カミナシ 河内

マーケティング思考で採用を制す。IVS優勝を実現した組織成長戦略|NEXT UNICORN RECRUITING #4 カミナシ COO河内佑介氏

創業5年目、資金もショート寸前と後に引けない状況での事業ピボット。そんな逆境の中、2020年12月18日にスタートアップの登竜門となるピッチイベント「LAUNCHPAD SaaS」で優勝を果たし、今年3にシリーズAの資金調達を実施したのが、株式会社カミナシです。

世間から注目されるスタートアップにインタビューを行ない、各フェーズの戦略や取り組みを紹介していく『NEXT UNICORN RECRUITING』。今回は、昨今急激に注目を集める同社に、未だスポットが当たっていない企業の裏側、組織・採用戦略についてインタビューを実施しました。破竹の勢いで成長を続ける同社を支える「人材」は、どのように集まっているのでしょうか。2020年7月に同社へジョインし、プロダクトマーケティングマネージャーや事業責任者を歴任し、2021年3月に執行役員COOへ就任した、河内佑介氏に詳しく話を伺いました。

株式会社カミナシ
執行役員COO
河内佑介氏

インテリジェンス(現・パーソルキャリア)に新卒入社後、人事や営業、プロダクトマネージャーを経て、テクノロジー領域グループ会社の事業責任者として複数サービスを統括。2019年7月、カヤックLiving(現・株式会社カヤック)に入社し、プロダクトマネージャーおよびプロダクト開発、開発組織の責任者を担当する。
2020年7月にカミナシに参画。PMM、事業責任者としてカミナシの事業戦略策定や組織開発を推進し、2021年3月に執行役員COOに就任。
https://www.wantedly.com/id/yusuke_kawauchi

採用プライオリティは ビジネスモデルやパイプラインに紐付ける


ーーカミナシのIVS LAUNCHPAD SaaS優勝と、シリーズAの調達おめでとうございます。また、河内さん自身もCOOに就任され、ますますカミナシが躍進する年になりそうですね。

ありがとうございます。現在カミナシは5期目になり、途中で事業ピポットなど苦しい時期もありましたが、リード数や売上などに見通しが立って来たところです。

ーー現在手がけられているサービス「カミナシ」は、IVS優勝で一気に注目が集まりましたが、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。

カミナシは、現場などで働いていて自身の机を持っていない「ノンデスクワーカー」の働き方を変革するために開発したサービスです。多くのノンデスクワーカーは、プライベートではスマホを使いこなしているのに、仕事では管理票やチェックシートを紙で運用している。昔の非効率なシステムから抜け出せないままでいます。

カミナシは、こうした現場の管理業務やそのデータ化、関係者への報告などをデジタルで効率化するソリューションを提供しています。ただ現場をペーパーレス化するだけではなく、紙を回収した後の工程で発生する管理者業務や、サプライチェーンも巻き込んだ業務フロー全体のDX化に貢献できるサービスです。

ーー河内さんはこれまでどのような役割を担ってこられたのですか。

2020年3月頃から、副業のプロダクトマーケティングマネージャーとしてビジネスサイドに幅広く関わりはじめたのですが、正社員になった7月以降は、採用や組織マネジメントも担当するようになり役割も事業責任者となりました。カミナシにおけるプロダクト開発業務以外の役割は大体担ってきましたね。

ーー河内さんが事業の舵取りをされてきたのですね。組織や採用には、いつごろから関わりはじめたのでしょうか。

私が正式にジョインした7月からですね。それまでは採用をストップしていたのですが、サービスリリース後の反響を踏まえて今後の見通しが立ったため、採用にも取り組みはじめました。リリース当時は10人程度だった組織が、現在は社員と副業メンバーも含め30人ほどまで成長しています(2021年1月取材当時)。

ーー採用を止めていた理由と、再開後の採用活動で注力した職種があれば詳しく教えてください。

採用を止めていた理由は単純にリソース不足ですね。キャッシュや社内の人手などが足りていませんでした。サービスリリース前で資金調達の見通しも立っていなかったので、会社の支出を増やせなかったんです。リリース後、問い合わせや反響などを含めて手応えを感じられたので、採用を徐々に進めていきました。

重視している職種については、SaaSプロダクトを手掛けている以上、エンジニアやデザイナーはいつもトッププライオリティです。また、カミナシは導入後のアップセルの余地が大きいビジネスモデルのため、カスタマーサクセスの採用にも注力しました。

たとえば、工場の1ラインでテストケースとして利用してもらい、効果を感じてもらえれば工場全体の導入につながっていきます。そのため、一度導入してくださったお客様に価値を実感してもらえるようなカスタマーサクセスの構築が急務だったんです。

施策のスモールスタートには副業人材を。 社員化につながる仕組みを整備


ーー河内さんも最初は副業から社員になったと伺いましたが、現在も副業の方が多く関わっているのでしょうか。

そうですね。社員は18人ほど在籍しているのですが、それ以外にも、広告運用やコンテンツSEO、カスタマーサクセスとの壁打ち、デザイナー、技術ブランディングなど、不足しているポジションや知識を副業や業務委託の方が補ってくださっています。

ーー副業人材を活用する際は、依頼範囲をある程度明確にする必要があると思います。そのような副業人材の手が必要な業務をどのように整理しているのですか。

河内:弊社では、サービスをどのように市場に浸透させていくかの戦略やアクションプランをまとめたGo-to-Market戦略を立てて、PDCAをまわしながら事業を進めています。施策をスモールスタートで試してみて、効果が出そうであれば、その施策でプロフェッショナルの方に依頼するという流れです。

たとえば、初期の広告運用やコンテンツSEOは私が担当していたのですが、細かい運用や検証フェーズでは十分なリソースを割けられないので、目的や仮説立てまでは私が行い、検証を含めた運用を副業の方に依頼しました。

また、先ほどのカスタマーサクセス領域ではナレッジが不足していたので、サービスのオンボーディングプロセス構築から相談できる方に、副業でサポートしていただいていました。この方も、最終的には社員としてジョインしてくださったので、今はとても心強いですね。

ーー副業から社員になっている方が多い印象です。副業から社員になってもらうために、どのようなコミュニケーションを取っているのでしょうか。

私の経験則になるのですが、本当に優秀な方が「働きたい」と思う要因は、金銭的な報酬だけではなく、「事業の可能性」や「この人たちと一緒に働きたいか」だと考えているんです。そのため、副業メンバーと1on1をしたり、事業状況を定期的に共有する場を作ったりするなど副業者向けのオンボーディングを行い、会社を理解してもらう取り組みにも力をいれています。

面接でも、会社のカルチャーであったり、事業への想いを軸に伝えたりすることで、社員としてジョインする意思決定をしてくれた方もいます。

ーー事業への期待感を醸成したり、組織とフィットできる環境を整えたりすることが重要なのですね。自社と相性のよさそうな方を見つけるために利用している採用チャネルや、工夫などがあれば教えてください。

Wantedlyも含めて、いくつかの採用サービスでダイレクトスカウトを送ったり、エージェントに相談したりしています。社員や社外のステークホルダーからの紹介もありますね。

採用チャネルで意識しているのは、チャネルごとの人材の特徴です。Wantedlyであれば、若手やエンジニア、デザイナーにアプローチしやすいと感じているので、そうした人材を必要としているときはよく活用しています。ビジネスサイドかエンジニアサイドかなど、必要な人材にあわせてチャネルを使い分けるようにしています。

中長期的に優秀な人材を採用し続けるために、 BtoBマーケティングの思考を採用に取り入れる


ーー先ほど、採用計画は立てていないと伺いましたが、プライオリティの付け方やチャネル特性の意識など、アクション一つひとつが整理されている印象です。採用活動を進めるにあたって、大事にされている考え方があるのでしょうか。

これまでの経験をふまえて、採用活動がBtoBマーケティングに似ていると考えているんです。BtoBマーケティングはtoCと比べて、ターゲットがサービスを認知してから意思決定するまでのプロセスが長い、意思決定者が多いといった特徴がありますよね。採用でも、候補者視点では転職したい企業を見つけて履歴書を書き、応募して、何度か面接をして、やっと入社するかどうかの決断ができます。また、候補者はプライベートな事情も考慮して、給与や勤務時間といった様々な条件をクリアした企業を選定した上で、応募するケースが多いでしょう。

このように採用活動とBtoBマーケティングは類似点が多いため、中長期的な視点で、候補者の「転職意向度」のようなフェーズにあわせて施策を行うように心がけているんです。たとえば採用イベントでも、「SaaSに興味のある人向け」「デスクレス(現場)系SaaSに興味のある人向け」「カミナシを知っているけど、入社するほどではない人向け」など、それぞれターゲット毎に目的や施策内容を最適化しています。

採用のKPIとして定めてしまいやすい「自社への応募数」や「面接数」といった指標だけ意識するのではなく、自社を認知してもらい、興味をもってもらえる活動にも力を入れるべきだと考えています。

ーーマーケティングでも採用でも、最初のプロセスである「知ってもらうこと」が非常に高いハードルだと思いますが、どのような施策を行っていますか。

採用広報としてコンテンツ制作に力を入れています。優秀な方が転職市場に出てくる前、まだ転職を意識していない潜在期から、自社コンテンツに触れてもらい、転職を意識した時の選択肢に入れてもらえるようにするためです。

最近は noteやWantedlyで記事コンテンツを積極的に発信していて、3ヶ月で20本くらいは投稿できていると思います。

ーーコンテンツ制作は重要なマーケティング施策であるものの、一見地味で工数がかかるため、継続が難しそうですが。

先日、会社のバリューを策定したことが貢献していると思います。バリューもいくつかあるのですが、とくに「良いところだけではなく、弱さも含めて社内外に発信していこう」という意味を込めた「全開オープン」がプラスに働いていると感じています。

このバリューの良いところは、「弱さも含めて発信すること」です。私や代表が会社の課題を社内外へ積極的に発信しているので、メンバーが情報発信する際の心理的安全性が保たれ、メンバー主体の発信につながっているのではないかと考えています。メンバーの積極的なアクションがなければ、3ヶ月に20本も発信できなかったでしょう。

ーーメンバーがそこまで主体的にアクションしてくれると心強いですね。

メンバーも採用に課題があると感じてくれているので、私たち経営層もメンバーに採用進捗を共有したり、「今日面接に来てくれた人、書いてくれた記事読んでくれたみたいだよ」と伝えたりして、採用への貢献を実感してもらえるようなコミュニケーションを取るようにしています。

ーー「知ってもらう」きっかけとなるコンテンツは発信できている状態とのことですが、候補者の「興味」につながっている実感はありますか。

同じく「弱さも発信する」が効果につながっていると感じています。社内で取り組めていない課題や必要な人材を網羅した採用ウィッシュリストをTrelloで公開したり、記事コンテンツやSNSでの発信を続けたりしたことで、カミナシを応援してくださる方が徐々に増えてきている実感があります。こうして応援してくださる方々から、「一緒に働きたい」と思っていただけるような発信を今後も続けていく予定です。

成長し続ける組織は、 採用でも未来への種まきを忘れない


ーースタートアップはほとんどの企業が採用に困っていると思います。こうした企業が採用活動をより良くするために考慮すべき視点はありますか。

企業が優秀な方にアプローチし続けるためには、組織を磨く視点が必要だと思います。なぜなら、サービスを利用するユーザーにとっては「会社の価値=プロダクト」ですが、内側の人になるかもしれない応募者にとっては「会社の価値=プロダクトを含めた”組織”」だからです。インターネットやSNSの普及で、組織の内情は良くも悪くも情報として社外に伝わるようになりました。良い組織をつくり、情報をオープンにすることで良い採用ができるより本質的な時代になっていると思います。

また、採用活動の推進においても、組織力によって結果に差が生まれると思っています。エージェントや広告、ダイレクトスカウトなどの施策は、いわゆる顕在層の刈り取りです。マーケティングと同様、顕在層はいつか必ず枯れてしまうため、それから潜在層へのアプローチをはじめてもすぐに効果はでません。これを念頭において、採用が上手く進んでいるときでも、常に未来への投資に取り組める組織へと磨いておくことが重要だと思います。

ーーありがとうございます。最後に、カミナシさんの今後について伺わせてください。シリーズAの調達で成長にドライブがかかるフェーズだと思いますが、今、とくに必要としている人材はどのような方でしょうか。

資金調達も完了して今後の先行きが見通せるようになったため、まずは現在の倍くらいに組織を大きくしていこうと考えています。そのため、これまでのように月に1〜2人を採用するのではなく、計画的に人材を増やしていく予定です。今まで採用は私主導で進めていたのですが、今後は私だけで対応しきるのは難しいので、まず採用担当者の方が入ってくれると嬉しいですね。

また、導入社数が増える中で大企業やPMF(Product Market FIt)できていない業界への開拓力があるセールスの方も、これからサービスを広く普及させていくために必要な人材です。もちろん、エンジニアやデザイナーの方も引き続きトッププライオリティで採用を続けていきたいと考えています。

ーーIVS優勝から今年の資金調達などで、間違いなくこれからの活躍が強く期待されていると思います。本日はありがとうございました。

著者プロフィール

鎌田淳生

Writer

1994年千葉県生まれ。コンテンツマーケティング企業にて、オウンドメディアのプランニングおよび企画編集からキャリアをスタート。現在は広告代理店にて、主にtoCブランドのプロモーション戦略や企画の立案、施策進行などを担当。

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