採用活動の成果を高める上で、「候補者の意思決定プロセス」を軸に設計する考え方が重要視されています。その中核となるのが採用カスタマージャーニーです。
本記事では、採用におけるカスタマージャーニーの基本から作成方法、実務での活用ポイントまでを解説します。
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採用活動におけるカスタマージャーニーとは
採用におけるカスタマージャーニーとは、候補者の認知から応募・入社までの体験を一貫して設計するための重要なフレームワークです。企業視点ではなく、候補者の行動や心理変化に沿って整理することで、より効果的な採用施策の設計が可能です。
この考え方のもとになっているのが、マーケティング領域で使われる「カスタマージャーニー」です。顧客が商品やサービスを認知してから購入・利用、さらに継続・推奨に至るまでの一連の体験プロセスを、企業視点ではなく「顧客の行動・心理の変化」に沿って整理する考え方であり、これを採用領域に応用したものが採用カスタマージャーニーです。
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採用活動におけるカスタマージャーニーの重要性
近年の採用市場は売り手優位の傾向にあるとされ、企業が一方的に情報を発信するだけでは優秀な人材の獲得が難しくなっているケースも増えています。候補者は複数の企業を比較しながら意思決定を行うため、そのプロセスに寄り添った情報設計が不可欠です。
採用活動でカスタマージャーニーを活用することで、候補者が「どのタイミングで何を求めているか」を把握でき、適切なコミュニケーションが可能になります。
採用活動におけるカスタマージャーニーの役割
採用活動は単発施策の積み重ねではなく、候補者の出会いから入社までにたどる体験全体を設計することが重要です。採用カスタマージャーニーは、その一連のプロセスを可視化し、候補者がどの段階で何を感じ、どのような情報に触れるべきかを整理する役割を果たします。
| ▍採用カスタマージャーニーの役割 ・どのタイミングでどんな情報を届けるべきかを整理する ・チャネルごとの役割を明確にする ・接点の一貫性を担保する ・応募意欲を最大化する導線を設計する |
結果として、候補者にとってストレスのない自然な意思決定を促すことができます。単なる応募導線ではなく、「自分にとって納得感のある選択ができた」と感じてもらえる体験を提供でき、入社後のエンゲージメントや定着も期待できるでしょう。
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採用カスタマージャーニーマップのテンプレート例
採用カスタマージャーニーマップは、候補者のフェーズごとの行動やそのときの心理、接点を、一枚の図として可視化したものです。
作成にあたっては、フェーズ・行動・ニーズ・タッチポイント・感情・課題・施策案という7つの要素を洗い出し、フェーズごとに整理していくことが基本になります。
| ▍採用カスタマージャーニーの構成要素 ・フェーズ ・候補者の行動 ・候補者のニーズ ・タッチポイント(候補者から見た企業との接点) ・候補者の感情 ・上記を踏まえた課題(離脱につながる要素) ・具体的な施策案 |
テンプレートとして基本構造を決めておくことで、毎回ゼロから項目を考える必要がなくなり、関係者間での共有や改善に活用しやすくなります。下記は転職潜在層の若手エンジニアのペルソナを作成し、カスタマージャーニーマップを可視化した例です。
| 項目 | ① 認知 Awareness | ② 興味・比較検討 Interest | ③ 応募 Apply | ④ 選考 Selection | ⑤ 内定承諾 Offer |
|---|---|---|---|---|---|
| 行動 | SNSでエンジニアブログを見かけ、気になってフォローする | 採用ページやGitHub、社員インタビューを確認する | カジュアル面談に申し込む | 一次面接から最終面接まで、複数回の面接に臨む | オファー内容を他社と比較し、信頼できる人に相談する |
| ニーズ | 「技術的に面白そうか」を直感的に判断したい | 開発文化や技術スタック、チームの雰囲気をリアルに知りたい | 現場エンジニアに話を聞いてみたい | 自分の技術力が正当に評価されるか確かめたい | 入社後のイメージと条件の両方に納得したい |
| タッチポイント | ・技術ブログ ・Wantedly ・X | ・採用ページ ・GitHub ・社員インタビュー | ・カジュアル面談 | ・一次面接 ・二次面接 ・最終面接 | ・オファー面談 |
| 感情 | 興味はあるが、まだ本気ではない | もっと技術のことを知りたい | カルチャーなど他のことも知りたい | 楽しさを感じ、ここは良さそうだと思う | 嬉しさを感じつつ、慎重に判断したい |
| 課題 | 技術情報が少なく魅力が伝わらない | 社員のリアルな声や開発実態が伝わらない | 現場エンジニアによる面談がない | 選考結果の連絡が遅いと不安になる | オファー後のフォローが薄く迷いが生じる |
| 施策 | エンジニアブログなど技術広報を継続して行う | 技術スタックや開発文化を公開し、社員インタビューを充実させる | 現場エンジニアによるカジュアル面談実施 | 面接後48時間以内にフィードバックする | CTOや現場から個別メッセージを送り、内定後の懇親会を設計する |
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採用カスタマージャーニーマップの作成手順

採用カスタマージャーニーは、候補者のフェーズ・行動・心理・接点を整理し、採用プロセス全体を可視化するためのフレームワークです。ここでは、可視化したジャーニーを採用カスタマージャーニーマップとして設計するための手順を紹介します。
| ▍採用カスタマージャーニーマップの作成手順 1. 採用ペルソナの設定 2. 採用ファネルの整理 3. ニーズとタッチポイントの整理 4. 感情・課題の整理 5. 具体的な施策の策定 |
1. 採用ペルソナの設定
採用カスタマージャーニーの作成でまず行うのは、ターゲットとなる候補者像の明確化です。
例えば、転職潜在層がターゲットの場合は、「転職意欲が顕在化するきっかけ(評価不満・キャリア停滞など)」まで具体化できているかが重要です。年齢や職種、転職意欲、価値観、情報収集手段などを整理し、特に「共感軸」を定義することがカギとなるでしょう。
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| 氏名・年齢 | 鈴木 花子(28歳) ※仮名です。 |
|---|---|
| 職種・レベル | Webエンジニア / 中堅(経験5年) |
| 転職意向 | 転職潜在層――現職に不満はあるが、まだ積極的には動いていない |
| 情報収集手段 | X・技術ブログ・Wantedly・GitHub |
| 価値観・重視点 | 技術成長・チャレンジできる環境・フラットな組織文化 |
| 共感軸 | 「新しい技術に挑戦できる」「エンジニアが主役の会社」というストーリーに惹かれやすい |
| キーワード | 現職に不満あり、SNSで情報収集、技術成長を重視、チャレンジ文化、受動的な転職活動 |
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2. 採用ファネルの整理
採用ファネルとは、候補者が自社を認知してから内定承諾に至るまでのプロセスを、段階ごとに分解して整理する考え方です。
まずは自社の採用プロセスを、認知・興味関心・応募・選考・内定承諾といった段階に当てはめ、それぞれのフェーズが自社のどの活動に対応するのかを整理してみましょう。
ここでフェーズの枠組みを定義しておくことで、次の手順で扱う候補者の行動やニーズ、タッチポイントを、フェーズごとに漏れなく検討できるようになります。
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| フェーズ | このフェーズで指すもの | 自社の採用プロセス(例) |
|---|---|---|
| 認知 | 候補者が自社の存在を知る段階 | 母集団形成・広報活動 |
| 興味・比較検討 | 自社への関心を深め、他社と比較する段階 | エントリー前の情報提供(求人票など) |
| 応募 | 実際にエントリーする段階 | カジュアル面談・書類選考受付 |
| 選考 | 面接・選考が行われる段階 | 一次面接・二次面接・適性検査 |
| 内定承諾 | オファーを受け、入社を決める段階 | 内定通知・オファー面談 |
3. ニーズとタッチポイントの整理
手順2で整理したフェーズに沿って、ペルソナがそれぞれの段階でどのような行動を取り、何を求めているかを書き出していきます。ここでのポイントは、ニーズを「情報を知りたい」といった行動の言い換えで終わらせないことです。その行動の背景にある心理的な欲求(インサイト)まで掘り下げて言語化しましょう。
例えば興味・比較検討フェーズであれば、「採用ページやGitHub、社員インタビューを読み比べる」という行動の裏には「他社と比較したときに『ここで働く自分』を具体的にイメージできるか確かめたい」というインサイトが隠れています。
行動とニーズを明確にしたうえで、それぞれに対応するタッチポイントを紐づけると、次の手順の感情・課題の整理につながりやすくなります。
| フェーズ | 候補者の行動(例) | 候補者ニーズ(例) | 対応するタッチポイント(例) |
|---|---|---|---|
| 認知 | SNSや技術ブログを何となく眺める | 求人票のような建前情報でなく、現場のリアルな熱量を感じたい | 技術ブログ、SNS |
| 興味・比較検討 | 採用ページやGitHub、社員インタビューを読み比べる | 他社と比較したときに「ここで働く自分」を具体的にイメージできるか確かめたい | 採用ページ、GitHub、社員インタビュー |
| 応募 | カジュアル面談に申し込む | まずは現場エンジニアに話を聞きたい | カジュアル面談 |
| 選考 | 一次面接から最終面接まで、複数回の面接に臨む | 自分の技術力やカルチャーフィットが正当に評価されるか確かめたい | 一次面接・二次面接・最終面接 |
4. 感情・課題の整理
ニーズとタッチポイントを整理したら、各フェーズで候補者がどのような感情を抱きやすいか、そしてどこに離脱の要因となる課題があるかを可視化します。感情面だけでなく、実際の離脱データと突き合わせることも重要です。
| 採用ファネル(フェーズ) | 候補者の感情(例) | 想定される課題(例) |
|---|---|---|
| 認知 | 興味はあるが、まだ本気ではない | 技術情報が少なく魅力が伝わらない |
| 興味・比較検討 | もっと技術的な取り組みを知りたい | 社員のリアルな声や開発実態が伝わらない |
| 応募 | カルチャーなど開発現場の他のことも知りたい | 現場エンジニアによる面談がない |
5. 具体的な施策の策定
感情・課題を整理したら、それをもとに具体的な施策へ落とし込みます。
まず、フェーズごとのタッチポイントについて「すでに実施している施策」と「まだ用意できていない施策」を洗い出しましょう。
次に、実施状況と候補者のニーズ・感情を照らし合わせ、どこに課題があるかを可視化します。課題が大きいフェーズほど離脱リスクが高いため、優先的に施策を検討すべき対象です。
すべてのフェーズを一度に改善しようとせず、影響度の大きいものから順々に着手することがポイントです。
| フェーズ | タッチポイント | 実施状況 | 課題 |
|---|---|---|---|
| 認知 | エンジニアブログ・SNS発信 | 実施済み | 発信の頻度が少なく、技術情報が伝わらないため魅力が伝わっていない |
| 興味・比較検討 | 社員インタビュー | 未実施 | 働き方のリアルを伝える情報がなく、「実態を知りたい」というニーズに応えられていない |
| 応募 | カジュアル面談 | 未実施 | 現場エンジニアによるカジュアル面談は実施していない |
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採用活動にカスタマージャーニーを導入するメリット

採用活動の成果は、候補者との接点の質・タイミング・一貫性によって大きく左右されると言われています。カスタマージャーニーを採用活動に取り入れることで、これらを候補者視点で最適化でき、候補者体験の質を高めることができます。
その結果として、採用活動の成果の最大化につながり、定量・定性の両面での改善効果も期待できるでしょう。ここでは具体的なメリットを解説します。
| ▍採用カスタマージャーニー導入のメリット ・候補者への効果的なアプローチ ・関係者の共通理解 ・採用プロセスの最適化 |
候補者への効果的なアプローチ
採用カスタマージャーニーを活用することで、候補者の検討状況に応じた情報提供が可能になり、納得感のある応募につながります。
例えば、まだ転職を意識し始めたばかりの潜在層に対していきなり具体的な条件や選考フローを伝えても響きにくい一方、開発文化やチームの雰囲気といった「働くイメージ」を伝える情報は関心を引きやすくなります。このように、フェーズごとに響く情報の種類を見極めてアプローチを変えることで、無理に応募を迫ることなく、自然に検討を後押しできます。
関係者の共通理解
採用活動には人事だけでなく、現場社員や経営層など複数の関係者が関わります。しかし、それぞれが見ている情報や重視するポイントが異なるため、「どのフェーズで何をすべきか」の認識がずれてしまうケースは少なくありません。
例えば、人事は母集団形成の数を追う一方、現場は選考通過後のカルチャーフィットを重視するといった具合です。採用カスタマージャーニーを共有することで、フェーズごとの候補者の状態や課題を関係者全員が同じ解像度で把握でき、施策の優先順位や役割分担についての合意形成がスムーズになります。
採用プロセスの最適化
採用カスタマージャーニーの導入によって、フェーズごとの課題を特定しやすくなるというメリットがあります。例えば、「求人ページの閲覧数は多いが応募率が低い」という場合、比較検討フェーズでの情報不足(社員の働き方・評価制度など)がボトルネックになっている可能性があるでしょう。
このようにフェーズごとの数値と照らし合わせることで、改善すべき接点が特定できます。
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採用カスタマージャーニー作成の注意点
カスタマージャーニーは作ること自体が目的ではなく、運用・改善して初めて価値を発揮します。形だけのフレームワーク導入で終わらせないためには、ポイントを押さえることが重要です。
| ▍採用カスタマージャーニー作成のポイント ・候補者の視点を重視する ・運用しながら継続的にアップデートする |
候補者の視点を重視する
採用カスタマージャーニーを「こうあって欲しい」という想像で作成すると、実態と乖離して機能しないリスクがあります。
例えば、経営層は事業の成長性や将来性を魅力としてアピールしたいと考え、それをベースに候補者視点の言葉に置き換えて設計することがあります。しかし実際の候補者は、日々の働き方やチームの雰囲気により強い関心を持っていることが多く、想像だけで作ったジャーニーでは入社意欲の醸成につながらないケースが起こりえます。
カジュアル面談での質問内容や内定辞退理由、採用市場における意識調査データなど、実際の候補者の反応やデータをもとに設計することが重要です。
運用しながら継続的にアップデートする
最初から完璧な採用カスタマージャーニーを目指す必要はありません。細部にこだわって形だけのジャーニーになってしまうより、まずは大枠を作成し、運用しながら改善していくことが重要です。
改善の材料になるのが、面接内容、辞退理由、内定承諾の決め手といった実際のデータです。
例えば、内定辞退の理由を「他社の方が魅力的だった」で終わらせず、「どのタッチポイントでの体験がその判断につながったのか」まで深掘りして記録すると、改善すべき接点が具体的に見えてきます。
また、リモートワークの普及やSNSでの情報収集の広がりのように、候補者の行動や重視するポイントは数年単位で変化するため、1年に一度など見直しのタイミングをあらかじめ決めておくと、形骸化を防ぎやすくなります。
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採用カスタマージャーニーで成果最大化を実現
ここまで見てきたように、候補者の行動・感情を軸に採用施策を組み立てることで、フェーズごとの課題やボトルネックが明確になり、応募率や採用効率の改善、ミスマッチ防止につながります。
こうした設計を実際の成果につなげるには、候補者との適切な接点設計と継続的な情報発信が不可欠です。Wantedlyでは、ストーリーや募集ページを通じて企業のミッションやカルチャーを効果的に伝え、認知・興味フェーズから候補者との関係構築を強化できます。採用カスタマージャーニーで設計した体験を具体的な接点として実装し、採用成果の最大化を目指したい方は、ぜひ資料ダウンロードやお問い合わせから詳細をご確認ください。
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