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【そねせん!第8回】ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう

こんにちは。ランサーズの曽根です。「そねせん」シリーズの第8回目です。ビジネス・ノウハウ編も、問題解決、プレゼンに続き中盤にさしかかってきました。

ビジネス・ノウハウ編はなぜかすべてテーマが4文字(ちなみに次も「プロマネ」と4文字です)なのがとても気になるんですが、それはまぁいいとして、ブレスト=ブレインストーミングです。プレゼンと同様、皆さんもビジネス上で少なくとも一度や二度はやったことがあるのではないかと思います。

でも、のちほど出てくる、ファシリテーションやホワイトボードとなると話は別。やったこと・使ったことがない方もいたりするのでは?と思ったりもします。未体験の方も、体験済みの方も、楽しい楽しいブレストの世界にさらに足を深く踏み入れていただくべく、ぜひご一読ください。


ブレストの極意。批判をしない。量で質を凌駕する。脳ミソの筋トレと心得る

毎度のことながら、Whyから始めます。なぜ、ブレストなのか?

イノベーションの重要性が説かれるようになって久しいですが、イノベーションという用語を定義したのは経済学者のシュンペーター。彼によれば、イノベーションとは「新結合」であるとのこと。

スティーブ・ジョブスの”Connecting the Dots”ではないですが、思いもしない組み合わせによって生まれる新しいアイデアがイノベーションにつながるのは気持ちいいですよね。

新結合たるイノベーションを生み出すプロセスを体系化したのが、いわゆる「デザインシンキング」の領域。世界的なデザインファームであるIDEOの『発想する会社!』が話題になったのが2002年ですから、なんだかんだずいぶんと言われ続けてますよね。

直近では2015年くらいから、戦略ファームが続々とデザインファームやデジタルエージェンシーを買収する動き*が出てきて、VUCA**と言われる時代の流れにおいて、世の中に価値を提供するうえでどんどんデザインやテクノロジーにが重要になってきているのだな、と感じます(BCT***の“C”や”T”の部分)。

* マッキンゼーによるLUNAR社の買収、アクセンチュアによるフィヨルド社の買収、博報堂傘下の戦略事業組織「kyu」によるIDEO社への出資、など)

** VUCA=Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもの。2010年代からビジネスの世界でよく使われるように

*** BCT=Business(ビジネス)×Creative(クリエイティブ)×Technology(テクノロジー)の頭文字をとったもの。下記の記事などを参照

https://industry-co-creation.com/icc-salon/74

「なぜブレストなのか?」という問いの答え。「時代がますますイノベーションを求めているから。イノベーションとは新結合により価値を生み出すこと。イノベーションを生みだすプロセスにおいてはブレストが不可欠だから。」ということだと思っています。

先ほど紹介したIDEOの著書の中で、「究極のブレインストーミング」という章において、よりよいブレストのための7つの秘訣や、ブレストを台無しにする6つの要素、が紹介されています。

たくさんありすぎて・・・と思いますよね。ぼくもそう思います。

ぼくもブレスト大好物なタイプなんですが、ブレストするときに特に気をつけているのは、「アイデアを数える」ということと、「ばかげたものを否定」しないということです。

とにかくたくさんアイデアを出す。時間を区切ってアイデアを出すかにコミットする。(=「いまから〇〇について30分で100個のアイデアを出そう」)

どんなアイデアでもいい。ブレストの最中に批判は絶対にしない。(=「△△という前提では?」「××と同じこといってない?」「□□は現実的に無理でしょ?」などは禁止)

「ブレインストーミング」は日本語にすると「脳内嵐」ということになりますが、ぼくの感覚的には「脳内荒らし」に近い感じかな、と。僕としてはよく「脳内スパーク」と呼んだりしてます。

筋トレをつむことで腹筋が6パックに割れるのと同じように、脳内筋トレをしまくって、ぜひ皆さんも脳ミソに火花を散らしましょう。


ファシリテーターがブレストの成否をわける。アイデアがたくさん出る場の空気をつくる

このブレインストーミングを成功させるうえで、ファシリテーターの役割はとても重要です。重要というか、ブレストの成否を決めるのはほぼこのファシリテーターである、といっても過言ではありません。

たとえば、今から「次世代の名刺のあり方」についてのアイデアブレストをやるとします。参加人数は6人(個人的には、6人がブレストにとってベストと思っています)。

さあ、「今から議論始めよう」となってふと周りを見渡すと、みんながじっと自分のことを見ている。「え?オレ?」そうです。あなたが仕切り役です。

おもむろに席を立ちあがり、ホワイトボードの前にとりあえず立つ・・・さあ、皆さんならどのようにこのブレストを仕切りますか?

ぼくがブレストをファシリテートするときに、アイデアがたくさん出るような場の空気をつくるためにいつも気をつけていることは以下のようなものです。

最初にルールを明確にする:当たり前のように思えてないがしろにされがちなのがこれ。たいていの人が、1つのアイデアについて説明しすぎたり、ばかげたアイデアを出すのを躊躇したりするので、最初にルールを明示することが大事
参加者の意識を集中させる:「脳内スパーク」をおこすためには、参加者のその場への100%の集中が必要。スマホ・PCは閉じて、場合によってはあえて「いま〇〇が気になってます(がこれから集中します)」と宣言してもらったり、いちど椅子から立つなどして体を動かしてもらったりする
よい質問で議論を加速させる:アイデアがある程度出てきてから、ふと議論が硬直する時があります。そんな時に、前提条件を変えて別のアイデアをうながしたり、小さなバリエーションを持ち出したりして議論のギアを変えることが重要。「△△みたいな切り口で考えてみてはどうですかね?」「××以外の方法ってあるんですかね?」など
制限時間を利用して参加者を煽る:「アイデアを数える」ことが重要と書きましたが、まさにその効果は終盤に現れてきます。アイデアの数がホワイトボードや模造紙などの密度になってあらわれてくる中で「最後あと5分でアイデア10個出しきりましょう!」というような「煽り」をいれて、参加者チームラストスパートをします。

どうでしょうか?そもそもファシリテートなんてやったことがない・やりたいとは思わない、という方もいるかもしれません。

が、アイデアをたくさん引き出すことのできるファシリテーターの存在は本当に貴重です(感覚的には、オーケストラの指揮者みたいなものでしょうか)。ぜひ勇気をもってその役を買ってでてみましょう。


ホワイトボードドリブンはエンタメ。リアルタイムにアウトプットを演出する

ブレストをするときに欠かせないのがホワイトボード。

模造紙や付箋などを併用するケースもあるかと思いますが、ぼくの経験上、ブレストするうえでベストは壁一面がホワイトボード化されているような状況です(ランサーズでも、いつでも議論できるようにすべての会議室の壁はホワイトボード化(もしくはブルーボード化)されています)。

このホワイトボードに、並々ならぬ情熱と執着を見せるランサーズCTOの横井をぜひ紹介したいと思います。

https://www.wantedly.com/companies/lancers/post_articles/64527


彼曰く、ホワイトボードドリブンは「サービスでありエンターテインメント」。

たしかに、シンプルな図形を使いながらたくみにしゃべりながらノールックで描く彼のホワイトボードドリブンな議論に進め方は、社内でも一種サービス化しています。

彼がホワイトボードの前に立つと、参加者の期待が異常なまでに高まります。

ランサーズの経営会議でも「ホワイトボードドリブン」は会議wayのひとつとして明文化されていますが、あらためて、なぜホワイトボードドリブンなのか。これを要素分解すると以下のようになると思います。

参加者の意識が同じ方向に向く:単純ですがこれ実は重要。参加者同士が向き合う円型やコの字型の席配置だとどうしても他人への攻撃や批判が出がち。参加者がみなホワイトボードに意識を集中する弓形・円弧型の配置になると、不思議と人ではなくコトに向かうことができるようになります。
リアルタイム・ライブ感がます:前回のプレゼンで紹介したメラビアンの法則でも視覚情報が重要といいましたが、アイデアがどんどんビジュアル的にアウトプットとして見えるようになってくるのは、単純に参加者の気持ちをワクワクさせます。ビジネスにおける即興芸術、音楽でいうとジャズみたいな感じですね。
納得感があり合意形成が得やすい:ホワイトボードの前のブレストではみな平等。同じルールのもとみんなで議論したものが可視化されて、その中でアイデアや方向性がかたまっていくので、「あれ?結局どういう結論なんだっけ?」とか「いや、私の意図はそうじゃない」といったような議論が起こりにくくなります。

「ホワイトボードドリブン」は参加者の一体感をつくってアウトプットを演出するという点において、たしかに、ビジネス上のある種のエンターテインメントなのかもしれませんね。


今回のポイント

というわけで今回のまとめです。

ブレストの極意。批判をしない。量で質を凌駕する。脳ミソの筋トレと心得る
ファシリテーターがブレストの成否をわける。アイデアがたくさん出る場の空気をつくる
ホワイトボードドリブンはエンタメ。リアルタイムにアウトプットを演出する

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。いろいろ書きましたが、本当に伝えたいのは、「ブレストはとにかく楽しい!」ということと、「ブレスト筋を鍛えましょう!」ということです。場所を変えて転地効果をはかってブレストするのもいいですが、日々のビジネスシーンの中にブレストを組み込み、ぜひ日常的な習慣にしてみてください。

次回は、プロマネについて書きたいと思います。プレゼン、ブレスト、プロマネと続いた横文字4文字のノウハウ3大天はこれにて完結です(ビジネス・ノウハウ編の最終回は生産性について書きます)。今回に続きCTO横井が登場する予定なので、予告まで。

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


これまでのバックナンバー

【キャリア編】
第1回:キャリアを「えらぶ」のではなく「つくる」方法―キャリアの「タグ化」のすすめ
第2回:市場価値の磨き方―ステージ×役割でとらえるキャリア論
第3回(前編):1億総デザイン社会の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする
第3回(後編):1億総デザイン社会の未来―働き方は、よりフリーに、スマートに、クリエイティブに
第4回:成長は失敗を糧に―非連続な成長は、アンラーニングと意識の変革から
第5回:「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ


【ノウハウ編】
第6回:「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決―ポジティブ思考でいこう
第7回:「伝わる」プレゼン―聞き手が「自分ごと化」できるストーリーをつくる
第8回:ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう
第9回:SMARTなゴール設定と早めのトレードオフ決断でプロマネを成功させる
第10回:知的生産性の上げ方―時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする


【事業編】
第11回:「4次元チェス」的戦略―不確実な未来のシナリオに、骨太な仮説をそえて
第12回:『新規事業のつくり方―アセットを活用するか、リーンに立ち上げるか』
第13回:予算計画のつくり方―楽観と悲観、経営と現場を反復横跳びする
第14回:本質的なKPIをモニタリングし、計画と予測の「ギャップを埋める」
第15回:M&A、それは究極の意思決定。PMI、なんて深淵な人間ドラマ


【経営/組織編】
第16回:ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン
第17回:強い言葉で行動指針をつくり、模倣困難なカルチャーづくりに投資する
第18回:安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる
第19回:マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ
第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る


【番外・総集編】
番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方

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