IT需要の拡大により、IT人材の不足はますます深刻化しています。デジタル化やDXを推進したくても、「なかなか良い人材に巡り合えない」と感じている採用担当者は多いのではないでしょうか。
本記事では、IT人材が不足している現状や原因、特に不足している職種、企業が取るべき対策を解説します。
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IT人材不足の現状
2016年の経済産業省の試算によれば、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足し、特にサイバーセキュリティ対策を行う人材やビッグデータ・AIを扱う人材の育成は急務だとされていました。
この問題は将来予測だけでなく、現時点においても深刻です。情報処理推進機構(IPA)が2025年に公表した「DX動向2025」によれば、DXを推進する人材の「量」の確保について、「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した日本企業は85.1%(2024年度)。2023年度調査と比較しても大きな改善は見られず、大半の企業でDX推進人材が不足している状態が続いています。
対してアメリカとドイツにおいては、「やや過剰である」「過不足はない」の割合の合計がそれぞれ73.6%(アメリカ)、52.5%(ドイツ)です。日本のDX人材の不足は、国際比較においても際立って厳しい傾向があるといえるでしょう。
さらに同調査では、DXを推進する人材の「質」についても調査。「過不足はない」と回答した企業の割合は日本3.8%、アメリカ52.9%、ドイツ25.1%であり、質の面でも不足している企業が大多数を占めます。
2030年に79万人という数字はあくまで将来予測にすぎませんが、IPAの調査結果を見る限り、不足感はすでに常態化しているといえます。
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出典:経済産業省「- IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書」
出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」
IT人材が不足する4つの原因

IT人材の不足は、単一の要因によるものではありません。複数の構造的な要因が重なり合って生じています。ここでは主な4つの原因をみていきましょう。
| ▍IT人材が不足する4つの原因 1.DX推進やAI活用の拡がりによるIT需要の拡大 2. 少子高齢化による労働人口の減少 3. 技術革新と人材育成のスピードのギャップ 4. レガシーシステムの運用保守による人員の圧迫 |
1. DX推進やAI活用の拡がりによるIT需要の拡大
かつてはIT業界に閉じていた技術活用も、今では業種を問わず広がっています。IPA「DX動向2025」では、日本で何らかの形でDXに取り組んでいる企業の割合は77.8%に達しており、2022年の69.3%と比較すると、着実にDXが企業に浸透してきたことがわかります。
中でも生成AIの活用は急速に広がっており、総務省「情報通信白書」によれば、日本のAIシステム市場規模は2024年に1兆3,412億円(前年比56.5%増)に達しました。さらに2029年には4兆1,873億円まで拡大すると予測されており、今後も市場の成長が見込まれます。
こうしたDX・AI活用に取り組む企業の裾野が広がり続けていることが、IT人材の需給ギャップが拡大する根本的な背景にあります。需要が増え続ける一方で、対応できる人材の数がそれに追いつかないのが現状です。
出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」
出典:総務省「令和7年版情報通信白書」
2. 少子高齢化による労働人口の減少
IT人材不足に拍車をかけているのが、日本全体の労働人口の減少です。総務省「令和4年版情報通信白書」によれば、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続けており、2050年には5,275万人(2021年の7,450万人から29.2%減)に落ち込むと予測されています。
これはIT業界に限った話ではありませんが、需要が拡大し続けるIT分野では、供給側の縮小がとりわけ深刻です。パイ自体が小さくなる中で、IT人材を確保するための企業間競争はますます激しくなっていくでしょう。
加えて、経済産業省の調査では、IT人材の平均年齢は2030年まで上昇を続け、高齢化が進展することも予想されています。現役のIT人材の高齢化も進んでいることから、今後は退職による人材の流出も無視できない問題になってくるはずです。
出典:総務省「令和4年版情報通信白書」
出典:経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」
3. 技術革新と人材育成のスピードのギャップ
IT分野は技術の移り変わりが速く、新技術が次々と登場します。こうした技術に対応できる人材を育成するには時間がかかり、教育体制の整備が追いついていない企業も少なくありません。
実際に、IPA「DX動向2025」によれば、AI関連人材の充足度について、日本は人材種別を問わず「不足している」と回答しているのに対し、アメリカ・ドイツではほとんどの人材において「十分にいる」「まあまあいる」の割合の合計が過半数を超えています。
育成施策についても、「特に支援はしていない」が日本36.6%、アメリカ1%、ドイツ1.9%で、企業の姿勢には歴然とした差があります。さらに、その背景には評価制度の未整備も関係しており、同調査でDXを推進する人材の評価基準に「基準はない」と回答した日本企業は75.7%に達しました。アメリカの10.0%、ドイツの18.9%と比べると、極めて高い割合といえるでしょう。
| 項目 | 日本 | アメリカ | ドイツ |
|---|---|---|---|
| 育成施策「特に支援はしていない」 | 36.6% | 1% | 1.9% |
| 評価基準「基準はない」 | 75.7% | 10.0% | 18.9% |
こうした背景から、従来型のシステム運用・保守ができる人材と、先端技術を扱える人材との間でスキルの二極化が進んでいます。組織全体のIT対応力を高めていくためには、育成の仕組みと評価制度の両輪を整えることが重要です。
出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」
4. レガシーシステムの運用保守による人員の圧迫
既存の基幹システム(レガシーシステム)の維持・保守に多くの人員が割かれていることも、人材不足を助長している要因のひとつです。経済産業省は2018年、老朽化したシステムが刷新されないまま放置されることで生じる経済損失を「2025年の崖」と名付け、警鐘を鳴らしていました。
実際に2025年を迎えた現在も、経産省が2025年5月に公表した調査によれば、ITを導入・活用する企業の61%、大企業では74%がいまだにレガシーシステムを保有しており、想定された課題は今もなお解消されていません。
複雑化・ブラックボックス化したシステムの保守には専任の担当者が必要になりやすく、本来であれば新規開発や先端分野に振り向けたい人材が、既存システムの維持に長期間拘束されてしまいます。採用や育成によって確保した人材が旧来の保守業務に吸収されてしまう構造が続く限り、IT人材不足の解消は困難といえるでしょう。
出典:経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて(2025年5月)」
特に不足しているIT人材の職種
IT人材の不足の度合いは、職種によっても大きく異なります。経済産業省とIPAは2026年4月、DX推進に必要な人材の役割を示す「デジタルスキル標準」を改訂し、従来の5類型に「データマネジメント」を加えた6類型を最新の定義としています。
| 人材類型 | デジタル人材の説明 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | ビジネスや業務の変革で実現したい目的を定義したうえで、経営視点で最適なビジネスモデルと業務プロセスを設計し、戦略を行動に落とし込みながら関係者をコーディネートし、プロセス全体を牽引して成果を創出する役割 |
| デザイナー | ビジネスの視点や顧客・ユーザーの視点、コミュニケーションの視点を踏まえて製品・サービスの方針や開発プロセスを策定し、ブランドメッセージやタッチポイントを含むコミュニケーション設計から製品・サービスのデザインまでを担う役割 |
| データサイエンティスト | データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う役割 |
| ソフトウェアエンジニア | デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う役割 |
| サイバーセキュリティ | 業務プロセスを支えるデジタル環境において、サイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う役割 |
| データマネジメント | データの安全性・信頼性の確保と継続的な流通の仕組みづくりを行い、組織全体を巻き込んでデータの利活用・価値創出を促進する役割 |
出典:経済産業省・IPA「デジタルスキル標準ver.2.0」
現時点で不足率について公表されている統計は、この改訂前(2024年度調査時点・旧5類型)のIPA「DX動向2025」によるものが最新です。同調査では、人材類型別に不足している職種を聞いたところ、もっとも多かったのは「ビジネスアーキテクト」で43.0%、次いで「データサイエンティスト」18.8%、「ソフトウェアエンジニア」15.8%、「サイバーセキュリティ」14.8%、「デザイナー」7.6%と続きました。
アメリカ・ドイツと比較しても日本の「ビジネスアーキテクト」の人材不足は顕著であり、DXの取り組みを中心に推進する人材の不足がDXの成果創出にも影響していることが推察されます。また、「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」は同水準で不足しており、DXを支える人材が全方位的に足りていない状況もうかがえます。
新設された「データマネジメント」類型については、統計対象になってから日が浅いため、不足率に関する公的データはまだ公表されていません。ただしAI・データ活用の重要性が高まる中、今後注目度が高まる職種のひとつといえるでしょう。
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出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」
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IT人材の不足で企業が取るべき対策

IT人材の不足という構造的な課題に対して、企業が取れる対策は主に4つあります。自社の状況に応じて組み合わせながら、継続的に取り組むことが重要です。
| ▍IT人材の不足で企業が取るべき対策 ・採用強化 ・社内育成 ・定着率の向上 ・外部人材の活用 |
採用強化
IT人材の採用では、「待ちの姿勢」から脱却することが出発点になります。IT人材は売り手市場が続いており、優秀な人材ほど積極的な転職活動を行っていない「転職潜在層」であるケースが少なくありません。求人を掲載して応募を待つ受け身の採用だけでは、母集団の形成は困難です。そのため、企業側から候補者へ直接アプローチするダイレクトリクルーティングや、自社の価値観・働き方を継続的に発信して転職潜在層との接点を作る採用広報を併用する重要性が高まっています。
求人媒体や採用手法の選び方、ペルソナ設計から内定者フォローまでの進め方については、以下の記事で解説しています。
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社内育成
既存社員をIT人材として育成する方法も、有効な対策のひとつです。社内事情や業務内容を理解している人材であれば、外部から採用するよりも早期に戦力化しやすいメリットがあります。ただし、多くの企業では、育成の土台が整っていないのが実情です。
IPA「DX動向2025」でも示した通り、DXを推進する人材の育成施策について「特に支援はしていない」と回答した日本企業は36.6%に上り、評価基準が「ない」と回答した企業も75.7%に達しています。育成に取り組みたくても、何をどう評価すればよいかという基準そのものが定まっていない企業が多い状況です。
まずは自社が必要とする人材像とスキル基準を明確にした上で、eラーニングや社内研修、資格取得支援などを組み合わせ、段階的にスキルを習得していく仕組みづくりが求められます。
定着率の向上
採用や育成に成功しても、離職が続けば人材不足の解消にはつながりません。特にIT人材は、他社からのスカウトやより良い条件の求人に触れる機会が多く、転職のハードルは低い傾向があります。そこで重要になるのは、新しい人材が定着するための仕組みづくりです。
入社後のミスマッチを防ぐには、選考段階で職務内容や技術環境を具体的に伝えておくことが大切になります。加えて、入社後のオンボーディング体制を整えることも、早期離職の防止に直結します。
また、キャリアパスの提示や継続的なスキルアップ機会の提供も、優秀なIT人材の流出を防ぐ上で効果的です。採用コストをかけて入社した人材を長く活躍させるためにも、定着施策は採用と並行して整えておきましょう。
外部人材の活用
自社採用や育成だけでは必要な人数を確保できない場合、フリーランスやシステムエンジニアリングサービス(SES)といった外部人材の活用も選択肢になります。プロジェクト単位で専門スキルを持つ人材を確保できるため、急な人材ニーズにも対応しやすいのが特徴です。
ただし、外部人材の活用はあくまで一時的な補完策。中長期的には、自社の採用力・育成力を高めていくことが、人材不足の根本的な解決につながります。
能動的な採用でIT人材不足を乗り越える
IT人材の不足は、DX・AI活用によるIT需要の急拡大、少子高齢化による労働人口の減少、技術革新のスピードに人材育成が追いつかないこと、レガシーシステムの運用保守に人員が割かれることの4つの構造的要因が絡み合って生じています。
こうした構造的な課題がある以上、一朝一夕に解決する方法はありません。だからこそ、採用強化を軸に、社内育成や定着率の向上、必要に応じた外部人材の活用を組み合わせながら、自社に合った対策を継続的に進めていくことが重要になります。
採用競争が激化する中、給与や待遇だけを訴求する手法では差別化が難しくなっています。そこで注目されているのが、企業の価値観や働き方への共感を軸にした「共感採用」です。目先の採用手法にとどまらず、自社の魅力を伝え続ける採用へと見直すことが、これからの人材確保に向けた一歩となるでしょう。

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