2カ月でサービスローンチを支えた「副業」の存在。先手の施策が組織を成長させる|カウシェ 代表取締役CEO 門奈 剣平氏|NEXT UNICORN RECRUITING #11

新型コロナウイルスの影響により、日常生活やビジネスのさまざまな手段がオンライン化していきました。とくにEC関連では市場が拡大したことで、新たなサービスを開発し急成長した企業も少なくありません。

そのひとつが、複数人で購入すればお得になるシェア買いサービス「カウシェ」です。サービスを提供する株式会社カウシェは、2020年4月の創業からわずか5カ月でアプリ公開、1.8億円の資金調達と展開し、ユーザー数も激増。21年の6月にはスタートアップの登竜門であるピッチコンテスト「LAUNCHPAD Entertainment」で優勝を果たしました。

注目のスタートアップにインタビューをし、戦略や取り組みを紹介する連載『NEXT UNICORN RECRUITING』。第11回となる今回は、株式会社カウシェ代表取締役CEOの門奈剣平氏です。創業のきっかけや成長の原動力となった副業の活用、シード・アーリーステージでの組織づくりについての考えをお伺いしました。

スタートアップの最適な採用方法

スタートアップ企業において、採用は非常に重要なミッションです。そして、会社のフェーズによって、適切な採用手法は変わるもの。成長フェーズに合わせた採用ができるかどうかで、採用成功の確率は大きく変わってきます。

この資料では、急成長するスタートアップ企業のために、成長フェーズごとに考えるべき採用戦略、適切な手法を事例付きで紹介しています。

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株式会社カウシェ代表取締役CEO
門奈 剣平氏

1991年生まれ。日本と中国のハーフ。2007年まで上海で生まれ育つ。2008年からは日本で生活し、2015年に慶應大学環境情報学部卒業。在学中から宿泊予約サイト「Relux」を運営する「Loco Partners」に参加。シード前からKDDIによるM&A後のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)までを経験。海外事業立ち上げの責任者を務め、年間取扱高50億円の大幅な事業グロースに貢献した後、退職。20年4月に「株式会社X Asia(現カウシェ)」創業。9月に「1人だと買い物できないECアプリ」の「カウシェ」をローンチし、11月に約1.8億円の資金調達を実施。21年の「LAUNCHPAD Entertainment」にて優勝。

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「信頼」と「スキル」を備えたメンバーで、日本の小売を盛り上げる

――本日はよろしくお願いします。「カウシェ」は最近テレビや新聞でも頻繁に取り上げられ、注目を集めています。まずはサービスについて簡単に教えてください。

「カウシェ」は友達や家族、オンラインの知らない人と一緒に商品を購入する「シェア買い」アプリです。ユーザーにはシェア買い価格でお得に、かつ楽しく買い物ができるメリットがあります。一方で事業者には商品の複数販売につながるほか、「シェア買い仲間」を募るユーザーが商品の魅力を広めるプロモーションもしてくれるメリットがあります。

2020年9月のサービス提供開始から約11カ月でアプリダウンロード数は累計18万を突破し、掲載商品数は6000点以上にのぼっています(21年8月時点)。

――まさに急成長ですね。シェア買いは日本ではまだ新しい買い物の方法かと思いますが、サービス開発の経緯を教えてください。

私は日本と中国のハーフで、これまで日本と中国で半分ずつ生活してきました。前職では「Relux」という宿泊予約サイトを運営するLoco Partnersに創業間もないころから勤め、最後の3年ほどは上海での駐在を経験。その際、新型コロナウイルスが世界的に流行しはじめ、日本では物の売り買いが急速に冷え込む一方、中国ではオンラインでの接客販売など、オフラインに代わる新しいショッピング体験が次々と生まれていきました。周囲で盛り上がる中国のスタートアップ企業の様子を間近で見ながら、「日本のショッピング体験にはまだまだ“余白”がたくさんある」と感じたのです。

当時から中国では「ピンドゥオドゥオ」というECサービスがブレイクしていて、その成長のきっかけが、人が人を呼ぶ「シェア買い」の仕組みでした。「日本の小売を盛り上げるのはこれだ」と思い、それに着想を得て日本でシェア買いサービスを立ち上げました。

――事業アイデアを決めた後、創業チームはどのように固めていきましたか。

20年4月に私が1人で創業し、同年6月にCTO、7月にCOOがジョインしました。CTOは大学の先輩で、DeNAでサービス開発に携わった後、メルペイでテックリードを務めていた人物です。COOは前職の同僚で、ユーザーサイド全般を担当して事業をヒットさせたマーケターです。2人とも創業チームとして最初に頭に浮かび、声をかけると意外にあっさりOKしてくれましたね。

私は創業チームは「信頼」と「スキル」のバランスを見て構成するべきだと思っています。仲が良くて信頼しているだけでは、大学のサークルのようになってしまいます。一方、能力の高さだけを見て決めると、よくあるスター組織が崩壊するような状況に陥りかねません。「自分と距離が近くて一緒に腹を括れる」かつ「それぞれの領域でビジネスの足腰がしっかりしている」、この2つが大事なポイントだと思います。

――今のCTOとCOOは、門奈さんから見て信頼とスキルのバランスが取れた2人だったのですね。ただ創業自体は1人でされていますね。

はい。自分の意思を確認する意味でも、起業するか否かは自分1人で決意しなければいけないと思います。そうでなければ後々ビジネスがうまくいかなかったときに、責任の半分を創業メンバーに転嫁してしまいかねません。

ただ仲間探しは、起業を決意したタイミングからはじめていました。普通は事業を先に詰めて、それに合わせてメンバーを決めると思いますが、採用は相手の人生も変えてしまいますし、時間もかかります。それに、いい事業は創造性の高いチームから生まれます。遠く、大きく事業を展開していくためには自分のアイデアだけではまったく足りません。そこでサービス開発を進めるのではなく、アイデアを温めながら、まずは仲間探しを進めました。

サービスローンチまでわずか2カ月。スピーディーな対応を可能にした「副業」の活用

――7月に創業チームが揃ってから約2カ月後にはアプリを公開しています。短期間で完成を目指した理由と、それを実現した秘訣を教えてください。

企業は何かサービスやプロダクトを市場に出さなければユーザーに知ってもらえることはなく、言い方を変えれば世の中に存在していないことと一緒です。そこで私が持っていたアイデアをベースにサービスの詳細を創業チームで話し合って「(クオリティとして)少し恥ずかしいかもしれないけれど、大事なのはまずサービスを市場に出すこと」と決めたのです。その分、CTOにかなり機能を削られましたが(笑)。

短期間で完成させるために協力を依頼したのが「副業」としてカウシェに関わるメンバーです。当時は経営陣以外は、ほぼ全員副業メンバーでした。エンジニアからデザイナー、PR、SNS運用、商品開拓まで、合計18人ほどを短期間で集めました。ほとんどがリファラル採用です。創業メンバーそれぞれが過去に一緒に仕事をしたことがある人をはじめ、副業メンバーからのリファラルによる採用もありました。副業メンバーには本業に影響が出ないように、平日は本業の始業前や終業後に1〜2時間、休日に半日、合計して平均週10〜15時間くらい勤務してもらっていましたね。

今は経営陣含めて社員は8人、インターン生が7人ですが、副業メンバーは30人以上いるので、7割以上が副業という構成です(21年7月時点)。

――今でこそ副業の活用は当たり前ですが、当時はまだかなり珍しかったのではないでしょうか。

ちょうどコロナの影響で世の中の働き方に対する考え方が変わってきたタイミングでしたね。そこで「まずはやってみよう」ということではじめました。当時はよくわかっていなかったのですが、副業の採用は、正社員採用に比べて入社までのリードタイムが短いという、大きなメリットがありました。一般的には一つのポジションの採用に6〜9カ月かかりますが、副業であれば最短で翌営業日から働いてもらえます。また転職市場に出てこない優秀な人材と一緒に仕事ができることもあるんです。

――早期にメンバー集めができたことが、短期間でのローンチにつながったのですね。副業メンバーが中心となって開発を進めていく際、工夫をしていたことはありますか。

組織が拡大した後に副業を活用するケースは少なくありませんが、弊社は副業の力で大きくなっているため、組織自体も副業を前提とした作りになっています。たとえば、何ごともリモートワークでできるように、当初からドキュメントや映像を共有するなどして情報の流通性を高めています。また副業メンバーの業務はOKR(Objective and Key Result)ベースで組んでいます。ToDoを示すのではなく、OKRを提示して達成するための進め方は自分で考えてもらいます。緊急度が高いものではなく自由度が高い業務を渡し、進捗はウィークリーで管理して困りごとがあればサポートします。

また、ビジネスコミュニケーションや情報の流通性の部分ではオンラインを活用していますが、思い出づくりはなるべくオフラインで行っています。当時のローンチパーティーには副業メンバーも呼び、機会があれば少人数で食事もしました。今はオンラインで月に1回イベントを開催して、みんなでゲームをして飲んで笑い合いながら絆を強めています。

未来の爆発的な拡大に備え、先手先手の対応を

――21年3月には正社員だけでなく副業メンバーにも適用される人事制度「KAUCHE de WORK」を作っています。内容と意図を教えてください。

KAUCHE de WORK」では、副業でも正社員と同じように評価する制度です。3カ月に1度、OKRに対する振り返りや次のステップに向けた1on1を行うほか、半年に1度査定を実施して評価次第では副業であっても昇給します。5月には副業メンバーにもジョブローテーションを取り入れました。制度は副業メンバーと一緒に作りました。

「正社員だから偉い、副業だから地位が低い」ということは決してないと思っています。だから正社員でも副業でもフラットに評価します。一般的に副業はスキルの切り売りになりがちですよね。しかし弊社では、副業メンバーにもキャリアの充実につながる働き方を提供することで、どんどん活躍して輝いてほしいと思っています。彼らはカウシェになくてはならない存在です。だから大切に評価していきたいんです。

――採用に関しては、初期メンバーの採用で悩むスタートアップも多いと思いますが、どのような点に注意したら良いと思いますか。

私は候補者の中長期的なポテンシャルを意識することが大事だと考えています。二次曲線を描くスタートアップの成長では、その曲線より高い位置で成長するメンバーは会社を牽引してくれます。一方で成長に追いつけなければ次第に乖離し、よくある初期メンバーが「中途と合わない」「昔のほうがよかった」という状態になってしまいます。だからこそ、初期の採用でも成長スピードやラーニングの力、領域の広さを確認する基準を作り、人材を見極めることが大事だと思います。

弊社では「ロイヤルティ」「スキル」「ポテンシャル」に分けて選考の評価をしています。「ロイヤルティ」は志望動機や会社のビジョンなどへの共感、「スキル」は経験や実績、「ポテンシャル」は地頭や過去のインプット・アウトプットの経験とそのスピードなどを見ています。そのほかにも、別のポジションに配置された場合でもワークしそうかといった点もチェックしています。

一般メンバーでもマネージャーを選ぶつもりで行うため、採用のハードルはかなり高く、通過率も低いですね。それでも通過する方はいて、先日もWantedly経由でマネージャークラスの人を採用しました。

――創業から約1年での人事制度構築は、スタートアップとしてはかなり早いペースですね。

シード期では人事制度はなくてもどうにかなるイメージがあると思いますが、組織づくりにおいては次の次のフェーズくらいまでは想定しておかなければ遅いと思います。そうでなければ、次のフェーズに入った途端に回らなくなってしまいます。弊社は20年11月に資金調達をしましたが、評価制度はその前から考えていましたし、ビジョン・ミッション・バリューはさらにその前の9月に策定しています。

私は前職のスタートアップでシード、シリーズA〜C、そしてM&Aまで一通りの経験を積みました。またKDDIという日本でもトップクラスの企業で3年間、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を担いました。その経験を活かして、次に起こり得る問題の地雷を撤去しながら組織づくりを進めています。

――そこまで先を見据えた組織づくりをするのはなぜですか。

組織が追いつかないことによる事業成長の停滞は一番もったいないし、競争環境においても不利です。とくにスタートアップは二次曲線を描くような爆発的な成長に備えなければならないため、体感で1年早いくらいのことをやっておくことが必要です。たとえばメンバーが10人くらいのときに、100人くらいになったときにぶつかる壁を想定して施策を打っておけば、組織が成長のストッパーにはなりません。

基本的に組織が壁にぶつかっているのであれば、すでに状況としてはかなり良くない状況だと思います。顕在化している問題の穴を埋めるのは相当大変でしょう。潜在的な状態で芽を摘んでおくことが、急成長する組織には欠かせないことだと考えています。

さらなる組織の拡大で「世界一楽しいショッピング体験をつくる」

――先手先手で対応をされているということですが、現在はどのようなことに取り組まれているのでしょうか。

採用に関しては、今後ジョインしてもらう10〜15人が会社が1000人になったときの器になる存在だと思っています。そこで今はハイエンド・トップエンドの採用を進めています。また組織づくりの面ではGAFAの人でも働きやすいと感じる仕組みを目指し、有給やフレックス、産休育休などの制度の土壌づくりを進めています。

――さいごに、今後の展望をお聞かせください。

私たちは「世界一楽しいショッピング体験をつくる」というビジョンを掲げています。今のオンラインショッピングは広い倉庫の中で必要なものを検索しているような感覚で、買い物体験としてはまだまだ一部しか提供できていないといえます。そこで「カウシェ」が遊びのような買い物体験を全力で作り、オンラインでもオフラインに引けを取らない、またはそれ以上の体験ができるようサービスを提供していきたいと思っています。中国では「ピンドゥオドゥオ」がユーザー数で中国EC最大手のアリババを超えるまでに成長しています。私たちが日本で小さく収まるわけにはいきませんからね。

また組織としては、「自律・自燃型組織」という人事制度ポリシーのもと、自らを律しながら周辺のチームに熱量を分けて、お互いに創造性を高め合えるようにしていきたいと思います。

――今後も多くの方々に注目されるサービス・組織になりそうですね。本日はありがとうございました。

▼スタートアップが取るべき採用戦略とは?https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/su_strategy

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