連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第20弾のテーマは、研修との向き合い方です。会社から提供される研修は色々ありますが、「受けて終わり」になっていないでしょうか。自らAI研修を提供する立場でもある安武さんに、研修というものとの向き合い方を聞きました。
ー会社が用意する研修は、本音のところどれくらい身につくものでしょうか?
ほとんどの研修は「受けて終わり」になりがちだと思っています。
研修って、受けている最中は「なるほど」と思うんですよ。でも1週間後にはもう内容を覚えていない。研修を担当した部署は「今年も実施しました」で満足してしまうし、受けた本人も「受けたから大丈夫」くらいの感覚で終わってしまう。これ、自分がやっているAI研修に限った話じゃなくて、会社が用意する研修全般に言える気がしています。
ー具体的に、どういうことが起きているんでしょうか?
研修って、体系的に型を学べる場なんです。ゼロから始める人が最短で「わかった状態」になるには、すごく有効だと思います。
でも、「わかった」と「できる」は別物なんですよね。これはAI研修でも、マネジメント研修でも同じです。研修で聞いた型を、実際の場面で思い出して使えるかどうか。1on1で部下への伝え方に迷ったときに、研修で習った聞き方を実際に試してみる。グレーな言動を見かけたときに、ハラスメント研修で学んだ対応を実際にやってみる。そこまでやって、ようやく自分のものになる。研修を受けた直後の「わかった」で止まっている人が、正直かなり多いと思っています。
研修の内容そのものが悪いわけじゃないんです。多くの研修って、知識として教えることはすごく丁寧にやっている。ただ、その知識を実際の場面で引っ張り出して使う練習までは、研修の中に組み込まれていないことがほとんどではないでしょうか。そこが抜け落ちたまま「研修は実施した」で止まってしまう。
ー安武さんが一番詳しいのはAI研修だと思いますが、そちらではどう実践しているんですか?
やり方はシンプルで、AIの活用方法を発信しているアカウントをSNSでフォローして、気になったものを保存する。それを実際にClaudeに渡して試してみる。うまくいったら、Claudeと壁打ちして「これ本当に自分の仕事で使うか」を確認する。このループを回しているかどうかで、半年後の引き出しの数がまるで違ってきます。
研修って、作った瞬間から情報が古くなっていくものでもあって。以前にも少し話しましたが、自分で60本くらいAI研修の動画を作ったことがあります。ああいうものも、公開してしばらく経つと、ツールの方がどんどん新しくなっていくので、内容が追いつかなくなる瞬間が来ます。
一方で、SNSで流れてくる情報は、使った人が翌日には投稿している。研修には絶対に載らない速度です。研修で基礎を作って、日常の中で鮮度を保つ。両方あって、はじめて実力になっていくんだと思っています。これはAI研修特有の速さの話ではあるんですが、マネジメント研修だって、本に書いてある理論と、実際に自分のチームで起きていることの間には、いつもズレがあるはずです。そのズレを埋める作業を、研修の外で自分でやっているかどうかだと思うんですよね。
ーそのループを回していて、失敗したらどうするんですか?
失敗してもいいと思っています。むしろ、失敗したところからが本番というか。
うまくいかなかったら、「何がダメだったか一緒に考えて」とそのままClaudeに投げ返す。そうすると、次は同じ失敗をしない形で返してくるので。一回で正解を当てようとするから、研修で聞いた通りにやって終わってしまうんだと思います。試して、外れて、直す。そこを繰り返せるかどうかが分かれ目です。
これもAIに限った話じゃなくて、マネジメント研修で学んだ接し方を実際の部下との会話で試してみて、うまく伝わらなかったら、周りの人に「どう言えばよかったと思う?」と聞いてみる。やっていることの中身は、結局同じだと思うんですよね。
ー会社としては、研修をやりっぱなしにしないために何ができますか?
研修を企画する側にも、やれることはあると思っています。
研修をやった後に、実際に使う場面をセットで用意しておく。1on1の型を教えたなら、その週のうちに実際の1on1で試してもらう。研修と実践の間を空けすぎないことが大事です。
あとは、研修を受けた人同士で「実際どうだった?」と話す場を作ることですね。うまくいった話だけじゃなくて、うまくいかなかった話も含めて共有できると、一人で抱え込まずに試し続けられる。失敗した経験って、意外と本人からは言い出しにくいので、場を用意する側が「失敗談歓迎です」くらいのスタンスを見せておく必要があると思っています。
研修を提供する側としては複雑な気持ちもあるんですけど、研修だけで完結すると思っている会社の方が、たぶん損してるんだろうなとは思います。研修を企画した人事の担当者も、本当はそこまで見届けたいはずなんですよね。実施して終わりにしたいわけじゃないと思うので。
ー若手へのメッセージをお願いします。
会社が用意してくれる研修を、受け身で消化するだけで終わらせないでほしいですね。
研修で聞いた話の中から、一つでいいので自分の仕事や普段の場面に当てはめて試してみる。うまくいかなかったら、なぜうまくいかなかったのかを誰かに聞いてみる。この小さな一歩を踏めるかどうかで、1年後の実力は全然違ってきます。
今日からできることで言うと、直近で受けた研修の内容を一つだけ思い出して、次にそれが活きそうな場面が来たら、実際に使ってみてください。うまくいったら、職場の誰かに「これ研修で聞いたやつ、実際試したらよかった」と話してみる。それだけで十分です。小さな共有が積み重なると、研修を企画した側にも伝わっていきますから。
会社から与えられた研修は、あくまで入口です。そこから先をどう歩くかは、結局自分次第なんです。
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安武さん、今回もありがとうございました。研修を売っている立場からの本音、なかなか聞けない話でした。次回のテーマもお楽しみに。
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