“自然体”を貫きながら70名以上のエンジニア組織に成長させたヌーラボの価値観|ヌーラボ サービス開発部長 馬場氏・人事担当 安立氏|TECH TEAM BUILDERS #13

テックカンパニーに注目し、エンジニアの組織づくりを進めていくうえでの課題や苦労、乗り越えるための施策などを紹介していく「TECH TEAM BUILDERS」。

13回目に登場いただくのは、大手キャリアやメディア、省庁なども導入している、各種コラボレーションツールを開発しているヌーラボです。サービス開発部長として採用も担う馬場保幸氏と同社初の人事担当者として入社した安立沙耶佳氏に、ヌーラボにおけるエンジニアの組織づくりのこれまで、現在、今後について聞きました。

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株式会社ヌーラボ
取締役サービス開発部長
馬場保幸氏

SIerを経て、まだ受託事業が主軸だった頃の2006年にヌーラボに入社。現在は、ヌーラボのサービス開発組織を技術・組織・採用等の面から統括している。

株式会社ヌーラボ
人事労務課
安立沙耶佳氏

新卒でリクルートキャリアに入社し、スタートアップからメガベンチャーを担当するリクルーティングアドバイザーに従事。その後、ITエンジニア向け新規事業の渉外・ビジネス開発を担当。2016年11月に株式会社ヌーラボに人事担当として入社。

コラボレーションツールを15年以上にわたり開発

――本日はよろしくお願いします。ヌーラボではビジネスチャットやプロジェクト管理など、いわゆるコラボレーションツールを手がけていらっしゃるようですが、ライバルも多いと思います。他社との違いや強みは、どのあたりになりますか。

安立氏(以下、敬称略):プロジェクト管理ツールの市場では海外サービスが多い状況ですが、私たちは15年以上にわたり国産のコラボレーションツールを提供し、様々な職種の方々に使用いただいています。

馬場氏(以下、敬称略):当社のサービスはプロジェクト管理ツール「Backlog」、オンライン作図ツール「Cacoo(カクー)」、ビジネスチャットツール「Typetalk」、これらのセキュリティとガバナンスを強化する「Nulab Pass」です。

雑談などのテンポの良い会話をしたい場合はチャットツールの「Typetalk」、図を用いたコミュニケーションをしたい場合は「Cacoo」、プロジェクトを進行していく場合は「Backlog」など、機能ごとにサービスを分けているのも当社の特徴でしょう。

――4つのサービスを展開するにあたり、どのような組織体制で開発を行っているのでしょうか。

安立:4サービスの開発チームに加え、システムの信頼性やサービスの可用性を担保するSREチームと社内システムを担当するインハウスシステムの合計6チームで構成されています。一般的にインハウスシステムエンジニアと聞くと、社内SE的な業務をイメージすると思いますが、当社は違っています。

馬場:社内の業務を改善する業務ハックに加え、データ活用を推進する業務も担っています。データ基盤の整備や社内のすべての人がBIツールを通してデータを活用するための環境づくりをしています。

――現在ヌーラボには約100名ほどの従業員が在籍しているそうですが、エンジニアの割合はどれくらいでしょう。

安立:7割以上がエンジニアです。本拠地は福岡ですが、京都、東京、ニューヨーク、アムステルダム、シンガポールに拠点を持ち、日本以外の国にもエンジニアがいます。

馬場:そのためサービスごとにプロダクトマネージャーを置き、グローバルレベルでの開発を進めています。プロダクトデザインチームはニューヨークを拠点としていることも特徴だと思います。

――海外に拠点があるのは珍しいですね。そのような体制にしているのは、どういった意図があるのでしょうか。

馬場:私たちは、自社のサービスを世界中へ届けたいという目標を持ってやってきました。そのために、グローバルに受け入れられるデザインや機能を開発していく必要があると考え、海外の各地域に拠点を構えました。世界のさまざまな感覚や感性を持つメンバーが関わることが、魅力的なサービスづくりにつながっています。

“異色な世界観”に惹かれたエンジニアが集まり、自然と組織が拡大

――ヌーラボはもともと3名のエンジニア仲間が集まり、起業したと聞いています。具体的にどのような経緯でスタートしたのでしょうか?

安立:かつて創業者の3名はSES(システムエンジニアリングサービス)として同じ会社に登録してたそうです。派遣先も同じだったことから意気投合し起業へ。エンジニアとして開発を続けていくなかで、派遣業務では自分たちの個性は出しづらかったことも起業のきっかけだったと聞いています。当時はオープンソースコミュニティの運営など、アクティブに活動していたようです。

馬場:彼らは、ある管理ツールを仕事で利用していたようですが、使っていてもっと楽しい気持ちになるツールが欲しいと思っていました。自分たちの手でより良いサービスをつくろう、という思いから生まれたのがBacklogです。当時は受託開発がメインでしたから、受託案件の合間に自社サービスを手がける、という流れでした。

――創業から約2年後、Backlogを正式にローンチされたと。馬場さんが入社されたのはこのころですよね。入社のきっかけを教えていただけますか。

馬場:当時からヌーラボは技術力が高く、業界内で名前を知られた存在でした。いい意味で尖っていたし、異色でもありました。創業メンバーも含めたエンジニアが、雑誌やブログ、コミュニティなどで頻繁に情報を発信していましたし、出版事業なども手がけていたようです。

安立:特定の有名な開発者がいたわけではないですが、集団の力があって、おもしろいことをやっているような印象がありました。自社のWebサイトに「突然ですが、ソフトウェアはアートです」といった内容が載っているなど、ヌーラボの世界観を積極的に発信していましたね。

馬場:自社サービスを手がけているスタートアップであればとくに珍しくはないでしょう。しかし受託開発メインの会社で、ここまで目立っている。しかも、自社サービスもローンチしていた。この会社なら、何か面白い経験ができそうだと思いましたね。まわりのエンジニアも、私と同じような思いで入社した者が多いと思います。

――その後、ヌーラボの世界観に惹かれたエンジニアが入社し、次第に組織が大きくなっていったわけですね。当時、採用については、どのような戦略があったのでしょう。

安立:戦略といった明確なものはありませんでした。これは採用に限らず、事業においても同じで、いつまでに売上をいくらにして、メンバーを何名にするといった明確な計画を立てていなかったようです。当時はミッションやビジョンもなかったそうです。

馬場:応募があったら面接をしよう、という感覚でしたね。それで、いい人がいたら採用する。結果、仕事のボリュームを増やすといった流れで、メンバーも仕事量も自然に増えていきました。

安立:積極的に採用を行っていたわけではありませんから、ホームページの問い合わせやリファラル経由から入社するケースがほとんどでした。ただリファラルに関しても、私たちから積極的に声をかけるようなアクションはしていませんでした。

――「いい人がいたら採用する」とおっしゃいましたが、具体的にいい人とはどのようなエンジニアでしょう。

馬場:技術的に優れている、という意味です。マネジメントスキルは求めていませんでしたし、ビジネスパーソンとしての能力も求めていませんでした。当社が請け負う案件に対応できるだけの技術力を持っているかどうかを大事にしていました。

安立:受託開発会社でありがちな、エンジニアを多く採用し人口を増やす。そこからクライアントに営業をかける、といったビジネスのやり方ではありませんでしたね。

――技術力の判断はどのように行っていたのですか。

馬場:当時は役員がすべて対応していました。現在でもそうですが、とくに形式張った面接を行うこともありませんでしたね。

安立:あえて採用フローを形式化する必要がなかったのだと思います。ただ、面接での質門事項については、他社の採用フローなどを参考に、質問する項目のテンプレートを作成。そこからいくつかピックアップしてお話をする流れで進めていました。このテンプレートは何度かアップデートしながら今でも使っています。

「ヌーラボらしさ」を大切に、組織の土台を見直す

――創業からしばらくの間は自社開発と受託開発を両立し、その後は自社開発に特化していったそうですね。その変化の裏には何があったのでしょうか。

馬場:創業から10年間は、多くのエンジニアが両業務を兼務。受託開発の隙間をぬって、自社サービスを開発していました。自社サービスの売上のみで会社を運営できる見通しが立ったので、受託開発の部門をなくしました。

それからあらためて、組織の拡大ならびに整備を行おうとの流れになりました。当時はメンバーが30~40名規模になってきており、役員1人では採用を対応できない状況でした。そこで、2016年に採用も含めた人事専門のメンバーを迎え入れようと動きます。

――それで安立さんが入社されたわけですね。ヌーラボとの出合いや入社理由について聞かせてください。

安立:実はヌーラボに入るまでのキャリアは、人事畑ではなく人材会社の営業で、ヌーラボは営業先だったんです。馬場と同じように、異色でユニークな会社だと感じコンタクトを取ると、創業メンバー2人が対応してくれました。その時は普通の営業トークでしたが、数カ月経ってから「人事を募集しています」と、それとなく誘っていただきました。私がテクノロジー系カンファレンス「PyCon(pycon.jp)」のスタッフをしていたことや人材会社での知見を評価していただいたようです。

――それで入社されて、実際にどのような施策を行っていったのでしょう。

安立:まずは、評価制度と賃金制度の見直し・構築をはじめました。たとえば、当時からすでにエンジニアの採用市場は激化する一方で、給与相場は上がり続けていました。長く在籍している社員が相場よりも低い給与設定になってしまうことを避けるため、見直しが必要だと代表も問題意識を持っていたことから、優先度を上げて対応しました。給与の査定方法についても、代表が1on1で行っていたものを仕組み化する必要があると感じていたようです。

また、組織が拡大するにつれ「ヌーラボの良さ、らしさ」を明確にしておくべきだとも考えました。具体的には行動規範の再構築です。当時も行動規範はあったのですが、受託開発時代に作成したものだったので、メンバーはほとんど見ていませんでした。あらためて、この機会に刷新しようと、全メンバーを集めワークショップを行い作成し直しました。

※新たに刷新されたヌーラボ社の行動規範

選ぶだけでなく選ばれる――面接はお互いを知る場

――安立さんが入社され組織にさまざまな変化が訪れたようですが、採用について変えたところはありますか。

安立:面接フローを刷新しました。私自身は当初「面接は1時間だろう」という認識でいましたが、実際に面接を担当するエンジニアから「見極めの時間が足りない」という意見が出てきました。結果、面接時間を前後の擦り合せも含め合計3時間に増やしました。

馬場:面接の前段階に行うコードチェックも、安立が入社する前は担当者によりまちまちでした。そこを明確にフロー化。「面談(人事)」→「課題(コードチェック)」→「エンジニア面接」→「代表面接」と整備しました。

――ヌーラボのエンジニア採用の面接は、どのようなメンバーが担当していますか。

安立:配属先の部署のエンジニアが面接を担当します。これから一緒に働く仲間、自分たちのチームに来てほしいエンジニアを採用するため、担当チームが面接するべきだという考えです。その際、1回の面接につき最大4名のエンジニアが出席しますが、最低でも1人は面接経験があるようアサインの際は配慮しています。

馬場:事前の30分で、どのようなエンジニアが欲しいのか。見極めるにはどのような質問をすればよいのか。先述した質問表を見ながら、優先度や深堀りポイントを擦り合せます。

――面接では具体的にどのような流れで進行していますか。また、面接時のポイントを教えてください。

馬場:前半の1時間では質疑応答を行い、後半の1時間ではより具体的に、実際に業務を行っている環境を疑似体験してもらうことで、お互いにフィットするかどうかをすり合わせています。たとえば、候補者のコードを面接の参加者みんなで変更したりしています。

安立:面接担当のエンジニアには、事前のコードチェックから求職者とのやり取りをしてもらっています。それを踏まえたうえで技術の確認はもちろん、協調性やコミュニケーションはどうか、なども。私たちからだけでなく、求職者にもジャッジしてもらっています。

馬場:組織や事業が大きくなるにつれ、チームが増えています。そのため実際の業務では、チーム間のコミュニケーションや連携が重要です。技術力が高いのはもちろん、チームプレイを重視できるかどうか。一方で、それぞれのチームで求めている技術は異なりますから、見合った人材かどうかを見極めています。

――事前のコードチェックも含め2時間の面接対応に、エンジニアのリソース確保にと苦労することはないですか。

安立:みなさん、とても協力的ですよ。一緒に働く候補者を自分たちで見極めたいという意識が強いのだと思います。ですから合否の判断も、担当したエンジニアが面接後30分の擦り合せでジャッジします。時間を置いても仕方がありませんから。

――そんなヌーラボ採用についての考え方が、先日公開された採用ポリシーにも記載されていました。これを公開した意図を教えてください。

安立:採用ポリシーは「私たちはこういったジャッジをします」といったものではなく、自戒も込めた宣言文のようなものです。

私たちにとって採用活動は、求職者と私たちお互いが紹介、選び、選ばれる場であると考えています。そして、このようなスタンスで採用活動を進めているヌーラボ、その文化に興味を持った人材に来て欲しい。そのような想いから公開しました。

採用ポリシーでも明確に提示していますが、私たちは「有名なエンジニア候補者だから」「候補者のキャリアがピカピカだから」といった理由で採用することはありません。候補者をジャッジする際、一定の技術スキルがあるか、そして、ヌーラボの世界観や考え方に共感してもらえる人材かどうか、をポイントにしています。

――なるほど。では安立さんが人事として、採用業務で意識していることを教えてください。

安立:ヌーラボの価値観を、ブログやホームページ、Wantedlyなどの採用サービスを介して、積極的に発信しています。そのうえで当社に興味を持ってくれたエンジニアとできるだけ会う機会を設けるようにしています。

人事に必要なのはダイレクトスカウトを多く配信したり、応募者数の多さや通過率の低さを打ち出していくことではなく、「今の立ち位置」を伝えていくこと。そのため、採用広報ではそのネタづくりも人事が行うべきだと思っています。会社の魅力を洗い出し、何を伝えていくべきかを精査し発信する。時には、採用だけではなく「組織をどう変えていくか」というところまで会社に提案していくことも必要だと思っています。

“ありのままの私たちを見てもらう”はこれからも変わらない

――今後の展開についてお聞かせください。

安立:社内に限ったチームコラボレーションではなく、外部のデザイナーやエンジニア、ライターといった方々と協業するときなど、幅広い業界、職種、プロジェクトで使っていただけるようなサービスに成長させたいと考えています。

実現のためには、まずは私たち自身が自社のツールを使い、楽しく働くことが重要であり、そのことが最優先事項だと考えています。

馬場:これまでは、会社の規模から見るとマネジメントを担う人材が少ないと感じていました。言い方を変えれば、ほとんどのエンジニアがプログラミングしているからです。

今後、より一層メンバーが増えていくにつれ、やはりマネジメント人材の採用と組織整備が必要だろうと思っています。ですが、これまでのヌーラボの文化はそのままにしたい。各人が納得する、楽しく働ける環境を維持しながら、自然と整備していければと考えています。

――本日はありがとうございました。さいごに、創業期のスタートアップに対して、メッセージをいただけますか。

安立:「身の丈に合わない採用はしないほうがいい」と思います。自分たちを大きく見せたり未来を誇張したりするのではなく、現状をそのまま見せて、それでも入ってきてくれる人を採用するといいのではないでしょうか。この想いは、創業当時から変わらないヌーラボのスタンスでもありますし、今後も続けていきたいと考えています。

馬場:ありのままの自分たちの姿を見てもらうことが大事だと思います。ですから面接時にリアルな課題を共有し、どうしたら解決できるか。面接の場でディスカッションすることもあります。そもそも、課題解決のために採用を行っているのですからね。そして繰り返しになりますが、答えというよりは、結論が出るまでのやり取りやコミュニケーションを大切にしています。

<馬場氏・安立氏推奨。 シード期、アーリー期の技術責任者にお勧めする情報源>

『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』Camille Fournier

ソフトウェアをつくっていく中ではさまざまな役割が出てきます。それらの役割を体系的に網羅して紹介してくれます。技術責任者という立場に求められることは企業によってさまざまだと思いますが、「自分に求められる役割は何か」を考えるためにも役立つと思います。また、企業が成長していくにしたがって役割も細分化していくと思いますが、どんな企業をつくっていくかを考えるためのヒントにもなると思います。

 

『Scaling Teams 開発チーム 組織と人の成長戦略』David Loftesness

企業を成長させていくための採用、マネジメント、組織づくり、コミュニケーションの仕方などが書かれています。実体験に基づくアドバイスも多く、そのまま自社に当てはめて実践することは難しいと思いますが、企業を成長させていくためのヒントになると思います。

『左ききのエレン』かっぴー

僕はけっこう怠け癖があるのですが、そんなときにこの漫画のことを思い出すと、いま全力を尽くさなきゃ、という気持ちになれます。もともとは「cakes」で連載されていたのですが、現在は絵がきれいになったリメイク版も連載中です。

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