「残る」デザインを作る。グラフィックからUXへ領域を変えたデザイナーの責務

今回はグッドパッチのUXデザイナー國光のインタビュー記事をお届けします!高専出身の國光がデザイナーを目指した経緯や実現したいデザイン、今後グッドパッチで牽引したいことなど、話を聞きました。

プロフィール

Goodpatch Design Div. UX/Serviceデザイナー 國光 俊樹(くにみつ としき)
木更津高専を卒業後、デザインに関心を持ち桑沢デザイン研究所ビジュアルデザインコースを経てデザイナーへ。 グラフィック・エディトリアルデザイナー、WEBデザイナー/ディレクターを経て、2016年グッドパッチへ入社。UXデザイナー/サービスデザイナーとして活躍し、2018年8月、全社員の中から1名選出されるMost Valuable Playerを受賞。
Twitter:@ku_ni_29

本質と対峙するデザインの世界へ

僕は木更津高専でプログラミングからロボットまで広く学ぶ電子制御工学科に在籍していました。高専生は、大学に編入してから就職するのが一般的です。周りの友人は工学系の研究職やエンジニア系など、やりたいことが見つかって進む方向を決めていったのですが、僕のやりたいことはそこに見つかりませんでした。

自分自身を見つめ直した時に、もっと「なぜ作るのか」「何を作るのか」「どう伝えるのか」といったところから形づくること、仕組みを考えることがしたいと気づき、デザインの道に進むことに興味を持ちました。ただ、未経験のデザイン業界に飛び込むには両親を説得する必要があったため、まずはデザインの専門学校でデザインを基礎から勉強することにしました。

デザインを勉強していくうちに空間デザインやビジュアルデザインなど色々な分野があることを知り、興味を持ちました。当時から「なぜこれを作るのか?」と本質から考えることが好きだったこともあり、コンセプトからストーリー性を持ったモノをつくりたかったので、ビジュアルデザインを専攻しました。

桑沢デザイン研究所在籍時代の國光の作品

就職を考えたとき、考え方が確立された方の元で働きたいと考え、一社目は著名なアートディレクターのデザイン事務所に入社しました。実は当時、中途採用しか募集が出ていなかったのですが無謀にも門を叩き、幸運にも入社できたんです。書籍や雑誌のデザインにはじまり様々なデザインに触れひたすらに手を動かすハードな日々でしたが、仕事への姿勢やこだわりに多くを学びました。

ここではグラフィックやエディトリアル、タイポグラフィなどのデザインを経験しましたが、ちょうどその頃、紙媒体の業界全体が縮小しはじめた時期でした。

スマホが普及する世の中でビジュアルとデジタル両方のデザインの視点を持ちたいと考え、WebデザイナーとしてWeb制作会社へ転職しました。そこは規模の小さな会社だったこともあり、Webデザイナーとディレクターを兼務するような形だったのですが、クライアントとの距離が遠く「本質的に作る意義があるものなのか」「消費されるデザインは果たして自分の人生をかけてでも創りたいものなのか」という考えが頭に浮かんでいました。

では「消費されないデザインとはどんなものなのか?」と考えはじめたころに、当時所属していた会社が大きな方針転換をしてデザイナーの仕事がより細分化されて社内受託のような形になる事が決まりました。デザイナーの働き方は大きく分けると、自社事業という一つの事業にコミットしていく型と、クライアントワークとしていろいろな事業や業種にコミットし集合知を自分の中に溜めていく型がありますが、この時の僕の興味は後者だったんです。自身の成長欲から幅広く色々な分野に深く携わりたいと思い、再度転職を決めました。

コトづくりへの深いコミットを求めて

より深く意義のある仕事をするためには、デザイナーとディレクターを一人で担うことに限界があると感じていて、ディレクターやプランナー職を考えて数社面接を受けていました。グッドパッチはプロトタイピングツール「Prott」の存在を通して知っていましたが、グッドパッチの面談に行くまでUXデザイナーという職種については詳しく知りませんでした。

当時2015年ごろ、グロースハックが注目され数字とデザインの掛け合わせに関する言及が業界全体で増えていたのですが、僕はそれよりも「どのようなコトを作るのか」「なぜ作るのか」「何を作るのか」への関心がひときわ強かったんです。

また、27歳だったのですが、20代最後の3年は幅広い知見と経験を得るための環境に自分を投資し、深くコミットしたいと決めていました。20代後半に多様な経験をすることが、今後の働き方や自身の思想を形づくると考えていたためです。これらの軸にグッドパッチのUXデザイナーが一番フィットすると考え、選考に進みました。

面接では、デザイナーとして目に見えるデザインを作ることはできるけれど世の中に対して影響を与えることができているのか分からないといった課題感や、だからこそ残り続けるデザインを作り出し世の中をアップデートしていきたいという想いなどを話しました。

グッドパッチから内定をもらった時、他の会社からも内定をいただいていたのですが、グッドパッチのWhyから考える思想や、チームで専門性の高いメンバーと役割分担をして進めるスタイル、クライアントにコミットする姿勢などの魅力に背中を押され、入社を決めました。

バリューを出せずに悩んだ1年半

ただ、入社してから一年半ほどはバリューが出せない時期があり、苦しみました。

僕が未経験のUXデザイナーとして入社した2016年、グッドパッチはナレッジ文化もGoodpatch Blogの発信もいまほど活発ではなかったんです。2019年からは職能型組織に変更し、同じ職種同士での繋がりも強まっていますが、当時はUXデザイナー同士の連携や共有も模索している時期だったように思います。

個人的にも、50名以上の会社に所属したのが初めてだったため、どのようなコミュニケーションをして仕事を前に進めるのか肌感が掴めなかったこともあり、クライアントからの期待値のズレなども生じてしまったため、とにかく悩み抜いた苦難の時期でした。

そんな中で、地道に社内の他案件の資料を見て周り、なぜこれをしたのか?どういう反応だったのか?など担当したプロジェクトメンバーへ直接聞いて周りました。

転機となったのは、ピアボーナスサービスUniposの立ち上げプロジェクトです。


当時のUnipos β版のプロトタイプのデザイン

プロジェクトにアサインされた最初の1ヶ月は会議室にこもり「このプロダクトでどんな価値を提供するのか」「このプロダクトがないといけない理由は何か」など、チームで毎日ディスカッションをしていました。そんな中で、議論が何度も立ち戻ってしまうことがあり、チームで内省を繰り返していたところ、意思決定がしづらいのは判断材料が散らばっていてチームで同じモノが見えていないからだということに気づいたタイミングがあったんです。

ディスカッションしてもまた戻ってしまうというところから、毎回のディスカッションを可視化して積み上げていき、チームで抽象的な概念などの理解を擦り合わせていきました。判断軸を蓄積させていくことで、ユーザーの本質的な課題や実現したいビジョンが一つのストーリーとして繋がり、それが共通言語となってプロジェクトが前に進み始めたんです。

これによりチームで同じモノを見ながら同じコトに向き合っていける環境を作ることができました。のちに僕らが作った資料がUnipos社内で「UX briefs」という資産としてアップデートされ、入社した人に必ず見てもらっていると聞いたときはとても嬉しかったですね。

UXを起点とする組織の形とは?「Unipos」の3年間から紐解くデザインの影響https://goodpatch.com/blog/unipos

短期間で最大限の価値を届ける覚悟

その後のプロジェクトでも、着実にステップを上がった感覚がありました。

一つは、東急ハンズに設置されたセミセルフレジのプロジェクトです。資料で判断軸を積み上げていく型を応用し、プロジェクトとして満たすべき100%を最短で満たしながら、更に120%、150%の価値を届けるためにはどうすれば良いかといった挑戦をこのプロジェクトではチームで実行しました。これらの試行の結果とプロセスを、社内のナレッジとして発信し始めてからは周囲に頼られることが増えたように思います。

國光がUX/サービスデザインを手がけたハンズラボ株式会社が開発・導入した東急ハンズ セミセルフレジのiOSアプリ https://goodpatch.com/ja/work/hands-lab

UI Crunch #14に國光が登壇し、店舗の体験を含めたサービスデザインについて語ったレポート記事 https://note.designing.jp/n/nb1e0fd8603e8

もう一つは、ビジネスウェアのカスタムオーダーサービス FABRIC TOKYOのプロジェクトです。当初、あるフローの体験改善支援だったプロジェクトを自らハードルをあげてサービス全体の体験に対する提案もさせていただいたところ、契約期間を延長してもらうことができ、全2ヶ月という短期間でも濃度を変えずに最大限の価値を届けることができたんです。

FABRIC TOKYOにはオフラインの店舗とオンラインのECサイトがあるため、実店舗の方や各部署のリーダーの方、そして経営陣の方々を巻き込みながら、サービス全体のユーザー体験を可視化し、それを共通言語として理想の体験を一緒に設計していく進め方は評判が良かったです。最後数週間は経営会議の時間をこのプロジェクトの時間にしてくださり、上記の方々のほとんどが毎回参加しながらUXの思想やプロセスのインストールを進めることができました。我々が離れた後に、店舗の方が自主的にカスタマージャーニーマップなどのUX手法を用いて顧客体験を最大化しているという話を聞き、驚いたのを鮮明に覚えています。

この2ヶ月間のアウトプットは濃度が高く、これまでに類を見ないほど評価してもらえましたね。自分の中でもどの情報を組織に流通させ、どのように浸透させていくのかが体系化された感覚がありました。

過去に経験した多くの悔しい想いを二度と繰り返さないという覚悟を決めたんです。短期間で最大限の価値を届けるために手段を問わずになんでもやろう、と。

そこから領域を超える動きを体現でき始め、MVP受賞に繋がったと思っています。

2018年8月に全社員のなかから1名が選出されるMost Valuable Playerを受賞

それまでは、UXデザイナーの守備範囲も把握できていない状況で、自分が何を提供すべきなのかもわかっていませんでした。そこから抽象化したナレッジを応用しながら、様々な組織でや事業でのバリューの出し方を自分の中で型化できたんです。その結果がMVPとして返ってきた。自信の裏付けをもらえたという気持ちでした。

最近ではプロジェクトをきっかけに出会ったクライアントの方々と仲良くなり、プロジェクトが終わった後も連絡取ることが多いです。あるクライアントの方から「あの時のあのアウトプットがあったから、いまそれを活用してチームの力が底上げされています」と連絡をもらえることも増えていて。クライアントワークだからこそ、我々がいなくなった後も「残る」デザインをすることにやりがいを感じるんです。クライアント企業の中で自然と文化として残っている状態が大切ですね。

全方位からの刺激が成長に寄与

グッドパッチに入社して4年が経ちましたが、自分とグッドパッチ自体の成長に合わせて、クライアント側のカウンターパートが徐々に変化していきました。

ここ1〜2年で関わった人のほとんどが経営者。大企業の場合は、意思決定権を持ったステークホルダーです。意思決定を担う人たちと直接プロジェクトを進めることにより、自分自身の視座も上がり新しく見える観点があります。ただ、それらの観点をどう満たせばいいのか悩む時期が毎回来るのですが、それを乗り越えるための学びが全方位からある環境が、社内外に整っているのがいまのグッドパッチなんです。

社内の異なる専門性を持ったメンバー同士で、同じ観点を持ちながら自分が考えていることを壁打ちできるんです。専門性ごとに見ている視点が違うので、それらを接続するのが難しいこともあるはずなのですが、グッドパッチのメンバーにはどの職種でも「ユーザーにどのような価値を提供し、事業を成功させるのか」という事業戦略レイヤーのWHYから噛み砕く文化があります。

目的や見ている観点が同じだということはグッドパッチのメンバーと働いていると常に感じます。この環境は僕にとって何よりも大事なことなんです。他にも、社内に蓄積されているナレッジや、案件でカウンターパートになる方々のマインドセットや思想から学ぶこともとても多いです。

この360度全方位に師匠がいる環境が自身の成長に寄与していることが、僕がいま、グッドパッチにいる最大の理由です。他の会社にいく理由がいまは全くない。この環境に身を置いて更に成長していきたいですね。

グッドパッチのトップラインを上げる

僕はいま、我々が価値を提供しなければいけない領域が「エクスペリエンスデザイン」全体に広がってきたと感じています。ユーザーに価値を届ける「事業」と、その価値を提供し続ける足腰としての「組織」の両輪を包括的に見ながら、ユーザーや求職者と企業とのあらゆる接点までデザインすることにこだわりを持って携わらないと、本質的な価値をそのままの濃度で伝達することはできません。

上流で企業や事業の価値の源泉を捉えてコアを見い出すところから、純度高くユーザーや組織の人に届けるところまでを一貫して繋くことこそがグッドパッチの提供価値です。もはやUXデザイナーが向かい合うのは、ありとあらゆる人に提供する体験全て。人に対するエクスペリエンスデザインが主軸になりつつあるんです。

國光が代表土屋とBXデザイナー米永と共に2019年を振り返るvoicyはこちら:https://voicy.jp/channel/857

その上で、今後はグッドパッチのトップラインをあげることが自分の役割だと思っています。僕はグッドパッチ歴も長く、入社順でいうと10番目くらいに古いメンバーなんですが、まだまだ成長の余地はあると感じています。自身の提供価値領域を広げることと、仕事の質を高めて社内にナレッジとして還元していくことが、会社のトップラインを上げていくことに繋がると考えています。

いまグッドパッチは170人を超えていますが、提供価値の濃度を変えずに拡大しないとグッドパッチであり続けられないと考えています。濃度を高く保つためには濃度をどんどん濃くする人がいなければいけません。トップラインを上げるメンバーが何人もいて、その一人に僕もいるという認識です。これは、自分に課している責務ですね。

正直、自分のキャリアプランはあまりないんです。僕にとって役職やポジションは重要ではなく、大事なのは「何にコミットするか」を決め、覚悟を持つこと。活躍の仕方は、クライアントワークでも自社事業でもなんでも良いんです

グッドパッチは組織崩壊を乗り越えて、組織の構造と仕組みに関するナレッジやノウハウも溜まり、できることの幅が急速に広がっています。何が組織状態やブランドに寄与し、それらの課題を解消するためにどうすればいいのか、現場・マネージャー・経営者がそれぞれの視点で組織をどう考えているのかを理解し、肌感をもった自分の言葉で組織について話せる人が多くなりました。

そんなグッドパッチの中で事業の推進速度を上げる質の高いナレッジを得るためには、クライアントワークでも本質的な部分まで深くコミットして、「プロジェクトの成功」ではなく「クライアントの成功」に対して覚悟を持って切り込んでいかないといけません。なので、自社事業立ち上げの機会があれば、覚悟を持って自分の身を投じる可能性も視野に入れています。

ただ、新規事業もあくまで手段の一つ。トップラインを上げるために、良い意味でこだわりを持たず、代表土屋や背中を預けられるメンバー達と一緒に世界を前進させるような未来を創っていけたらなと思っています。

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