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【月刊瀧】2月のFintechニュースを瀧さんに聞いてきた

こんにちは。マネーフォワード広報の青木です。

巷に溢れるFintech関連のニュース。色々あるけれど、今月は何があったっけ...?先月からスタートした当社Fintech研究所長の瀧によるFintechニュースの振り返り月刊瀧ですが、「これはおもしろい」「瀧さんの私生活が知りたい」と嬉しい反響をいただいております。ありがとうございます。

ということで、今月のトピックスは以下です。

1. ベーシックインカムは貧tech?
2. ソフトバンクがスイス保険を、 楽天が朝日火災海上保険を買った件
3. 月初の株価のボラティリティ
今月の瀧的ニュース:イギリスに行った話、溶けゆくアイスは不安の象徴という話

それでは瀧さん、よろしくお願いします。

※本インタビューは2018年2月26日(月)午後に実施いたしました。

1. ベーシックインカムは貧tech?

青木:瀧さん、大反響らしいです、この企画。

:何が面白いんだろう...ニュースが面白いのか、ネタ的な面白さなのか、青木さんのつっこみなのか...。

青木:(笑)。社内外のみなさん、瀧さん、私宛に感想、ご希望、お待ちしています。取材のご連絡もお待ちしています。

:(笑)。

青木:最初のテーマです。神奈川県の『ベーシックインカムハウス』が話題になったということで。まずは、ベーシックインカムについてお聞きしたいです。

:これはFintechというか「貧tech」かもですが...。憲法などでは、生存権を掲げているので、お金がない人に向けた生活資金を申請ベースで支払う生活保護制度がありますよね。

ただ、生活保護制度には、「行政コストを抑えて本当に必要な人にお金が渡っているのか」という課題と、「受け取る側が社会的な関係を気にして辛い気持ちになる」という課題があります。ベーシックインカムはそれに代わるものではないですが、「だったら、みんなに与えればいいじゃない」という発想がベースになっています。

青木:ふむふむ。過去にもそういう考え方があったんでしょうか?

:古くはミルトン・フリードマンという経済学者が提唱した、一定の収入がない人々は政府に税金を納めず、逆に給付金を受け取るという負の所得税と呼ばれる政策アイデアがあります。ただ、ベーシックインカムの場合、財政が厳しい中で、全国民に導入するとすごく大変ですよね。月間15万円を日本全員に支給すると、いくら必要なんだという話で。

青木:仮に1億2000万人に月間15万円支給として、200兆円を超えます。

:今の国家予算規模は約100兆円なので、苦しいなという印象で。ベーシックインカムで削れる予算があったとしても、高齢化が継続的に進む中ではしんどいと思います。

青木:国家予算の倍ですね...。

:例えば、AIが日本人の仕事を半分奪ってしまったとすると、半分の人たちが食えなくなる可能性があります。ただ、本来は自動化すると、次に社会がそれなりの仕事を生んでいく側面があると思うんです。例えば、昔は電話の「交換手」って、わりとインテリジェントな女性が就く仕事で、今はそういった仕事はなくなりましたよね。

青木:電話交換手...映画などに出てくるイメージです。

:他にも「タイピスト」という仕事がありますが、みんなが端末とタイピング技術を持ったことでその仕事も減ってきました。でも、その人たちが失業したからといって、電話機や機械を打ち壊しに来た、なんてことは起きてないですよね。

青木:打ち壊してないと思います(笑)。

:でも、AIが急速に進むと、社会における仕事の配分的に、全員に仕事が行き渡らないかもしれません。そうなった場合、社会で職を持っている人と、持っていない人の間で不和が生まれるくらいだったら、AIに税金をかけて、その財源でベーシックインカムにした方がいいのではという議論もあります。

青木:ええ、そんな視点もあるんですね。

:それを検討するなら、日本人がどのくらいAIに仕事を奪われるかという議論にもなります。仕事って、僕らが考えている以上に、単に給料を稼ぐための手段ではなく「社会と接点を持つこと」でもあるんですよね。そんな「生きがい」とかも含めた上での仕事の意味を丁寧に捉えなくちゃいけない。仮にそれを失って、そのショックが大きすぎる場合に、ベーシックインカムはひとつの解決法になるんじゃないかなと思います。

青木:社会との接点を失ってしまった人へのケアになると。

:もうひとつの視点があるんですが、うつ病にとても効く薬は、毎月日本円で約8000円を投与することという研究結果がありまして。

青木:え、毎月8000円を支給するってことですか。

:そうです。うつ病に限らず、人が精神的に元気じゃなくなる大きな理由は、友達と交流できなくなることで、それは貧困ともリンクしています。人間は社会的な生き物なので、「友達との時間」という体験を提供するというのが非常に重要らしいんです。

青木:なるほど。そういった体験が治療になるんですね。

:「お金を使って友達と遊びに行けること」が大事なのですが、大元には、貧困率とうつ病との関係が存在します。友達と遊びに行きたいけどお金の問題で躊躇し、逆に声をかけられないように振る舞うこともあるようです。これに関連する話で、最近『老後破産:長寿という悪夢』の文庫版が出版されまして。

青木:す、すごいタイトルです...。

:これはかなり重いけど、大事なことに触れている本なんですよ。登場する人達って、港区の高齢者とかなんです。

青木:えええ!

: 生活資金の足りない年金受給者の中には、生活保護を受けられることを知らない方もいるそうです。1日数十円で、年金支給前の数日はひやむぎとかで過ごすとか...。

青木:ひ、ひやむぎ。

:そういう境遇の方々には、それでも100万円くらいを手元に残しておく人が多いそうです。ただ、その「余裕」と捉えられてしまう100万円の資産があるために、生活保護が受けられないみたいです。

青木:ああ...なるほどですね。それはもしもの時の資金なんでしょうか。

:個人として大事にしている価値観として、自身や、介護している奥さんのお葬式用などに残していることが多いそうです。ただ、そのために生活保護を受けられず、逆に不衛生になってしまうこともあって。社会保障における考え方で、貧困による社会的な不利益や差別、劣等感のことを指す「スティグマ」という言葉があります。「働いていないのにお金をもらうなんて申し訳ない」みたいに、健全な道徳性から生まれる遠慮は、実はその人を不幸にしうるんですよね。

青木:それは、日本人特有の考え方なのでしょうか。

:いえ、これは社会保障のあり方では古くから提唱されていることで、「だったら、もう強制配布した方がいい」という考え方につながり得ます。一方で、生活保護が当たり前になると、 生活保護をもらったその足でパチンコ屋に駆け込んでしまうという課題もあります。

青木:それは永遠の課題になりそうですね...。

:以前、大阪の橋下元市長が電子マネーの付与というアイデアを試すことで、この問題を解決しようとしたんです。ただ、それだと消費の現場で、その人が受給対象であることが判明してしまいます。これは先にお話したスティグマが作用してしまう事例といえます。

生活保護を受ける人たちの中には、何らかの基準でお断りしなければいけないケースもあります。そもそも、各家庭を見に行く行政コスト自体が生活保護に当てられるはずで、一律での支給が可能であれば調査が不要になるんですよ。

青木:テクノロジーの力で、変えられることはあるのでしょうか。

:僕がいつも思うのは、キャッシュレス化した世の中だったらそれが変えられるかもしれないと。使えるお店は限られるけれど、必要な利用券を電子マネーとして与えるバウチャー制です。そこでは生活に必要なものは買えるが、ギャンブルには使えない。カードコントロールと呼ばれる、使える加盟店を制限する方法もカードネットワークの世界ではすでに存在します。そういう方法ならば支給の可能性もあがるかもしれない。

青木:使えるお店が限られている地域振興券みたいですね。

:そうです。でも、たぶん電子マネーとかの方が適切で、どこかの段階で日本でキャッシュレスが実現した時にはそういう風にするべきなんですよね。

青木:電子マネーなら転売もしにくそうです。

:昔から、お金を与えた結果、本来の制度が目的としていない方法、ギャンブルや武器、薬物とかにお金が使われてしまうことは、経済学でずっと問題になっています。それに対して、バウチャー制というものはずっと唱えられていて、キャッシュレス化した社会であればものすごく可能性があると思うんです。

当然、生活保護が必要な人達に対しての給付のイメージですが、働くと補助が減る仕組みにすると、人は働かなくなりますよね。その辺りを先に述べた負の所得税とかで解消し、働いた分はちゃんともらえる形にすると、社会的な幸せの度合いが上がるかもと思います。

青木:ふむふむ。

:最近感動したのがイギリスで孤独問題担当大臣というのができたんですよね。

青木:そんな大臣が!発表が2017年、就任したのは2018年ですね。

:孤独死とまではいかなくても、特に高齢者の孤独などは昔からずっとある大きな社会問題です。ポイントは、最初にイギリスでこの大臣ができて、日本ではなぜまだ出来ていないのかということです。

青木: 日本は、世界の中で65歳以上の年齢はダントツ一位なのに...確かにそうですね。

国民の28%を超え、3510万人以上と言われています。だけど、お金がなくなった時の真の問題の相談ができなかったり、こうやって誰かと話す機会がなかったり。先日聞いた言葉で印象に残っているのが「今のご時世高齢者に必要なのは、”きょういく”と”きょうよう”ということ」です。

青木:教育と教養、でしょうか?

:いえ、今日行くところと、今日用事があることです。それって、すごく孤独問題と密接なんですよ。

青木:なるほど。だからコメダ珈琲が流行るんでしょうか...。

:本当にそうだと思います。人間は社会的な生き物なので、そこを大事にしながら生きていくセーフティネットを、国がケアすべきフェーズに来ているかもしれません。

青木:社会的な生き物であり続けるために。

:最初の本厚木の話ですが、これは法制度全く関係なく、運営の方が生活費を支給するという話ですね。これはすごいですよ。最低限を保証してあげることで人間は意外と自由になるし、そのストレスが取り払われることで、自分の可能性を考えるようになると思います。

青木:入居者1人につき、月に1万5000円を供給されているんですよね。すごいです。

:すごいですよね、本当に。5人くらいが住むことになるみたいで。

青木家入一真さんが仰っていた「人生定額生きホーダイ」という考え方に近いのかなと...。

:それと一緒で、苦しまないと生きていけないんじゃなくて、生きていけることは当たり前の権利としても、さらに幸福追求権があり、それを追求するためのバッターボックスに立てない人がすごく多いよねと。状況によっては、結婚とかまで考えられない人たちが大勢いるわけですよね。

青木:そうですね。これは生活保護に比べると、1万5000円は大きな金額ではないですが、それでもすごいです。

これは新しすぎて今まで考えたこともなかったですよね。民間の方が民間の方にお金をあげるにしても、ベーシックインカムを自らやる試みはあまりなかったはずですよ。なので、とっても面白いです。不安が大きすぎて、一歩目を踏み出せなかった人たちが、どういう変化が生まれるのか、それを実証実験するというのは非常に興味深いですね。本当に。

2. ソフトバンクがスイス再保険と、 楽天が朝日火災海上保険と

青木:次は、ソフトバンクによるスイス再保険買収に関する報道楽天による朝日火災海上保険買収発表のニュースですね。楽天の件は1月末ですが、先月のインタビュー時には未発表だったので、ご容赦ください。

:これは大きなニュースです。損害保険業界というのは、いろんな意味でテクノロジーに対してチャレンジを抱えている業界です。例えば、今後自動運転になっていくと、保険の中で最も大きな自動車保険というジャンルがどうなるのか、という課題があります。AIがアシストしてくれるとそもそも事故は減りますよね。所有する車にかける保険も、ライドシェアの影響などで減っているはずです。

青木:確かに...。車を保有する人も減っていますよね。

:そうですよね。車を保有している人の割合って...実は僕とかも免許失って久しいんですけど。

青木:私も失いました。

:え、まじで。

青木:はい。

:更新忘れ?

青木:認識してはいたんですが時間が取れず、更新に行ったら猶予期間が2日前に切れていました。

:...仕事頑張る人は免許をなくすんだよ。

青木:いやいや(笑)。本当、泣きそうでした...。情けなくて。

:あれ、辛いよね。今度みんなで免許取りに行きましょう。

青木:(笑)。

:本題に戻ると、IT企業が損害保険会社をやるのは重要な文脈、とても大きな話です。ソフトバンク側の報道はまだ観測記事ですが、スイス再保険はロンドンの会社です。ソフトバンクはUber楽天はLyftに出資をしていることを意識すると、そのメッセージ性が見えてきます。オンデマンド経済の中で、プラットフォームを持つ側が車を貸し、利用者は乗車体験を買い、そこに保険が含まれるというのは理にかなった動きだと思います。

青木:ふむふむ。

:一定確率で事故が発生したり、雷が落ちたり、そういうことが起こりますが、リスクばかり考えていると人間何もできなくなります。そこを外部に保障してもらい、手数料を払って心配をアウトソースするのが保険の本来のあり方ですよね。技術が発展すると、技術が人間の不安を取り除いたり、事故を減らすことの他に、自動運転の場合は人間が事故を起こしてしまう、といった責任が減ります。

あと、保険会社の重要な機能は詐欺の防止です。貴志祐介さんの『黒い家』は、いろんな人が恐怖を体験する保険詐欺が軸の物語ですが、IoTの時代だとそういったことは減るはずです。昔は記録の手段がなかったので、本人の証言を元に審査の人たちがそれを検証するしかなかったのですが、友人が勤めてた損保だと「庭にあったクルーズ船が盗まれたから、盗難保険でカバーして」とかいう人がいたりしたんだそうです。

青木:え、そんな無茶苦茶なことを言う人がいたんですか。

:意図的に盗ませて転売とかですね。保険業界はそういうことに対して、ある程度、性悪説に立って保険詐欺が起きていないかを確かめる必要があります。だけど、保険に入る場合には必ずこのチップを付けてくださいみたいにしたり、それこそテレマティクス保険みたいに、いつ誰が事故を起こしたかとか、そもそもブレーキの踏み方が危ない人だとか。そういったことの事前検知が可能になると、保険会社の人間の作業の多くがなくなるかもしれないんですよね。

青木:保険産業自体が姿を変えるということですか?

:例えば、いずれ自動運転Uberが出てきて、自分がそれに乗っていた時に事故が起きてしまったとします。その場合、責任を取るのはIT企業じゃないか、みたいな話はずっと言われてきたんですよ。とはいえ、そこまで動きがなかったジャンルにおいて、楽天とソフトバンクの一週間差くらいで出てきたニュースというのは、大いに注目すべきかなと。

青木昨年の振り返りニュースで瀧さんが「Insur(Insurance) techくるよ」と仰ってましたもんね。

:でしたね。この取り組みの意味は、国内のいろんな保険会社さんが意識しているはずです。昔からある大手損保会社さんに勤めることって、わりと良い職場のイメージだったと思いますが、結構裏側で激しい変化が起きていますし、業界関係者でも強い問題意識をお持ちの方が多い印象です。

青木:日本を代表する二社の大きな動きですが、今年こういった事例が増えるんでしょうか。

:他はYahoo!とLINEくらいしか思い当たらないですが、個人的にLINEはそういうイメージがないですね。KDDIとライフネット生命の提携みたいに、KDDIがライフネット生命の商品を売るというような動きは、今までもありました。ただ、今回のように、より根本的に計測して分析できるリスクと情報の融合が進むとなると、保険業界としては新しいことができるようになるはずです。

青木:未来を見据えた課題があって、そこに対しては楽天やソフトバンクと一緒にやった方が良いという判断をしたということなんですね。

:少なくともソフトバンクの方はそうだと予測しています。楽天の朝日火災の方はどう進展するのかが読みにくいですが、このトピックスは非常に痺れたニュースでした。僕らも自動運転時代に免許がなくても生きていける社会を待ちますかね。

青木:いち早くそんな時代がきてほしいです...。

:(笑)。

3. 月初の株価のボラティリティについて

青木:最後が月初の株式の大きな変動です。株価、ものすごく動きましたね。

:元々はアメリカなんですよ。2月の初めに市場がものすごく動いた結果、そういったリスクにポジションを持つ金融商品が想定外に償還されることになったんですよね。もともと、非常にリスクが高い商品だというのは認識されていましたが、要は100だった価格が4になるという、激しい変動が起こったんです。それで、一部には大変なニュースでしたと。

青木:相場変動に関しては、かなり大きく取り上げられていましたよね...。

:僕がその昔、はてぶ一位デビューをした末路シリーズの記事は、一億円を当てて不幸になった人の末路の話でしたが、その真逆で一億円でリタイアした人の末路という視点の記事があります。

青木:ふむふむ。

:この記事中で投資している方法が、VIXのショートと呼ばれるものです。VIXは恐怖指数と呼ばれていて、「市場が暴れる、変動するレベル」を意味しています。世の中の人たちは、金融危機や欧州危機などが起こると、恐怖を感じるので数値が変動しますよね。

青木:変化に恐れは感じますが、リスクを取ることに面白みを感じる人もいますよね?

:ショートというのは、それに逆らう力なので「俺は怖くないぜ」「俺はそのリスクを取ってるぜ」というタイプの人たち向けの商品です。恐怖指数の逆で、「怖く無い指数」ですね。上記の記事によれば、毎年5割は儲かるみたいなものもあったみたいですが、もちろんそれには逆側の怖さもあるはずです。例えば、今回の商品の場合、資産1億円を突っ込んでいたとしたら、400万円になっていたわけです。

青木:1億円が400万円...。

:今回みたいに大きな相場変動が起きた時、事後的にいろんな説明が出てきます。しかし、株式市場では、自動で売買をするアルゴリズム取引を行う投資家が多くみられます。そこではある程度損を出したら、一回損切りのために売る、という設定も多く見られます。そうすると、かなり程度下がった時にはみんなが売り始めて、売りばかりの状況が発生し得ます。

青木:確かにそうですね。

:特に法則があるわけじゃないですが、数年に一回はアルゴリズムがショックをもたらしていて、最近はAIが暴走したと説明されることもあります。でもそれは何も新しくはなくて、1987年のブラックマンデーの頃から言われてきたことなんです。別に新しいものではないのに、市場を説明する人が、新しい要因として取り上げることが多いんです。だけど、1987年頃から起こっていることで、急にこういう風に動くことというのは珍しくはないんです。

青木:ということは、それを認識しておくことが大事なんですね...。

:良くあるからこそ、そういう時に焦げてしまわないような資産形成をやりましょうというお話ですね。

今月の瀧的ニュース

イギリスに行った話

青木:最後のおまけコーナー名は「今月の瀧的ニュース」にしようと思っています。

:もうなんでもいいですよ。

青木:(笑)。大好評なので、あと少しお話聞かせてください。2月の個人的ニュースをお願いします。

:先日イギリスに行ったんですよ。二泊だったんですが、現金を使わずに帰ってきました。

青木:おお。イギリスの方がFintechは進んでましたでしょうか?

:そうですね。そもそもお金を使う機会があまりなかったんですが、イギリスにはオイスターカードというものがありまして。

青木:あれ...香港はオクトパスカードでしたよね。イギリスはオイスターなんですね...。

:(笑)。牡蠣を選ぶセンスって何なんでしょうね。イギリス人は、そんなに牡蠣は食べる印象はないんですよ。日本はペンギンなので、日本だけ食べられないやつですね。

青木:なぜペンギンなのかも気になりますね。香港の人は、タコをよく食べるんでしょうか?

:香港では、タコは縁起物なんです。末広がりで、ものすごく縁起がいいとされています。八本足、「8」の数字が入ると良い名前だと言われるんです。

青木:おお。なるほど、面白いですね!

イギリスのオイスターカードは換金できるのが素晴らしいなと。購入して48時間経つと残高を換金できます。換金可能なので、強気にチャージできて、やっぱり帰る時にヒースロー空港で換金したんですが、これは日本でも真似てほしいと思いました。

青木:それは非常に便利ですね。

:日本だと制度上できないとされるんですよね。出張の経費精算に必要なのでイギリスの駅窓口で利用履歴を出してもらったんですが、履歴を分単位で出してくれるのには感動しました。

青木:分単位はすごいです。日本は日付までしか出していないですよね。

:そうなんですよ。ただ、念のため100ポンドだけ海外対応しているカードを使って現地のATMでお金を引き出し、あとは家からポンドを少し持って行きました。出張の最後にちょっと時間が余ったので、ナショナルギャラリーに行ったんですが、荷物を預かってもらうため、受付で家から持ってきた古いポンドを出したら、「このお札は使えませんし、銀行に行かないと取り替えられません」と言われたんです。

新しく両替したお札は使えたんですが、これはインドと同じことが起きているなと。しばらくイギリスに行かなかった自分が悪いのかもしれないけど、銀行に行かないと持っていたお札が使えなくなるという。

青木:日本ってそこは寛容な気がするんですが…?

:日本は今も旧1000円札とかはレジ等なら使えるはずです。でも、英国ではそれを制限していて。とはいえ、このお金どうしようとなって...。

青木:どうしたんですか?

:ナショナルギャラリーって入館無料なんですが、館内の至る所に「10ポンド寄付してくれると嬉しいな」と書いてあったので「古いお札でもいいですか」と聞いたら、それはOKだったんですよ(笑)。古いお札とかで寄付を受け取るのはありなんだなと。

古いお札と新しいお札は、どちらも同じお札なので価値は変わらないはずです。10ポンドはどちらも1700円程の価値だと思いますが、銀行で交換が必要なお金じゃなかったら気前良く出したかなっていうと...ちょっと出し渋ったかもしれない、と思ったんですね。寄付分の10ポンドと荷物を預けるための3ポンドが唯一現金支出でしたという話でした。


溶けゆくアイスは不安の象徴という話

:あ、最後にアイスが溶けそうだった話、2分だけいいですか。

青木:お願いします。

:先日、新宿のmirai talkの近くを寄ったので、アイスを差し入れようと思ったんですよ。何人いるかわからないから奮発してたくさん買ったんですね。それで金田さんに「今いる?」ってチャットしたらレスがなくて...。

青木:まさか...。

:金田さんのチャットのアイコン横に「木・日は定休日です」と書いてあって、その日は金曜だったのですがレスはなくて...。これ、もしも渡せなかったらやばいなと。手元に常温のアイスクリームがあって、持っていく先がない時って人間はすごく辛い気持ちになるんだなと。

青木:た、たしかにそれは辛いですね。

:結論からいうと、営業はしてたんですが。

青木:よかったですね...。

:着く直前までに、ビルの別の階の人に「美味しく召し上がってください」って言っても毒入りだと思われるかもしれないし、どうすれば良いんだろう...とか、いろいろ考えて。

この「アイスがじわじわ溶ける」という話は、人類がなぜ半分こをするのかっていうと、すごく密接な関係があるんですよ。

青木:え、そうなんですか。

:ゲーム理論で繰り返しゲームと呼ばれるものですが、アイスがちょっとずつ溶ける時に、交互に2人が食べられる量を提示して交渉をするというシチュエーションがあるとします。「青木さんさ、1/10を食べていいよ」「それは少ないです。瀧さんこそ2/10でどうですか」と。交互に折り合うまで提案を行う形です。

もし1回こっきりで全部アイスが溶ける場合だと、僕が青木さんに「1%だけあげる」って言っても、青木さんは次のターンにはアイスがなくなるから「ないよりはマシだ」と受け入れますよね。

青木:ふむふむ。

:じゃあ毎回、半分に溶けるとするとどうするのか。仮に2回のターンしかない場合には、青木さんは最大でも25%しか食べられないので、瀧は25%を提示することになります。

それで、極端な例ですが、沢山交渉するターンがあって、アイスがゆっくり溶けていくのだとしたら、人間は逆算して半分ずつを提案するようになるんです。人間は仲良いから半分こするんじゃなくて、お互いを信頼してなくても、自分の幸せの最大化のために半分こするんですよ。

青木:た、たきさん、難しいです。わかるようでわからないような...。

:(笑)。要はお互い折り合わなくて0になるくらいなら、最初から半分こして分けようって決めるっていう話です。

青木:あ、なるほどです!

:じわじわ溶けるアイスを前にそれを思い出しながら、溶けゆくアイスって不安の象徴なんだなというのを、写真を撮りながら考えてたっていう話です。

青木:差し入れがクッキーだったらそうは思わないですもんね。

:そうなんですよ。アイスを差し入れるのはリスクがあると。

青木:気をつけます。今月もありがとうございました。

:ありがとうございました。次は何話そうかな...。

青木:(笑)。

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