人事におけるAI活用とは?メリットと導入のステップ、注意点を解説

人事におけるAI活用とは、採用や人材配置、労務管理など人事領域の業務にAI技術を取り入れ、判断の質やスピードを高める取り組みです。近年、少子高齢化による人手不足を背景に、多くの企業が定型業務の効率化やデータに基づく意思決定への活用を進めています。
本記事では、人事分野でAI活用が広がっている背景から具体的な活用シーン、導入時の注意点、実践的な導入の4ステップまでを分かりやすく解説します。
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人事のAI活用はどこまで進んでいる?

人事領域のAI活用は、企業によって取り組みの進み具合や対象業務に差があります。特に現在は、AIに判断を任せるのではなく、人事担当者の業務効率化や意思決定を支援する目的での活用が中心です。

ここでは、経団連の調査データをもとに、人事におけるAI活用の現在地を整理します。

AIは「代替」ではなく「意思決定を支援する道具」

AIは人事担当者に代わって合否や評価を決定する存在ではありません。あくまで判断材料を提示する役割にとどまり、最終的な意思決定は人が行うというのが基本的な位置づけです。

この前提を見誤ると、AIへの過度な依存や、判断結果に対する責任の所在があいまいになりかねません。

人事領域で扱われるAIは、大きく二種類に分けて考えると整理しやすくなります。ひとつは応募者の適性を予測したり、蓄積されたデータを分類・スコアリングしたりする従来型AIです。

もうひとつは文章や提案を自動で生成する生成AIで、求人票の下書きやフィードバックコメントの作成支援などに向いています。両者は仕組みも得意な業務も異なるため、目的に応じて適切に使い分ける必要があります。

企業によって活用の深度に差がある

AI活用は広がっているものの、その進み具合は企業によって大きく異なります。

一般社団法人日本経済団体連合会の調査では、AIを「複数の業務プロセスで広く活用」している企業が46%でした。一方、「一部の部署・業務に限定して活用」している企業は24%、ChatGPTやCopilotなどの生成AIツールの利用を許可する段階にとどまる企業は23%となっています。

活用レベル割合
複数の業務プロセスで広く活用46%
一部の部署・業務に限定して活用24%
生成AIツールの利用を許可する段階23%

出典:一般社団法人日本経済団体連合会「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」

これらの回答からは、多くの企業が何らかの形でAI活用に着手していることがうかがえます。

ただし、その中身は同じではありません。全社的な業務基盤としてAIを活用している企業がある一方で、特定の部署や担当者がツールを試している段階の企業もあります。

そのため、「AIを活用している企業」という数字だけでは、自社と他社の取り組みを単純に比較することはできません。まずは、自社がどの業務でどの程度AIを活用できているのかを把握し、その段階に応じて次の取り組みを考えることが重要です。

人事はAI活用が進んでいる領域

社内の各部門の中でも、人事部門はAI活用が進んでいる領域です。前出の経団連調査では、回答企業75社のうち49社が、人事領域で何らかの形でAIを活用していると回答しています。

人事業務の中でも、活用状況には差があります。最も多かったのは採用の25社で、労務管理が22社、エンゲージメントサーベイが21社と続きます。人材育成は20社、人材配置と人事評価はそれぞれ13社、報酬は5社でした。

業務領域活用企業数(回答75社中)
採用25社
労務管理22社
エンゲージメントサーベイ21社
人材育成20社
人材配置13社
人事評価13社
報酬5社

出典:一般社団法人日本経済団体連合会「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」

この結果からは、採用や労務管理など、一定の手順に沿って処理したり、多くのデータを扱ったりする業務でAI活用が進んでいることが分かります。一方、人材配置や人事評価のように個別の事情を踏まえた判断が必要な業務では、活用企業数が比較的少なく、慎重に導入が進められていることがうかがえます。

人事領域でAIを導入する際は、すべての業務を一度にAI化するのではなく、業務の性質や導入目的に応じて活用範囲を検討することが重要です。
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人事分野でAI活用が広がる背景

人事分野でAI活用が広がっている背景には、国内の労働力不足や生産性向上への期待があります。また、海外と比べると日本の活用にはまだ差があり、今後の導入余地も大きいと考えられます。

ここでは、国内の労働環境の変化と国際比較の二つの視点から、AI活用が進む背景を見ていきましょう。

労働力不足と生産性向上への期待

人事分野でAIへの期待が高まる背景の一つが、労働力不足です。少子高齢化によって採用競争が激しくなるなか、限られた人員で業務を効率的に進め、生産性を高める手段としてAIが注目されています。

経団連の資料でも、AI導入に期待する効果として「単純なタスクからの解放」と「労働生産性の向上」が、それぞれ82.5%と高い割合で挙げられました。「社員がより高度な業務に集中できる」という回答も72.1%に上っています。

こうした結果からは、AIを単に作業時間を減らすためのツールとしてではなく、人事担当者がより付加価値の高い業務に時間を充てるための手段として捉えている企業が多いことがうかがえます。定型業務をAIで効率化することで、採用候補者との対話や人材戦略の検討など、人が担うべき業務により多くの時間を振り向けることが期待されています。

出典:一般社団法人日本経済団体連合会「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」

諸外国と比べた日本の活用状況

海外と比較すると、日本の人事領域におけるAI活用はまだ発展途上の段階にあります。

経団連の資料によれば、アルゴリズム管理ツールを導入している企業の割合は、米国90%、フランス81%、ドイツ78%に対し、日本はわずか40%にとどまっています。

特に差が際立つのが評価分野です。「良い仕事への評価」にAIを活用している割合は米国83%に対し日本は5%、「労働者への目標設定」でも米国74%に対し日本は9%と、いずれも大きな開きがあります。

この差が生まれる背景には、雇用制度の違いが関係していると考えられます。成果や役割が明確に定義されるジョブ型雇用を前提とする海外に比べ、日本では評価基準そのものが定量化しにくく、AIが扱えるデータとして整理しづらいという構造的な事情があるのです。

そのため、AIによる評価や目標設定を進めるには、AIツールを導入するだけでなく、そもそもの評価基準や業務プロセスをどのように整理するかも重要になります。

出典:一般社団法人日本経済団体連合会「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」

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人事業務におけるAI活用のメリット

人事業務にAIを取り入れることで得られる効果は、単なる時短や省力化にとどまりません。では、実際にどのようなメリットがあるのか、日々の業務の現場に即して具体的に見ていきましょう。

・日常的な定型業務の効率化と工数削減
・データに基づく意思決定力の向上
・制度設計・見直しへの活用

日常的な定型業務の効率化と工数削減

AIが得意とするのは、手順が決まっていて繰り返し発生する業務です。選考書類のフォーマット確認や、社員から寄せられる制度に関するFAQ対応、面接や研修の日程調整など、人事の仕事には毎日のように繰り返される定型業務が数多く存在します。

こうした業務はAIとの相性がよく、任せることで担当者の負担が大きく軽減できます。人が一件ずつ対応する場合と違い、AIは処理のスピードが速いうえ、深夜や休日といった時間帯を問わず動き続けられる点も強みです。結果として生まれる余力は、単なる休息時間ではなく、候補者や社員と向き合う対話の時間、あるいはより専門性の高い判断業務へと振り向けられます。

定型業務の削減は、それ自体が目的ではなく、人にしかできない仕事に集中するための土台づくりだと捉えると理解しやすいでしょう。

データに基づく意思決定力の向上

AI活用の効果は、勘や経験に頼りがちだった判断に、客観的なデータの裏付けを加えられる点にあります。人事の現場では、長年にわたって担当者の勘や経験に頼った判断が根強く残ってきましたが、AIを活用すれば、蓄積された人事データをもとに、より客観的な根拠を持って判断が下せるようになります。

同じ評価基準や分析ロジックを一貫して適用できるため、担当者によって評価の目線がぶれるといった事態も起きにくくなるでしょう。加えて、離職につながりやすい兆候や、部署間で生じているスキルのギャップなど、日々の業務のなかでは見過ごされがちな傾向も、データ全体を俯瞰することで少しずつ浮かび上がってきます。

感覚だけでは気づけなかった課題を早い段階で捉えられることは、人事施策全体の精度をじわじわと底上げしていく力になっていきます。

制度設計・見直しへの活用

AIは、制度そのものを設計するのではなく、制度見直しの材料となるデータ分析を担う役割です。エンゲージメントサーベイなどで集めたデータを分析し、評価制度や労務制度の課題を把握する際にも活用できます。

たとえば、回答結果を項目ごとに手作業で確認する代わりに、AIにデータの傾向や関連性を分析させることで、どの項目に課題があるのかを効率的に整理できます。分析結果をもとに、制度を見直すべきポイントを具体的なデータとともに検討しやすくなるでしょう。

また、他社の制度事例や業界のベンチマークデータを調べる際にもAIが活用できます。AIに情報を整理させてたたき台を作り、自社の状況と照らし合わせながら検討することで、情報収集にかかる時間が抑えられます。

AIに分析や情報整理を任せることで、人事担当者は制度そのものの課題や改善策を検討する時間を確保しやすくなります。ただし、AIが示した分析結果をそのまま採用するのではなく、自社の状況に照らして妥当性を確認したうえで制度設計に反映することが重要です。

人事業務におけるAIの活用シーン

人事業務のなかでも、AIがどのように使われているかは業務領域によって異なります。ここでは採用から人事評価まで、業務ごとの実際の活用シーンを具体的に見ていきましょう。

業務領域主な活用シーン
採用・応募書類・録画面接の内容をAIで分析し、一次選考の参考情報を提示
・面接内容の要約、フィードバックや引き継ぎ資料の作成
・求人票やスカウト文面の下書き作成
人材配置・社員の職務経験やスキル、志向性などのデータ分析
・異動先の候補者やキャリアパスの検討
人材育成・1on1面談などの会話内容の整理・要約
・学習履歴やアンケート結果をもとにした研修・社内制度のレコメンド
労務管理・就業規則や社内制度に関する問い合わせへのAIチャットボットによる一次対応
・勤怠・給与関連の書類作成やデータ入力の支援
人事評価・評価コメントや成果の要約文の下書き作成
・評価者ごとの評価基準のばらつきや評価傾向のチェック

採用

採用の現場では、応募書類や録画面接の内容をAIが読み込み、一次選考の参考情報として提示する使い方が広がっています。面接官がすべての情報に目を通す前段階として、AIが着眼点を整理してくれる形です。

面接そのものについても、話した内容をAIが要約し、面接官へのフィードバックや、次の選考担当者への引き継ぎ資料の作成に役立てる動きが出てきました。また、求人票やスカウト文面の下書きをAIに作らせ、担当者がそれをたたき台に仕上げていくという使い方も一般的になりつつあります。

経団連の調査でも、採用領域における活用内容としては「応募者スクリーニング」と「面接サポート」が上位に挙がっており、選考プロセスの初期段階での活用が先行している様子がうかがえます。

なお、採用領域でのAI活用については、メリットや注意点、導入のステップを含めて以下の記事でより詳しく解説しています。
【関連記事】スカウト文のAI生成と返信率アップのコツ
【関連記事】AI面接の仕組みと導入時の注意点

人材配置

人材配置では、社員の職務経験やスキル、本人の志向性などのデータをAIで分析し、異動先の候補やキャリアパスを検討する際に活用できます。

これまで担当者の経験や記憶をもとに検討していた配置に、社員データという新たな判断材料を加えられる点がAI活用のメリットです。たとえば、社員のスキルや経験と各ポジションに求められる条件を照らし合わせ、候補となる人材を絞り込むといった使い方が考えられます。

ただし、AIが示した候補をそのまま異動や配置に反映するのではなく、あくまで検討材料として活用することが重要です。適性や本人の意欲、キャリアに対する考え方など、データだけでは捉えにくい要素もあるため、部門間の調整や最終的な判断は人事担当者が担います。

AIによるデータ分析で候補者の検討を効率化し、その結果を人による判断につなげることで、人材配置の精度と業務効率の両方を高めることが期待できます。

人材育成

人材育成の場面では、1on1面談などの会話内容をAIが整理・要約し、上司が振り返りやフィードバックを行う際のサポートに使われるケースが増えています。話した内容をその場で記録し直す手間が省けるぶん、対話そのものに集中しやすくなるという声も聞かれます。

また、社員の学習履歴やアンケートの回答結果をもとに、AIが個々人に合った研修内容や社内制度をレコメンドする活用方法もあります。

これまでは工数の制約から一律の研修にとどまりがちだった育成施策を、一人ひとりの状況に合わせて調整しやすくなった点は、AI活用がもたらした変化のひとつです。少人数の担当者では手が届きにくかった、きめ細かな支援が現実的な選択肢になりつつあります。

労務管理

労務管理では、就業規則や社内制度に関する社員からの問い合わせに、AIチャットボットが一次対応する仕組みが広がっています。

よくある質問への回答をAIに任せることで、労務担当者は個別対応が必要な相談に時間を割きやすくなります。また、勤怠や給与に関わる書類作成、データ入力といった作業についても、AIによる支援を取り入れる企業が増えてきました。

細かなミスが起きやすい入力作業をAIが下支えすることで、確認作業の負担も軽くなります。ただし、AIだけで完結できる範囲には限りがあり、判断が難しい複雑な相談は人事担当者へつなぐ設計にしておくのが一般的です。窓口としてのAIと、最終的な相談先としての人、という役割分担を明確にしておくことが、運用の鍵を握っています。

人事評価

人事評価の場面では、評価コメントの下書き作成や、目標に対する成果を整理した要約文の作成など、評価者にとって負担の大きい文章作業をAIが支援する使い方が広がっています。

ゼロから文章を組み立てる手間が減ることで、評価者はより本質的な内容の検討に時間を使えるようになります。もうひとつの活用方法として、評価者ごとの基準のばらつきや、極端に厳しい、あるいは甘い評価傾向がないかをAIにチェックさせるという使い方もあります。

人の目だけでは気づきにくい癖が数値として表れることで、評価者本人が自らの傾向を見直すきっかけにもなります。評価の公平性は組織全体の納得感に直結するだけに、こうした客観的なチェック機能への注目は今後も高まっていくと考えられます。

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人事業務にAIを導入する際の注意点・リスク対策

AIの活用にはメリットだけでなく、見過ごすと社員や候補者の不利益につながりかねないリスクも伴います。ここでは、導入を検討する前に押さえておきたい注意点を整理していきます。

・バイアス・公平性の確保
・個人情報・セキュリティの確保
・最終判断は人が行う体制設計

バイアス・公平性の確保

採用や人事評価にAIを活用する場合は、AIの判断に偏りが生じていないかを継続的に確認することが重要です。過去の採用・評価データに偏りが含まれていると、AIがその傾向を反映し、特定の属性の人に不利な結果を出す可能性があります。

対策として、性別や年齢などの属性情報を必要に応じて入力対象から外すことも考えられます。ただし、属性情報を直接使わなければ偏りを防げるとは限りません。ほかのデータから属性との関連性が生じるケースもあるためです。

こうしたリスクを防ぐには、AIの導入時だけでなく、実際の出力結果も継続的に検証する必要があります。たとえば、採用候補者の選定や評価結果に特定の属性による偏りが生じていないかを定期的に確認し、問題が見つかった場合にはデータや評価基準、AIの利用方法を見直します。

AIの判断をそのまま採用するのではなく、人事担当者が結果を確認し、必要に応じて修正できる仕組みを設けることが、公平性を確保するうえで重要です。

個人情報・セキュリティの確保

人事データには、給与や評価、健康状態など機微な情報が数多く含まれます。そのため、AIに入力するデータは必要最小限にとどめ、人種や病歴などの配慮が必要な個人情報については、個人情報保護法などの関連法令や社内規程を確認し、入力の必要性や可否を慎重に判断することが重要です。

あわせて、利用するAIツールを会社が指定したものに限定し、誰がどの範囲までアクセスできるかをIT・DX部門と連携しながら管理する体制も有効です。

個々の担当者の判断で自由にツールを使い分ける状態を放置すると、情報の流出や意図しない外部学習といったリスクにつながりかねません。ルールと管理体制の両輪で運用することが、安全なAI活用の土台になります。ツールを選ぶ段階から、こうした視点を織り込んでおくとよいでしょう。

最終判断は人が行う体制設計

AIが示す判断は、あくまで参考情報の域を出ません。AIは、入力された情報や利用しているデータ、設定された評価基準などに基づいて処理するため、人事担当者が把握している個別事情まで含めて判断できるとは限りません。

特に採用や評価は、社員や候補者の処遇に直結する判断です。AIの出力をそのまま最終結果として扱ってしまうと、判断を誤った際に本人の不利益につながる可能性があります。

人柄や意欲、個別の事情といった数値化しにくい要素を見極めるのは、依然として人にしかできない領域です。AIが提示した情報を踏まえたうえで、最終的な確認と判断は人が行うという体制を、あらかじめ設計しておくことが必要となります。AIをどこまで信頼し、どこから人が引き取るのか、その線引きを明確にしておきましょう。

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人事業務にAIを導入する4ステップ

人事業務へのAI導入は、いきなり全社展開するのではなく、段階を踏んで進めることでリスクを抑えながら定着させやすくなります。ここでは具体的な4つのステップを紹介します。

1. 課題を整理し、AI活用のロードマップを描く
2. 業務を限定してテスト導入を行う
3. 運用ルールと評価基準を整える
4. 効果を検証し、対象範囲を広げる

ステップ1|課題を整理し、AI活用のロードマップを描く

最初のステップは、自社の課題を洗い出し、AI活用の道筋を描くことです。採用、人材配置、人材育成、労務管理など、業務領域ごとにどこで負担やボトルネックが生じているかを整理していきます。

日々の業務のなかで「時間がかかりすぎている」「担当者によって対応にばらつきがある」と感じる部分を、具体的に洗い出すところから始めるとよいでしょう。

課題が複数見つかった場合は、すべてに同時に着手しようとせず、効果が見えやすい定型業務から優先的に取り組める順番をつけることがポイントです。そのうえで、「何を」「どこまで」AIに任せるのかを大まかに決め、着手する順番を示すロードマップとして整理しておくと、後の工程での判断に迷いが生じにくくなります。

ステップ2|業務を限定してテスト導入を行う

次のステップでは、対象となる部署や業務を限定してAIを試験的に導入します。最初から全社に展開するのではなく、特定の業務で実際に使いながら、効果や運用上の課題を確認することが重要です。

人事部門では、採用、労務、人材開発など担当する業務が分かれているケースもあります。まずは、その中からAIによる効率化の効果を測りやすく、業務への影響も限定できる領域を選ぶとよいでしょう。

テスト導入では、作業時間がどの程度短縮されたか、担当者の負担が軽減されたか、AIの出力に修正がどの程度必要だったかなどを確認します。あわせて、情報管理や担当者間の運用ルールなど、実際に使って初めて分かる課題も洗い出します。

こうした検証を踏まえて運用方法を改善し、十分な効果と安全性を確認できた段階で、対象業務や部署を広げていきます。

ステップ3|運用ルールと評価基準を整える

テスト導入で見えてきた課題を踏まえ、AIを継続的に活用するための運用ルールと評価基準を整えます。具体的には、AIによるバイアスへの対策、個人情報の取り扱い、AIの出力をもとに最終的な判断を行う担当者などを明確にしておきましょう。

あわせて、従業員や採用候補者に対して、AIをどの業務で、どのような目的で利用しているのかを説明することも重要です。AIによる判断や分析が本人の処遇に関わる場合には、利用範囲や人による確認の有無なども含めて、適切に周知する必要があります。

ただし、必要なルールは業務によって異なります。採用や人事評価のように個人の処遇に関わる業務と、社内文書の作成を補助する業務では、求められる管理の水準も同じではありません。扱う情報の機微性やAIの出力が与える影響を踏まえ、業務ごとにルールを設定することが大切です。

テスト導入で得られた知見を反映しながら、実際の業務に無理なく適用できるルールへ整えていきましょう。

ステップ4|効果を検証し、対象範囲を広げる

最後のステップでは、テスト導入の効果と課題を検証し、問題がなければ対象となる業務や部署を段階的に広げます。

検証するのは、作業時間や工数の削減といった定量的な効果だけではありません。担当者がAIを使いやすいと感じているか、出力結果をどの程度修正する必要があるか、業務への負担が増えていないかなど、現場の反応も確認します。数値上は成果が出ていても、担当者が使いにくさを感じていれば、継続的な活用につながらない可能性があるためです。

効果と運用上の課題を確認したうえで、問題がなければ対象範囲を広げていきます。その際、テスト導入で整えた運用ルールや評価基準、そこで得られた知見を次の業務にも活用すると、同じ課題を繰り返すことを防げます。

一つの部署や業務で得た経験を蓄積し、次の導入に反映することで、AIを活用できる業務の範囲を段階的に広げていくことができます。
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人事のAI活用に関するよくある質問

人事へのAI活用を検討するなかで、担当者からよく寄せられる質問をまとめました。導入を具体的に考えるうえでの参考として、ひとつずつ確認していきましょう。

人事業務のAI導入に、費用はどのくらいかかりますか?

導入費用は、使用するAIツールの種類や、どこまでの業務に適用するかによって大きく変わるため、一概にいくらとは言えません。

専用のシステムを新たに構築する場合はまとまった投資が必要になりますが、まずは既存のChatGPTやGeminiといった生成AIツールの利用を社内で許可するところから始める方法もあり、必ずしも高額な専用システムからスタートする必要はありません。

無料または低コストのプランから試し、効果を確認したうえで投資範囲を広げていく企業も見られます。自社の課題や予算に応じて、本記事で紹介した4つのステップを参考にしながら、優先順位をつけて検討していくのが現実的な進め方です。

中小企業でも人事業務にAIは活用できますか?

人事業務へのAI活用は、大企業に限られたものではありません。AIチャットボットによる社内問い合わせへの対応や、生成AIを使った書類作成の補助など、比較的小さな範囲から始められる活用方法もあります。

たとえば、新たなシステムを導入するのではなく、すでに利用している生成AIツールを人事業務でも活用する方法があります。求人票や社内文書の作成、メールの下書きなど、定型的な業務から試すことで、自社の業務に適しているかを確認しやすくなります。

専任のIT担当者がいない場合でも、まずは一つの業務に対象を絞り、利用するツールや入力できる情報の範囲など、必要なルールを決めたうえで試すことが可能です。効果や課題を確認しながら、活用する業務を少しずつ広げていくとよいでしょう。

限られた人員で多くの業務を担う中小企業にとっても、AIによって定型業務を効率化し、人事担当者がより重要な業務に時間を使えるようにすることは、有効な活用方法の一つです。

AIによって人事担当者の仕事がなくなりますか?

AIの導入によって人事担当者の業務がすべて置き換わるわけではありません。むしろ、書類作成や情報整理などの定型業務をAIで効率化し、人事担当者が人にしか担いにくい判断や対話に時間を使うことが、現在の主な活用方法です。

たとえば、求人票や社内文書の作成、面接日程の調整などをAIで補助すれば、その分の時間を候補者や社員とのコミュニケーション、採用戦略や人材配置の検討などに充てられます。

人柄や意欲、本人の希望、個別の事情など、データだけでは判断しにくい要素を踏まえた意思決定も、人事担当者が担う重要な役割です。

一方で、AIの活用が進めば、人事担当者に求められる業務やスキルが変わる可能性はあります。AIに任せられる作業を見極めたうえで、その結果を確認し、人事として適切に判断する力がより重要になるでしょう。

人事データをAIに入力しても安全ですか?

人事データには個人情報や機密情報が含まれるため、AIに入力する際は、利用するサービスの仕様や社内ルールを確認し、入力する情報を適切に管理する必要があります。

まず、AIに入力するデータは業務上必要な範囲に限定します。特に健康情報などの要配慮個人情報を扱う場合は、個人情報保護法などの関連法令や社内規程を確認したうえで、入力の可否や取り扱い方法を決めることが重要です。

また、会社が利用を認めたAIツールだけを使用する、AIに入力してよい情報と禁止する情報を明確にするなど、担当者が個別に判断しなくても運用できるルールを整えておくとよいでしょう。誰がどの情報にアクセスできるのかを整理し、アクセス権限を適切に設定することも必要です。

AIの利用範囲や情報管理については、人事部門だけで決めるのではなく、情報システム・IT部門などとも連携してルールを整備しましょう。ツールの仕様変更なども踏まえて定期的に見直すことで、人事データを適切に管理しながらAIを活用しやすくなります。

AI採用とは?できることやメリット・導入のポイントをわかりやすく解説
AI採用とは、AI(人工知能)の技術を使って採用業務を効率化・高度化する取り組みの総称です。この記事では、AI採用の意味や注目される背景から、具体的にできること、メリットと注意点、導入のステップ、企業の活用事例までを、採用担当者の視点でわかりやすく整理します。

まとめ | 人事業務にAIを活用して組織全体の生産性を高めよう

人事領域におけるAI活用は、経団連の調査からも分かるとおり、すでに多くの企業で何らかの形が定着しつつあります。

採用、人材配置、人材育成、労務管理、人事評価と、活用できる場面は業務の全体に広がっていますが、AIはあくまで人事担当者の判断を支える道具であり、最終的な意思決定は引き続き人が担う領域です。バイアスや個人情報の取り扱いに配慮しながら、まずは負担の大きい定型業務から小さく試し、効果を確かめながら適用範囲を広げていく進め方が現実的でしょう。

採用は、人事業務のなかでもAI活用が進んでいる領域です。実際に、採用活動でもAIを活用して業務の一部を効率化するサービスが登場しています。

Wantedlyでは候補者を探すソーシング工程をAIが支援する「AIエージェントモード」を提供しています。採用要件を入力するだけで、AIが検索条件を組み立て、候補者リストまで提案してくれるため、担当者が一件ずつ条件を練り直す手間を減らせます。

人事業務全体にAIを取り入れていく第一歩として、まずは自社が最も負担を感じている業務から、こうした機能を試してみてはいかがでしょうか。

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