現在地を把握するために行ったものです。社員がどこに良さを感じ、何に困っているのかを知る。そのうえで、目指す会社の姿との間に何が足りないのかを考え、優先順位をつけて変えていく。私のなかでは、それが会社というプロダクトをつくることなんです。

組織の成長に合わせて、変えるものと残すものを見極める

 

── 組織の仕組みを変えていくなかで、改めて、会社にとって「カルチャー」とはどのようなものだと考えていますか。

カルチャーは、会社が歩いてきたいわば「轍(わだち)」だと思っています。何を大切にし、どんな意思決定や行動を重ねてきたか。その積み重ねが、今の会社らしさとして残っているんです。

ミッションやバリューによって、これから進む方向を変えることはできます。ただ、これまで積み重ねてきた歴史は消せません。その歴史を理解したうえで、これからどんな意思決定や行動を増やしていくのかを考える。人事には、それが繰り返されやすい環境をつくる役割があると思っています。

そして、人数や事業が変われば、その環境のつくり方も変える必要があります。100人の頃にうまくいった仕組みを、そのまま300人の組織で続ければいいわけではないんです。

 

── 広瀬さんが入社した当時、社員数が200名台だったログラスも、現在は約350名の組織へと成長しています。規模の変化に合わせて、変えてきたことはありますか。

いくつかありますが、特に大きな変化としては、評価制度の改定があります。以前は、バリューの体現と業績・成果を大きな二つの柱として評価し、バリューの評価も昇格・昇給に大きく反映していました。2026年5月からは、成果や役割に応じた評価を、よりわかりやすく機能させる形に見直しています。

会社が小さい段階では、「どんな行動を良しとするのか」について、社員同士の認識をそろえることに大きな意味がありました。ですが、職種や役割が多様になってくると、バリューを体現しているかに加えて、その役割で期待される責任を果たしているかを、より明確に見る必要があります。

バリューを体現していれば成果が足りなくてもいい、ということではありませんし、成果さえ出せば組織に悪い影響を与えてもいいわけでもありません。成果と役割責任を軸にしながら、バリューや組織への貢献も評価に残しています。

── 一方で、組織が大きくなっても、意識的に残しているものはありますか。

人と人との関係や、そこから生まれる感情や熱量です。こうした部分は、あえて合理化しない領域として残しています。

組織が大きくなるなかで、戦略やKPI、組織図など、組織運営の土台は整えてきました。ただ、すべてを制度や数値で管理しても、社員同士の信頼が生まれるわけではありません。

だからこそ、ログラスでは、一緒に食事をしたり、普段とは違う相手と話したりする時間を大切にしています。そうした時間が成果にどうつながるのかを、すぐに数値で示すことはできません。それでも、社員同士の相互理解を深め、組織の実行力を支えていると思います。

つまり、合理的に勝つためにこそ、すべてを合理化しないことが大切なんです。そう考えて、人と人が自然に関係を築ける余白を意識的に残しています。

良い採用は、会社そのものを変えていく

── ここまで、事業戦略から必要な組織を考えるというお話がありました。AIによって事業やプロダクトのつくり方が変わると、組織のあり方や、人に求められる役割も変わるのでしょうか。

はい。AIの活用を前提にすると、組織づくりも、単純に「何人増やすか」という話ではなくなります。まず事業に必要な役割や能力を整理し、それを人とAIの組み合わせでどう実現するかを考える。人数よりも、組織として何ができるかが重要になると思っています。

そのなかで人が担うのは、意思決定と、その結果に責任を持つことです。AIが分析や合理的な提案を担えるようになっても、何を成果とし、何を優先するのかまで自動的に決まるわけではありません。必要な強度と速さで「自分たちはこちらへ進む」と決め、その結果を引き受ける。それは、人の役割として残ると思います。

AIを活用できる範囲が広がるほど、組織のなかに、そうした意思決定を担える人を増やしていく必要があります。採用も、その担い手を新たに迎えるための手段の一つです。


── そうした意思決定を担える人かどうか、採用では何を手がかりに見極めているのでしょうか。私が関わっているプロダクト領域の責任者の採用では、その人がこれまで、どのような意思決定を、どの範囲まで担ってきたかを見ています。

「AとB、どちらの機能をつくるか」という判断と、「そもそもこの市場で戦うべきか」という判断では、問われる力が違います。機能単位の判断に加えて、事業やプロダクトの方向を決める判断を重ねてきたかを、具体的に聞いています。

ただ、意思決定の経験があれば、それだけでいいわけではありません。自分自身の「こうしたい」という意思を持ち、何かに圧倒的にこだわれることも大切です。理想は、「すごくログラスらしいけれど、これまでのログラスにはなかったものも持っている」と言える人ですね。

── ログラスらしさを理解しながら、これまでにない視点を持ち込める人が加わることで、会社そのものも変わっていくんですね。

そうですね。以前、今後の事業戦略やプロダクト戦略、それにひもづく人事戦略を8人で議論したことがあります。そのうち4人が、入社して1年以内のメンバーでした。

ログラスより規模の大きな組織や、少し先の成長フェーズを経験してきた人たちが、新しい視点を持ち込んでくれた。一方で、これまでのログラスを知るメンバーは、会社が歩いてきた経緯や背景を共有する。その両方があったからこそ、3年後、5年後のログラスまで見据えた議論ができたと思います。

採用は、単に空いているポジションを埋めることではありません。一人が加わることで、会社の意思決定に新しい視点が入り、進む方向も変わっていく。良い採用には、会社そのものを変える力があると思っています。

だからこそ、ログラスが歩いてきた「轍」を理解しながら、その先に新しい道をつくっていける人を迎えたい。これまでのカルチャーを受け取るだけでなく、自ら次のカルチャーをつくる。そんな方と働きたいです。

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