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ミッション・ビジョンではなく、バリューとパーパスを重要指標に|株式会社estie 代表取締役 CEO 平井瑛氏|NEXT UNICORN RECRUITING #10

成長著しいスタートアップにインタビューを行い、採用や組織づくりといったHR領域を中心に、各種戦略を紹介する本企画。

10回目はこれまでになかった不動産テック、日本最大級のオフィスビル情報のプラットフォームを構築し、業界に新しいトレンドを巻き起こしているestieの代表、平井瑛氏です。2018年12月に創業し、これまでに調達した資金は約4億円。現在の従業員は内定メンバーも含むと約30名。シード期を脱し、さらなる成長フェーズの同社の創業期から現在、これからの組織づくりや採用に対する戦略などをお聞きしました。

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スタートアップの最適な採用方法

スタートアップ企業において、採用は非常に重要なミッションです。そして、会社のフェーズによって、適切な採用手法は変わるもの。成長フェーズに合わせた採用ができるかどうかで、採用成功の確率は大きく変わってきます。

この資料では、急成長するスタートアップ企業のために、成長フェーズごとに考えるべき採用戦略、適切な手法を事例付きで紹介しています。

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株式会社estie
代表取締役 CEO
平井瑛氏

1991年神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱地所に入社。海外業務企画部、xTECH営業部を経て、2018年12月にestieを創業。日本最大級のオフィスビル情報プラットフォーム「estie pro」、賃貸オフィスマッチングサービス「estie」を運営。

▼Wantedly_Profile
https://www.wantedly.com/id/ei_hirai

オフィス探しが簡便に行えるプラットフォームを開発・運営するまで

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――本日はよろしくお願いします。まずは、貴社のサービスについてご紹介ください。

企業がオフィスビルを探す際、あるいは不動産会社が日々の業務を遂行していくなかで、物件の詳細情報、空室状況、賃料、入居しているテナントなど、あらゆる情報を収集します。、我々はそれら情報をベースとしたデータ基盤ならびに、データが簡便に活用できるプラットフォームを構築。そのデータを活用して「estie」「estie pro」という2つのプロダクトとして展開しています。

――「estie」と「estie pro」の違いはどういったものなのでしょう。

「estie」はオフィスビルを探している企業向けのサービスで、インターネット上で簡便に物件を探せます。実際、利用してみるとわかりますが、社員数や座席数、必要なスペース、エリア、予算、入居希望時期などの条件を入力すると、希望に合致した物件が瞬時に提示されます。いわばSUUMOのオフィスビル版をイメージいただくとわかりやすいでしょう。

一方「estie pro」は、不動産デベロッパーやファンドなど、不動産のプロ向けのサービスです。先述した物件情報に加え、その詳細な分析やお客様に提供したい提案資料の作成などが行えます。

実際にサービスリニューアルからまだ1年ですが、2021年7月現在、全国7万棟以上、都心5区では90%を網羅する日本最大級のデータプラットフォームに成長しています。大手不動産会社や不動産ファンドなど、名だたる不動産会社にご利用いただけるサービスに育ってきました。

――なぜ、平井代表はこのような不動産テックサービスを手がけようと思われたのでしょう。

前職、三菱地所時代の経験に起因します。当時、アメリカを中心とした海外市場の不動産投資業務に携わり、東京にいながら、現地物件の詳細情報を手に入れられたため、スムーズに業務を進められました。具体的には、CoStar(コースター)というアメリカの不動産テック企業のおかげです。

ところが国内市場で同様の業務を行おうとすると、東京にいるにもかかわらず、先に紹介したようなデータが整っていないため、業務が思ったように進みませんでした。

――そこにビジネスチャンスを見出したと?

はい。ビジネスチャンスはもちろんですが、それ以上に、情報整備の遅れが顕著となっている国内の不動産業界を変えたい、との想いが強かったですね。CoStarのようなプラットフォームを整備すれば、物件オーナーは最適な価格で貸し出すことで逸失利益を防げますし、借りる側も相場に則った適正価格で借りられる。エージェントは、より早く成約に導ける。三方良しのサービスだと感じたからです。

創業当時の採用はリファラルがメイン。豊富なネットワークで創業期のエンジニアを採用

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――創業に際し、どのような採用を考えていたのですか。

私は不動産の知見は持っていましたが、エンジニアではありません。そのためソフトウェアエンジニアリングの専門家が必要だろうと考えました。ただあらためて振り返ると、はじめはそこまできっちりと組織づくりを意識した上での採用ではなかったように思います。

――当時の組織体制はどのようになっていたのですか?

実はestieを創業する前から、起業意識の高い仲間が集まり、ビジネスアイデアを出し合うようなコミュニティ活動をしていたんです。その仲間との起業だったので、結果として、母校である東大の友人であり前職でも一緒だったメンバーと、NTTドコモで機械学習エンジニアをしていたメンバーの3名でのスタートしました。

――その後組織を拡大するうえで、ミッションやビジョンについては、どのように策定していきましたか。

あくまで持論ですが、創業間もないベンチャーがピカピカのミッションやビジョンを打ち出したところで、意味がないと考えていました。ですので、当時は策定もしませんでした。

それよりも創業当初のスタートアップがやるべきことは、お客様のところに足繁く通い、必要とされるプロダクトを構築するべきだと考えていました。そのためヒアリングに時間を費やし、当初から計画していた2つのプロダクトの実現のため、もう1人のメンバーと私が現場に。その声をエンジニアに伝え、顧客企業が求めるプロダクトを開発していきました。

――創業から間もなくして2名のメンバーを迎え入れます。意図ならびに、どのような採用フローだったのでしょう。

当時の採用ポリシーは大きく2つありました。まずは、プロダクトドリブンであること。そのためPdMとデザイナーの2名を採用しようと決めました。

一方で、いい人がいたら採用しよう、とのポリシーもありましたし、これは今でも変わっていません。これまでの経験から、優秀な人材は必ず価値を生み出すことを知っていたからです。そして運良く、両方の条件に合致した2人と出会い、入社してもらえました。

――実際の採用活動はどのように行ったのですか。

PdMは三菱地所時代の後輩です。友人の間柄だったので、気軽に声をかけました。デザイナーはPdMの高校の同級生です。ですから、とくに採用サービスは使っていません。創業当時はやはり、身近な仲間に声をかけるのがいいと思います。

後から聞いた話ですが、私も含め創業メンバーの3人ともが、大企業のキャリアを蹴って、不動産業界で新たなプラットフォームを構築しようと挑戦している。その意気込みならびに、不動産・テクノロジー両面で高い知見を持つことに魅力を感じてくれ、ジョインを決めたようです。

――なるほど。起業家に情熱があるのは当然ですが、そこにドメインスキルが加わると、より採用しやすくなるのですね。その後も順調にメンバーを増やしていっています。

Wantedlyやエージェントといった各種採用サービスに登録はしていましたが、ほとんど活用できていませんでした。リファラルでの採用が順調だったからです。ポイントとしてあげるならば、副業で協力してくれていた採用担当者の人脈に依るところが大きかったですね。

そのメンバーは現在でも在籍していますが、エンジニアコミュニティなどにも定期的に顔を出すなど、いわゆるエンジニア界隈で豊富なネットワークを持っていました。

――なるほど。このころはエンジニアをメインで採用を進めていたのですか?

先に説明したとおり、このときもいい人がいれば採用しよう、とのスタンスでした。ただ人数が増えるにつれ、いい人の基準といいますか、私の考え方が変化していきました。

――どのように変化していったのでしょう。理由もあわせて聞かせてください。

失敗から学んだことが大きいと思います。チームが大きくなるにつれ、各担当が責任領域を持って業務を進めるようになりました。すると情報の共有、コミュニケーションコストがかかることが、ボトルネックとして浮かび上がってきました。私が何を考えているのか分からない、という声も多くありました。

そこで、estieのメンバーに共通している働き方に対する考えや、行動規範が近しいことが重要だと思うように。そして、このような思いはメンバーが増えれば増えるほど、強くなりました。その結果、創業当時は必要ないと考えていた、バリューが重要だろうとの考えに至り、チーム全体で言語化しました。

シード期を脱し、ビジネスにドライブをかけるフェーズでの施策と変化

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――そしてそのような思考変化を、実際の採用施策にも反映させていったわけですね。

はい。ただまずは、組織を整備する必要がありました。クライアントは増加し、資金調達もこれまでのVCや東京大学エッジキャピタル(UTEC)からだけではなく、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)からも行うなど、シーズ期を脱し、いよいよビジネスにドライブをかけるフェーズに入っていたからです。

このような成長に伴い、メンバーもこれまでのようにいい人がいたら採用するとしたものではなく、明確にアクションを起こして、増やす必要がありました。とくに、テックカンパニーを目指すにあたりトップクラスのエンジニアや、事業開発や営業などのオペレーション部門のメンバー、人事専任の採用は喫緊の課題でした。

――具体的にどのような取り組みを行ったのでしょう。

組織づくりにおいては、プロダクト、オペレーション、コーポレート部門と明確に3つに分けました。一般的には、事業開発や営業などを「ビジネス部門」、エンジニアやデザイナーなどを「プロダクト部門」と分ける企業が多いと思いますが、プロダクトもコーポレートどちらも「ビジネスをやっている」との考えからです。

採用施策に関しては、Wantedlyも含め、採用サービスを活用していきました。具体的に、はジョブディスクリプション(職務内容)を整理し、欲しい人材の要件をしっかり伝え、効果が高い媒体に掲載を絞っていきました。採用業務を一元管理できるATS(Applicant tracking system)なども導入しました。

――バリューの策定についてはどうですか。

作成に際し、まわりの企業はどのような内容を打ち出しているのか。とくに、海外の企業を中心にリサーチしました。するとアメリカの企業、ディズニーやマッキンゼー・アンド・カンパニーは、ビジョンやミッションではなく、パーパスを打ち出していることがわかりました。

そこでメンバー全員で話し合い、これまでの歩みを振り返り、4つのバリューに加えてパーパスを作成しました。これまでなんとなく持っていた、我々がなぜ事業を行っているのかを言語化したと言えます。

――具体的にミッションとパーパスは何がどう違うのか、ご説明いただけますか。

ミッションは、何をやるのかを定義しますよね。一方パーパスは、なぜやるのか。ミッションが経営戦略寄りなのに対し、パーパスは企業カルチャーにより近い。まさに先ほど説明したように、「なぜestieで働いているのか」「なぜestieのプロダクトが必要なのか」それらを定義することが、私たちがまさに日々働いている理由そのものだと感じたからです。

言い方を変えると、「何のためにやるのか」「何のために働くのか」といったパーパスと、働き方のバリュー(行動規範)が明確に定義されていれば、アプローチ方法や仕事の進め方は、各人の価値観のもとで決めればいい。そのように考えています。

採用の決定権は代表ではなく面接官が話し合い平等に決める

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――これまでのお話をお聞きしていると、採用基準もバリューがマッチしているかどうかがポイントになりそうですね。

ええ。実際に面接では、先のバリューの項目があり、それに対して面接官がフィットしているかどうかを聞いて、書き込む流れとなっています。エピソードを引き出すような質問を投げ、その返答から、バリューにフィットしているかどうかを判断しています。加えて、事業開発の場合は事業戦略のディスカッションを、エンジニアの場合はコーディング試験を行います。

また、面接は最低でも3回は行うようにしていて、それぞれ1人のメンバーが対応。アサインに関しては、できるだけ早く対応できるメンバーが臨むようにしています。ですから1次、2次といった意識ではなく、3回の面接はすべて平等。終了後に3人のメンバーで話し合い、可否を決めています。

――採用の決定権は平井代表ではないのですね?

すべての職種において、私が正しい意思決定ができるとは思っていませんからね。繰り返しになりますが、メンバーにバリューが浸透しているので、誰が対応してもそれほど差異のない評価になるとも思っていますし、実際意見が分かれることはほとんどありません。

――今後の展望についても聞かせてもらえますか。

日本の商業不動産のマーケットは、世界的に見ても規模が大きく、東京においてはマンハッタンの約1.5倍ものオフィスが集中していると言われています。商業用不動産の市場規模は日本全国で約12兆円です。

このビックマーケットの中で、ビジネスをさらに加速させ、この12兆円すべてを扱うインフラならびに、プラットフォーマーに成長したいと考えています。同時に、当社のパーパス産業の真価を、さらに拓く」と関連しますが、不動産業界にテクノロジーを導入することで不動産業界全体を改革し、さらなる成長のサポートができれば、と考えています。

――さいごに、採用活動で苦労しているスタートアップ企業のみなさんに、メッセージをいただけますか。

バリューやパーパスを策定したのは、創業からしばらくしてからだと、紹介しました。これらを策定する前から、会社の文化や雰囲気についてを、それぞれのメンバーがnoteで発信していました。ですからバリューを作成する際には、私は議論に直接参加せず、メンバーが主体的に言語化してくれました。

今では、noteに代わってコーポレートサイト内の自社ブログ「estie inside blog」や、Wantedlyのストーリーなどでオープンに発信しています。伝えたいのは、このような情報発信が大きな効果や価値を生んでいることです。

記事を読めば会社の雰囲気やバリューがわかりますから、必然的に採用面接を受ける人は、共感した人が多くなります。商談の際にも、コミュニケーションのフックになるといった効果も生まれています。正直、業務の合間を縫って記事を書くことは大変ですが、相応の効果はあると感じています。

▼estie inside blog
https://inside.estie.co.jp/

――会社の変化を「情報」にして、発信し続けることも大事なんですね。本日はありがとうございました。

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